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第7話
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「もうすぐマリアと結婚式じゃないか?」
「そうだな。すごく楽しみで心が躍っているよ」
ロベルト令息が意味深な様子で話しかけるとピエール殿下は端正な顔をしわくちゃにして満面の笑みで答えたらしい。ロベルトはピエールの秘密は知っているので終始悟られないように人が良さそうな笑顔で話し合う。
あれから数週間経ち、実は既にマリア令嬢とピエール殿下は婚約解消していた。悪の道に踏み込んだような申し訳ない気持ちのアイリは親友のマリアと人目を避けて連絡を取りあった。
会った瞬間に泣きながら懸命に謝りピエール殿下との関係を洗いざらい打ち明けたのです。マリアはきょとんとした顔つきになり体を寄せて息が止まるほど抱きしめる。
「全部知っていたよ」
「嘘…!?」
「少し前にロベルトお兄様にピエールとアイリのことを告げられて…」
澄んだ瞳で揺るぎがない落ち着いた心模様でマリアは言うと、アイリは泣き腫らした顔で息もつけないほど驚く。
二人はこれからすべきことを相談した。ピエールとマリアが一緒にいる時にアイリが訪問するという計画を立てて周到な準備を行う。マリアはピエールの何も取り繕っていない本心を話してもらい親友への責任を問いたい思いが何よりも強かった。
部屋のドアを開けたのはマリアで自然に振る舞いアイリを部屋に招き入れる。当然ながらピエールが居てアイリが視界に入った瞬間にお化けでも見たように体が小刻みに震えて緊張で強張った顔になる。
「これは一体どういうことだ!」
開き直った態度で耳の裂けるような怒号で威嚇するピエールだが、マリアに平手打ちされるとまばたきする間に勢いが失速し廃人同様に大人しくなるのです。
殿下との間に子供ができて主人に察知されて捨てられ殿下に頼ったら約束を破られ知らん振りをして放置されたと涙ながらに罪を告白してアイリは自分にも非があることを認めた。
「アイリ止めろよ…黙ってくれ…」
「ピエールは私を騙していたのね」
「違うんだマリア…」
「言い訳をしないでください!私が質問しますから許可なく喋らないで!」
「はい…」
婚約者に頬を打たれたピエールは蚊の鳴くような声で急いで反論するが欠片も効果がなかった。それどころかマリアの闘志に火をつけて追い込まれてしまう。
穏やかで温かい感じの美貌は憎悪に満ちた顔に変わりピエールに軽蔑の視線を向ける。全然言うことを聞かない家畜を調教するみたいに容赦なく叱り冷遇する。
三者面談を行い結局のところアイリのお腹の子は夫のルイスの子供だったが、反省の色のない態度のピエールにあきれ返って顔も見たくないと言い放ち愛想を尽かす。
「マリアに許してもらえるように僕は頑張るからそれまで待っていてくれ。僕がいない間に男なんか作っていたら許さないからな。その時はお仕置きだ!」
未だに婚約者気取りのピエール殿下から自分勝手極まりない無神経な内容の復縁の手紙が度々届くが返信をする気は更々なかった。
ただ一心に愛していた思いは煙のように跡形もなく消えて胸からなくなる。もうマリアがピエールに胸の高鳴りを覚え恋に落ちることはない。
慣れた手つきでケトルを持ち湯をティーカップに注ぐ澄ました顔の小柄なメイド。
「マリアは新しい彼はできたの?」
「さあ…どうかしら?」
美女の見本のようなマリアとアイリがさわやかな表情で香り高い紅茶を楽しむ。少しはしゃいだ愛嬌のいい声は陽気な雰囲気で他愛のない会話を誰に気兼ねする必要もなく喋り続けていた。
「そうだな。すごく楽しみで心が躍っているよ」
ロベルト令息が意味深な様子で話しかけるとピエール殿下は端正な顔をしわくちゃにして満面の笑みで答えたらしい。ロベルトはピエールの秘密は知っているので終始悟られないように人が良さそうな笑顔で話し合う。
あれから数週間経ち、実は既にマリア令嬢とピエール殿下は婚約解消していた。悪の道に踏み込んだような申し訳ない気持ちのアイリは親友のマリアと人目を避けて連絡を取りあった。
会った瞬間に泣きながら懸命に謝りピエール殿下との関係を洗いざらい打ち明けたのです。マリアはきょとんとした顔つきになり体を寄せて息が止まるほど抱きしめる。
「全部知っていたよ」
「嘘…!?」
「少し前にロベルトお兄様にピエールとアイリのことを告げられて…」
澄んだ瞳で揺るぎがない落ち着いた心模様でマリアは言うと、アイリは泣き腫らした顔で息もつけないほど驚く。
二人はこれからすべきことを相談した。ピエールとマリアが一緒にいる時にアイリが訪問するという計画を立てて周到な準備を行う。マリアはピエールの何も取り繕っていない本心を話してもらい親友への責任を問いたい思いが何よりも強かった。
部屋のドアを開けたのはマリアで自然に振る舞いアイリを部屋に招き入れる。当然ながらピエールが居てアイリが視界に入った瞬間にお化けでも見たように体が小刻みに震えて緊張で強張った顔になる。
「これは一体どういうことだ!」
開き直った態度で耳の裂けるような怒号で威嚇するピエールだが、マリアに平手打ちされるとまばたきする間に勢いが失速し廃人同様に大人しくなるのです。
殿下との間に子供ができて主人に察知されて捨てられ殿下に頼ったら約束を破られ知らん振りをして放置されたと涙ながらに罪を告白してアイリは自分にも非があることを認めた。
「アイリ止めろよ…黙ってくれ…」
「ピエールは私を騙していたのね」
「違うんだマリア…」
「言い訳をしないでください!私が質問しますから許可なく喋らないで!」
「はい…」
婚約者に頬を打たれたピエールは蚊の鳴くような声で急いで反論するが欠片も効果がなかった。それどころかマリアの闘志に火をつけて追い込まれてしまう。
穏やかで温かい感じの美貌は憎悪に満ちた顔に変わりピエールに軽蔑の視線を向ける。全然言うことを聞かない家畜を調教するみたいに容赦なく叱り冷遇する。
三者面談を行い結局のところアイリのお腹の子は夫のルイスの子供だったが、反省の色のない態度のピエールにあきれ返って顔も見たくないと言い放ち愛想を尽かす。
「マリアに許してもらえるように僕は頑張るからそれまで待っていてくれ。僕がいない間に男なんか作っていたら許さないからな。その時はお仕置きだ!」
未だに婚約者気取りのピエール殿下から自分勝手極まりない無神経な内容の復縁の手紙が度々届くが返信をする気は更々なかった。
ただ一心に愛していた思いは煙のように跡形もなく消えて胸からなくなる。もうマリアがピエールに胸の高鳴りを覚え恋に落ちることはない。
慣れた手つきでケトルを持ち湯をティーカップに注ぐ澄ました顔の小柄なメイド。
「マリアは新しい彼はできたの?」
「さあ…どうかしら?」
美女の見本のようなマリアとアイリがさわやかな表情で香り高い紅茶を楽しむ。少しはしゃいだ愛嬌のいい声は陽気な雰囲気で他愛のない会話を誰に気兼ねする必要もなく喋り続けていた。
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