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「私はどうすればいいの……」
家出してから僅か数日後、男爵夫人は途方に暮れて深いため息を漏らす。
思い出すのは家族と自分の姿。和気あいあいとした雰囲気で笑顔になって楽しそうに談笑している。
母の計画ではミシェルの婚約者のキースと一緒に生活して将来的に夫婦になるつもりでいました。
「私はキースと結婚するために家族を捨ててきたのよ!」
「冗談はやめてください!僕はあなたの娘と婚約してるんですよ?」
「でも娘よりも好きって言ったじゃないの!」
「あんなの誰でも使う口説き文句です」
ところが関係が娘に知られたことを話した途端に、彼はあっさりと母を捨てる。
頼みの綱の彼は母が話している最中も、ミシェルと仲直りすることばかり懸命に考えて、もがき苦しんでいた。
そんな情けない格好を見てしまえば彼への恋心が跡形もなく消え失せてしまい、信頼に値しない人間だと理解して母はその場から黙って姿を消す。
「娘に合わせる顔がないわ」
最後まで真剣に忠告してくれてた娘達の説得にも、彼に無我夢中で聞く耳を持たないという風情だった自分。
大切にしていた娘達にも愛想を尽かされて、母のことは記憶から消し元からいない存在だったと思われてるだろう。
精神的に一人ぼっちの母は悲痛な顔をして過去を振り返って後悔する。それとどうして彼のことをあそこまで好きになり追い求めたのか疑問。
「イリス、ミシェルごめんなさい」
道を歩く哀愁ただよう背中。せめて子供が許してくれれば気持ちも楽になるけど無理だろう。
感情がこらえ切れなくなって、大声で泣き出してしまいたいような思いに襲われる。
「本気で言ってるの?」
「うん……」
「それならあなたとは絶交するわ!」
彼の元から去った後に数人の親睦の深い友人のところに向かい相談したけど、理由が不倫だと伝えると厳しく叱責され追い出され、唯一のよりどころが緩やかに無くなっていく。
やっぱり娘の婚約者というのが大いに問題であったらしく、悲痛な声で答えると金輪際友人と認めるもんですかという風な態度で血相を変えて怒りをぶちまけられました。
「娘から恨まれているのが辛い……」
何かつぶやきながら町中を当てもなくぶらぶら歩き回っていると、日頃から女あさりをしているような見た目も言葉遣いも下品な男が引っ切りなしに声をかけてくる。
子供を産んで年齢を重ねているが、かつては輝くような美貌で社交界でもてはやされた存在。
そんな女性がとても寂しそうな雰囲気に活力のない顔で一人でいたら、変な連中に目を付けられるのは自然な事でした。
美しい夫人は意識がぼんやりしながら夜の街に消えていく――。
家出してから僅か数日後、男爵夫人は途方に暮れて深いため息を漏らす。
思い出すのは家族と自分の姿。和気あいあいとした雰囲気で笑顔になって楽しそうに談笑している。
母の計画ではミシェルの婚約者のキースと一緒に生活して将来的に夫婦になるつもりでいました。
「私はキースと結婚するために家族を捨ててきたのよ!」
「冗談はやめてください!僕はあなたの娘と婚約してるんですよ?」
「でも娘よりも好きって言ったじゃないの!」
「あんなの誰でも使う口説き文句です」
ところが関係が娘に知られたことを話した途端に、彼はあっさりと母を捨てる。
頼みの綱の彼は母が話している最中も、ミシェルと仲直りすることばかり懸命に考えて、もがき苦しんでいた。
そんな情けない格好を見てしまえば彼への恋心が跡形もなく消え失せてしまい、信頼に値しない人間だと理解して母はその場から黙って姿を消す。
「娘に合わせる顔がないわ」
最後まで真剣に忠告してくれてた娘達の説得にも、彼に無我夢中で聞く耳を持たないという風情だった自分。
大切にしていた娘達にも愛想を尽かされて、母のことは記憶から消し元からいない存在だったと思われてるだろう。
精神的に一人ぼっちの母は悲痛な顔をして過去を振り返って後悔する。それとどうして彼のことをあそこまで好きになり追い求めたのか疑問。
「イリス、ミシェルごめんなさい」
道を歩く哀愁ただよう背中。せめて子供が許してくれれば気持ちも楽になるけど無理だろう。
感情がこらえ切れなくなって、大声で泣き出してしまいたいような思いに襲われる。
「本気で言ってるの?」
「うん……」
「それならあなたとは絶交するわ!」
彼の元から去った後に数人の親睦の深い友人のところに向かい相談したけど、理由が不倫だと伝えると厳しく叱責され追い出され、唯一のよりどころが緩やかに無くなっていく。
やっぱり娘の婚約者というのが大いに問題であったらしく、悲痛な声で答えると金輪際友人と認めるもんですかという風な態度で血相を変えて怒りをぶちまけられました。
「娘から恨まれているのが辛い……」
何かつぶやきながら町中を当てもなくぶらぶら歩き回っていると、日頃から女あさりをしているような見た目も言葉遣いも下品な男が引っ切りなしに声をかけてくる。
子供を産んで年齢を重ねているが、かつては輝くような美貌で社交界でもてはやされた存在。
そんな女性がとても寂しそうな雰囲気に活力のない顔で一人でいたら、変な連中に目を付けられるのは自然な事でした。
美しい夫人は意識がぼんやりしながら夜の街に消えていく――。
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