上 下
5 / 17

第5話

しおりを挟む
「アイシャ綺麗よ」
「結婚おめでとう」

パーティの時に意地の悪いバーバラとルージュがやってきて、アイシャの幸運に乗っかろうと調子のよいことばかりを並べたて目を血走らせて媚びへつらいました。

アイシャはどこ吹く風という雰囲気で聞き流していた。それに気分を害した二人はよからぬ企てを抱いていた。


「ナルセス様が逢い引きされてます」

メイドから初めて聞かされた時は驚いた。

「ナルセスが浮気をしている?そんなことあるはずがないでしょ」

結婚してから数ヶ月後、アイシャはゆったりと腰掛けて読書をしていたら、思わず椅子からずり落ちそうになる。

でもその理由は直ぐに思いつく事ができた。このところナルセスは職務が忙しいと言い、あまり会話もない。普通の夫婦なら話し合い二人で決めるような事も全てにおいて他人任せ。

「忙しいのは分かるけどもう少し話さない?」
「すまないけど疲れてるんだ。後にしてくれ」

今考えるとアイシャは何度もナルセスに対して、夫婦としての絆を深めようと働きかけてきたが駄目でした。お互いの愛情を確かめ合うために笑顔を絶やさぬようにと気を配った。

ですが、話し合いをしようと言ってもナルセスは素っ気ない返事ばかりで、冷たくアイシャを突き放してきた。

そのようなことを続き、アイシャはナルセスへの愛情は既に心の中で失っていたものと思っていた。でも今は、ナルセスの家庭を裏切る恋が発覚するまで何もできなかった自分が悔しいとさえ感じる。

「どうして?相手は誰なの……」

夫婦なんてそんなもの、と言ってしまえば簡単だが、やりきれない気持ちで暗くざわめき疑問を吐き出さずにはいられなかった。

「最初はちょっとした変化からでした。ナルセス様からしきりに香水の匂いがするようになったからです」
「私の香水じゃないの?」
「アイシャ様の香水の匂いは全て把握していますので……」

メイドがナルセスを疑いだしたのは匂い。香水をつけていないと言っているナルセスから甘い匂いが漂う。その日に限ってナルセスは少し落ち着きのない態度で、焦った表情をしていたと話す。

告げられてから、アイシャはナルセスのことを怪しまれない程度に観察するようになり、メイドの言う通り彼が変わったかな?と脳裏をよぎる。

「絶対に気付かれないように相手が誰なのか証拠を掴んでね」
「アイシャ様お任せください」

そこでナルセスが出かける時には、アイシャは陰で監視するように指示をした。妻の心配をよそに、隣で気持ち良さそうに寝息を立てているナルセスを見ながら、就寝前に頭を抱える日々が続く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

政略結婚だけど溺愛されてます

紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。 結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。 ソフィアは彼を愛しているのに…。 夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。 だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?! 不器用夫婦のすれ違いストーリーです。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

いつから恋人?

ざっく
恋愛
告白して、オーケーをしてくれたはずの相手が、詩織と付き合ってないと言っているのを聞いてしまった。彼は、幼馴染の女の子を気遣って、断れなかっただけなのだ。

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています

中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。

人違いで恋してしまった私を許してください。溺愛伯爵様は旅に出ました。

Hibah
恋愛
ジュリエッタは、父親が決めた相手であるローレンス伯爵と婚約する。結婚に向けて使用人リリアンと準備を進めるが、ある日二人で買い物をしていると、「ローレンス」と呼ばれている男を偶然目撃してしまう。まだローレンスに会ったことのない二人だったので、その男がローレンスだと思いこむ。しかし、初めての顔合わせで現れたのは、以前に街で見かけた「ローレンス」とは別人。顔合わせの日まで恋心を募らせていたジュリエッタは、”本物の”ローレンスを前にして期待を裏切られた気持ちになる。ローレンスは、ジュリエッタが落ち込んでいる理由がわからないまま、なんとか振り向いてもらおうとするが……?

処理中です...