「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

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第37話

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「平民のあなたが私の婚約者に、馴れ馴れしく声をかけるのはどうかと思うのですが?」

イリスとレオンは正式に婚約の誓いを交わしている。それに平民の男が軽々しく何かを言える立場じゃないよね?レオンはそのような視線を正面にいるハリーに向けていた。

「悪かった……」

臆病そうに目をそらしたハリーは、ちょっと悔しそうな顔でうなずく。レオンの言葉はまさに正論であった。むしろ有害な行動でハリーが処罰されるべきところだ。

元王族という立場なので、人格者で心が広いイリスとレオンが大目に見ているのである。だが、この次からは容赦しない。そんな思いが感じられてハリーは謝った。

「もう用はないでしょう?」
「イリスと話がしたい!」

用がないなら足早に立ち去るようレオンが命じて、イリスの方へ向き直った。その瞬間、ハリーが大声で叫んだのです。だが即座に後方へ飛んで仰向けに倒れる。

「たった今、平民が気安く呼ぶなと注意しましたよね?」

振り返ったレオンは冷ややかに眺めて痛烈に言った。これはハリーが悪い。浅はか過ぎる発言でどんな言い訳も通用しないだろう。

「ハリー!」

いきなりハリーが殴られたのにはちょっと驚いて、イリスは立ち尽くしていた。だが澄んだソプラノの悲鳴を響かせて一直線に駆け寄っていく。

「イリス?」
「確かにハリーが悪いと思いますけど、殴ることないじゃないの」

急に勢いよく飛び出してきたイリスは、どさりと地面に倒れたハリーの体をゆっくりと起こすと、レオンを横目で睨みながら批判的に言う。

近衛騎士のレオンが拳を握りしめて、全力で攻撃したら相手はどうしようもない。ハリーが悪いのは理解していますが、慈愛深いイリスはどうにも我慢しきれなかった。

少しやりすぎたかな?でも苦言を呈した直後にあの発言はないよなぁと思いながら、レオンは不安げな顔でイリスを見つめる。

「でもイリスのことを軽々しく呼ぶなと警告した後だぞ?口で言っても分からない人には仕方ないだろ?」
「でも……気を失っています」

事前に注意したのに、慎重さが足りないのが問題じゃないか?言っても行動が変わらない人は痛みを与えてお仕置きをするしか方法がない。

そうレオンは返しますが、イリスは何ともやりきれない気分であった。

胸に耳を当てて心臓の音が聞こえるも、ハリーは完全に気絶しているのかボロ雑巾のように横たわっている。

「手加減はしたつもりだ。まさかあんな簡単に吹っ飛ぶなんて思わなかったけど……」
「騎士で鍛えているレオンと一緒にしたら駄目。ハリーの弱々しい体格を見なさいよ」

情けをかけて本気でやったんじゃない!レオンは熱心に話している様子。

レオンの言葉は、おそらく真実なのかもしれないが、いかにも痩せて貧相な体つきのハリーを見れば分かるでしょう?イリスは説教めいたことを言わずにはいられなかった。
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