34 / 66
第34話
しおりを挟む
「……心を削られる思いですが彼のことは諦めます。ですが子供だけは……陛下も王妃も彼の忘れ形見だと言っておられました……」
レオナルドは確実に助からない。正直その事はカトリーヌの中でどうでもいいのだが、芝居じみた真似をして彼が助からない事が、とても悲しく思っていると弱々しい声で言う。その時、頭に閃くものがあって陛下の言葉を思い出した。
「彼のご両親様はカトリーヌさんのことを止めたのではないですか?」
「……はい、その通りです。レオナルドのことは諦めるから行くなと言われました」
「それならどうして……?」
アリーナは陛下の不治の病を治療して、王妃には美容で一番良い肌の状態を保っている。レオナルドと違って知恵のある二人が、自分を裏切るような事は間違いなくないだろうと思っていた。
まさにその通りであった。陛下と王妃は溺愛していた息子を迷うことなく切り捨てました。アリーナもお二方がレオナルドに、何かと世話を焼いて甘やかしていた事はよく知っているので少し驚いた顔になった。
それでも息子に手を貸さなかったのは、アリーナの能力が次元が違うとわかっているのだ。陛下も王妃も彼女の能力を完全に理解しているわけではないが、ヤバいというのは本能的に直感しているのである。
「……でも私は彼のことを助けたくて……今はアリーナ様に楯ついた事を切実に反省して……愚かな行動を取った少し前の自分を本気で叱責したい思いです……彼のご両親様にももっと真剣に止めてほしかった……」
陛下と王妃はカトリーヌのことを全力で止めたのだが……。アリーナにはどんな手段を使っても勝てないから行くなと、何度も熱心な説得を繰り返した。息子の命は諦めてもカトリーヌのお腹には、かけがえのない宝物の大切な孫がいるのです。
しかしカトリーヌは、魔法師として世界でもトップクラスの実力者である。彼女が思い上がっていたところもあっただろう。とは言え、自惚れるだけの力も十分すぎるほど備わっていた。
だが相手が悪すぎた。アリーナという桁違いの存在に、あまりにも一方的に戦闘不能にされて心が完全に折れてしまう。今は命を助けてくださいと悲鳴をあげて許しを願う事に、自分の持てる力の全てを注いでいるところであった。
「お二人には可愛い孫ですもんね……」
アリーナは温厚で心優しい夫婦の陛下と王妃の顔が浮かんで、困ったような顔をして悩ましい気持ちで考え込むのだった。
*****
新作「聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
レオナルドは確実に助からない。正直その事はカトリーヌの中でどうでもいいのだが、芝居じみた真似をして彼が助からない事が、とても悲しく思っていると弱々しい声で言う。その時、頭に閃くものがあって陛下の言葉を思い出した。
「彼のご両親様はカトリーヌさんのことを止めたのではないですか?」
「……はい、その通りです。レオナルドのことは諦めるから行くなと言われました」
「それならどうして……?」
アリーナは陛下の不治の病を治療して、王妃には美容で一番良い肌の状態を保っている。レオナルドと違って知恵のある二人が、自分を裏切るような事は間違いなくないだろうと思っていた。
まさにその通りであった。陛下と王妃は溺愛していた息子を迷うことなく切り捨てました。アリーナもお二方がレオナルドに、何かと世話を焼いて甘やかしていた事はよく知っているので少し驚いた顔になった。
それでも息子に手を貸さなかったのは、アリーナの能力が次元が違うとわかっているのだ。陛下も王妃も彼女の能力を完全に理解しているわけではないが、ヤバいというのは本能的に直感しているのである。
「……でも私は彼のことを助けたくて……今はアリーナ様に楯ついた事を切実に反省して……愚かな行動を取った少し前の自分を本気で叱責したい思いです……彼のご両親様にももっと真剣に止めてほしかった……」
陛下と王妃はカトリーヌのことを全力で止めたのだが……。アリーナにはどんな手段を使っても勝てないから行くなと、何度も熱心な説得を繰り返した。息子の命は諦めてもカトリーヌのお腹には、かけがえのない宝物の大切な孫がいるのです。
しかしカトリーヌは、魔法師として世界でもトップクラスの実力者である。彼女が思い上がっていたところもあっただろう。とは言え、自惚れるだけの力も十分すぎるほど備わっていた。
だが相手が悪すぎた。アリーナという桁違いの存在に、あまりにも一方的に戦闘不能にされて心が完全に折れてしまう。今は命を助けてくださいと悲鳴をあげて許しを願う事に、自分の持てる力の全てを注いでいるところであった。
「お二人には可愛い孫ですもんね……」
アリーナは温厚で心優しい夫婦の陛下と王妃の顔が浮かんで、困ったような顔をして悩ましい気持ちで考え込むのだった。
*****
新作「聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
5
お気に入りに追加
3,085
あなたにおすすめの小説
司令官さま、絶賛失恋中の私を口説くのはやめてください!
茂栖 もす
恋愛
私、シンシア・カミュレは、つい先日失恋をした。…………しかも、相手には『え?俺たち付き合ってたの!?』と言われる始末。
もうイケメンなんて大っ嫌いっ。こうなったら山に籠ってひっそり生きてやるっ。
そんな自暴自棄になっていた私に母は言った。『山に籠るより、働いてくれ』と。そして私は言い返した『ここに採用されなかったら、山に引き籠ってやるっ』と。
…………その結果、私は採用されてしまった。
ちなみに私が働く職場は、街の外れにある謎の軍事施設。しかも何故か司令官様の秘書ときたもんだ。
そんな謎の司令官様は、これまた謎だけれど私をガンガン口説いてくる。
いやいやいやいや。私、もうイケメンの言うことなんて何一つ信じませんから!!
※他サイトに重複投稿しています。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
冷遇された王女は隣国で力を発揮する
高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。
父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。
そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。
今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。
自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。
一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……
【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~
吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。
ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。
幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。
仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。
精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。
ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。
侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。
当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!?
本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。
+番外編があります。
11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。
11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】初恋の彼が忘れられないまま王太子妃の最有力候補になっていた私は、今日もその彼に憎まれ嫌われています
Rohdea
恋愛
───私はかつてとっても大切で一生分とも思える恋をした。
その恋は、あの日……私のせいでボロボロに砕け壊れてしまったけれど。
だけど、あなたが私を憎みどんなに嫌っていても、それでも私はあなたの事が忘れられなかった──
公爵令嬢のエリーシャは、
この国の王太子、アラン殿下の婚約者となる未来の王太子妃の最有力候補と呼ばれていた。
エリーシャが婚約者候補の1人に選ばれてから、3年。
ようやく、ようやく殿下の婚約者……つまり未来の王太子妃が決定する時がやって来た。
(やっと、この日が……!)
待ちに待った発表の時!
あの日から長かった。でも、これで私は……やっと解放される。
憎まれ嫌われてしまったけれど、
これからは“彼”への想いを胸に秘めてひっそりと生きて行こう。
…………そう思っていたのに。
とある“冤罪”を着せられたせいで、
ひっそりどころか再び“彼”との関わりが増えていく事に──
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜
水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。
メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。
最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。
それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。
しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。
そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。
メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。
そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。
次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。
男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。
そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。
「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる