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第29話

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「イリス嬢どうされた?」

国王は疑問を投げかける発言をするが、内心ほっとしてイリスの気持ちが何となく分かる。国王もエレナの両親に対する同情心を捨てられなかった。

「ご両親様には罪を問うつもりはございません」

普通は罪を償わせるべきなのだろうが、何も知らない人間に罪を着せようなんてイリスは可哀想すぎてできない。あまりにも厳しすぎると哀れな心に浸る。

「それならばどうするのだ?」
「張本人の二人を罰するべきだと思います」
「そうだな」

今回の騒動は元をただせば、新婚旅行に行きたいと身勝手なことを言ったエレナと、それを手助けする役回りをしたハリーに全責任を負うべきであると結論付けた。

イリスと国王は納得したように黙って頷き合う。新婚旅行に同行したエレナは、花嫁に対して極めて悪質な嫌がらせであると判断したのです。

「慈悲に輝いたイリス様のお顔を一生忘れません」
「情に満ちたイリス様ありがとうございます」

わけもなく涙がにじんできて感謝の涙をこらえる声だった。この命を救って頂いたことに感謝いたしますとエレナの両親は、まるでイリスを神様みたいに最大の敬意と称賛が払われる。


「お父様は息子の僕を見捨てるつもりなのですか?イリスお父様を説得して僕を助けてくれ!」

近衛騎士に身柄を拘束され、ひときわ大声で泣き叫びながら去っていく。そんな息子の姿を見つめながら暗い表情で、国王は多くを語ろうとしない。

これから貧困生活に耐えることになる息子を、愛情深く励ますような様子を見せて一言述べた。

「愚息よ、平民になってもエレナ嬢と幸せにな……」

ほんの短いあいだ夫であった男の泣き顔を見ると、イリスも結婚したことが悔しくて情けない気分になる。上品な顔立ちに綺麗な涙を浮かべて天を見上げて思うのです。

「結婚するんじゃなかった……」

ぼんやりとハリーを見つめながら小声でつぶやく。この先、元夫がどんなに悲惨な運命を背負っていようが同情的な態度を示さないと胸に誓った。

自分のためにイリスが、あんなに悲しそうな顔で心配してくれている。ハリーは嬉しさ半分申し訳なさ半分といった感じだ。しかしそれはとんでもない勘違いである。

実のところ、イリスは男を見る目には少し自信があった。だがこのような結果になってしまい、結婚の道を選択した自分にも腹が立って後悔する気持ちの涙でしたが、察しが悪いハリーは気がつくことができない。

「イリス愛している……」

最後は遠くまで響く声を出す力を失っていたハリー。一時的な失神状態に陥っているエレナ。この場から退場する際、ハリーは静かな声で今はたまらなく愛おしいイリスに本心をもらす。
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