婚約していた幼馴染の彼から別れ話を切り出され婚約破棄される、彼は妹と結婚するらしい

第7話

その日、自宅に帰ってからもジェシカは取り乱して精神のバランスが崩れていた。

「お姉様ノアとはどうでしたか？」

クロエが心配するような目つきで問いかけるとジェシカは頬を膨らませて不愉快そうにムッとしていたが次第に吹っ切れた顔になった。

「ノアは最低よ！」
「なにがあったのですか？」
「ノアは私を振ってあなたと婚約しているのに私を口説いてきたの」
「え…本当ですか？」
「いきなり抱きつかれて手に触れて体を触りながら…そしてキスまでしてきた。とんでもない女たらしよ」
「それでどうされたのですか？」
「思わず平手打ちをしてしまって逃げたわ」
「まあ…それは大変でしたね」

バーでの出来事を妹のクロエに事細かに話す姉のジェシカは軽い興奮状態で火照ったような顔をしている。

最初クロエは何があったのかなと興味津々な様子で瞳を輝かせて話を聞いていた。だがノアの本性を知ると相槌を打ちながらショックを受けた。

自分と結婚の約束をしているのに別れた姉を抱きしめ馴れ合った男女の感じで手を握り肌を寄せて気持ちを伝えてきたと聞かされ加えてキスまでしてきたと教えられる。

クロエは体の一部をもぎとられたような切実な気持ちになりノアへの気持ちがだんだんと冷めていき心が悲しみでいっぱいになる。

ジェシカとクロエは話し合って自分達が姉妹であることをノアに打ち明けることにし、当然ながらクロエはノアと別れることを心にしっかりと決めた。

「僕はクロエとジェシカ両方とも愛している。これからも二人とは恋人の関係を続けていきたい」

ノアを呼び出してクロエがバーでの出来事を問いただしたらちょっと話をしただけと答える。ノアはジェシカのことをつきまとい行為をされて迷惑だと話していたのにバーで偶然に出会ったからと言って話すのはおかしいと詰め寄ると元彼女だということをやむを得ず告白した。

そこにジェシカが現れて、なんでいるの？と愕然とした面持ちだったが姉妹だと言うことを唐突に打ち明けるとより一層ノアはオロオロして目を丸くする。

「お姉様と二股するようなあなたとは別れるから」
「人間なんだから別の異性に恋する事だってあるし僕は愛しているから別れない」

クロエがノアに別れを告げると、そこから開き直ったのか二人を愛している。それなのに二人は僕を捨てるのか？と熱弁をふるい呆れるほかない。

その後もノアは腹の底から搾り出すような切実な声で姉妹に向かって愛していると根気強く説得を試みるが二人はきょとんと口を半開きにして棒のように突っ立ったまま聞いていた。