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第34話

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「……心をけずられる思いですが彼のことはあきらめます。ですが子供だけは……陛下も王妃も彼の忘れ形見だと言っておられました……」

レオナルドは確実に助からない。正直その事はカトリーヌの中でどうでもいいのだが、芝居しばいじみた真似をして彼が助からない事が、とても悲しく思っていると弱々しい声で言う。その時、頭にひらめくものがあって陛下の言葉を思い出した。

「彼のご両親様はカトリーヌさんのことを止めたのではないですか?」
「……はい、その通りです。レオナルドのことは諦めるから行くなと言われました」
「それならどうして……?」

アリーナは陛下の不治ふじやまい治療ちりょうして、王妃には美容で一番良い肌の状態を保っている。レオナルドとちがって知恵のある二人が、自分を裏切るような事は間違いなくないだろうと思っていた。

まさにその通りであった。陛下と王妃は溺愛できあいしていた息子を迷うことなく切り捨てました。アリーナもお二方ふたかたがレオナルドに、何かと世話を焼いて甘やかしていた事はよく知っているので少しおどろいた顔になった。

それでも息子に手を貸さなかったのは、アリーナの能力が次元が違うとわかっているのだ。陛下も王妃も彼女の能力を完全に理解しているわけではないが、ヤバいというのはしているのである。

「……でも私は彼のことを助けたくて……今はアリーナ様にたてついた事を切実に反省して……おろかな行動を取った少し前の自分を本気で叱責しっせきしたい思いです……彼のご両親様にももっと真剣に止めてほしかった……」

陛下と王妃はカトリーヌのことを全力で止めたのだが……。アリーナにはどんな手段を使っても勝てないから行くなと、何度も熱心な説得を繰り返した。息子の命は諦めてもカトリーヌのお腹には、かけがえのない宝物の大切なまごがいるのです。

しかしカトリーヌは、魔法師として世界でもトップクラスの実力者である。彼女が思い上がっていたところもあっただろう。とは言え、自惚うぬぼれるだけの力も十分すぎるほどそなわっていた。

だが相手が悪すぎた。アリーナというけた違いの存在に、あまりにも一方的に戦闘不能せんとうふのうにされて心が完全に折れてしまう。今は命を助けてくださいと悲鳴をあげて許しを願う事に、自分の持てる力の全てを注いでいるところであった。

「お二人には可愛い孫ですもんね……」

アリーナは温厚おんこうで心優しい夫婦の陛下と王妃の顔が浮かんで、困ったような顔をして悩ましい気持ちで考え込むのだった。

*****
新作「聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
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