27 / 50
第27話
しおりを挟む
「ハリー、体には気をつけて元気で過ごしてね」
「えっ……?」
ゆったりと落ち着いた表情のイリスは言葉を発しながら、冷静に観察している。ハリーは気の抜けた声で反応した。
あまりにも予想外のことを言われて、ハリーの顔は明らかに動揺している。イリスは自分を助けるために、この場に駆けつけてくれたのではないのか?どうして健康を気遣うような言葉をかけてきたのか?
さよならも言わずにハリーと離婚するのは、イリスとしては一生の心残りになってしまう。なのでイリスは別れの挨拶をするために急いでやってきた。
「愚かな息子よ。何を間抜けな顔をしているのだ?」
国王がおもむろに口を開いて語り出した。物分かりが悪い息子だな?みたいな顔である。
「お父様、イリスは僕の危機を救ってくれるのではないかと思いまして……」
「はぁー、お前は何をふざけた事を言っている。それよりもイリス嬢に深く感謝するのだぞ」
重大な危機に直面しようとしている自分に、イリスは手助けをするつもりなのだろう。ハリーはごく自然な調子で答えた。
国王は自分の息子の浅はかな考えに、ちょっと呆れたような顔をしてため息をついて、イリスに厚く礼を述べなさいと貫録のある声質で言う。
「イリスに感謝?お父様それはどうしてでしょう?」
「まだ分からんのか?」
「はい……」
イリスと父の話を聞く限り、どうやら自分を助ける気持ちはないらしい。そんな訳で父からイリスに感謝の言葉を述べろと言われても、ハリーはどうして感謝しなければならぬのか分からなかった。
「イリス嬢の慈悲でお前の大事なエレナ嬢が処刑されずに済んで、エレナ嬢の家も無事安泰だ」
「お父様それを早く言ってください!イリスもエレナのことを許してくれてありがとう」
「う、うん」
エレナは無罪。イリスとの離婚を引き起こす原因を作ったエレナに罪を問わない。そう聞いたハリーは驚きと嬉しさで胸は一杯だった。
自分とエレナは逆転勝利を収めたのだと愛想のいい笑顔に変わる。張りのある声でイリスに対して、どんなに感謝してもしきれないと思いつつ、とにかく頭を下げてお礼を言い続けるがイリスは戸惑った感じで答えた。
「イリス本当にありがとう」
「いえ……そんな……」
「イリスほど素晴らしくて心が広い女性はいないよ」
感謝にあふれた心で、ひたすら祈りを捧げてイリスという女神にありがとうと言った。ハリーは混じり気のない幸福な顔で涙を流しながら謝意をこめる。
だが先ほどからイリスは気の毒そうな目でハリーを見ると、少し顔を伏せて返事をする。あれ?なんでそんな申し訳ないような態度を見せるのかとハリーは不思議に思うのだった。
「えっ……?」
ゆったりと落ち着いた表情のイリスは言葉を発しながら、冷静に観察している。ハリーは気の抜けた声で反応した。
あまりにも予想外のことを言われて、ハリーの顔は明らかに動揺している。イリスは自分を助けるために、この場に駆けつけてくれたのではないのか?どうして健康を気遣うような言葉をかけてきたのか?
さよならも言わずにハリーと離婚するのは、イリスとしては一生の心残りになってしまう。なのでイリスは別れの挨拶をするために急いでやってきた。
「愚かな息子よ。何を間抜けな顔をしているのだ?」
国王がおもむろに口を開いて語り出した。物分かりが悪い息子だな?みたいな顔である。
「お父様、イリスは僕の危機を救ってくれるのではないかと思いまして……」
「はぁー、お前は何をふざけた事を言っている。それよりもイリス嬢に深く感謝するのだぞ」
重大な危機に直面しようとしている自分に、イリスは手助けをするつもりなのだろう。ハリーはごく自然な調子で答えた。
国王は自分の息子の浅はかな考えに、ちょっと呆れたような顔をしてため息をついて、イリスに厚く礼を述べなさいと貫録のある声質で言う。
「イリスに感謝?お父様それはどうしてでしょう?」
「まだ分からんのか?」
「はい……」
イリスと父の話を聞く限り、どうやら自分を助ける気持ちはないらしい。そんな訳で父からイリスに感謝の言葉を述べろと言われても、ハリーはどうして感謝しなければならぬのか分からなかった。
「イリス嬢の慈悲でお前の大事なエレナ嬢が処刑されずに済んで、エレナ嬢の家も無事安泰だ」
「お父様それを早く言ってください!イリスもエレナのことを許してくれてありがとう」
「う、うん」
エレナは無罪。イリスとの離婚を引き起こす原因を作ったエレナに罪を問わない。そう聞いたハリーは驚きと嬉しさで胸は一杯だった。
自分とエレナは逆転勝利を収めたのだと愛想のいい笑顔に変わる。張りのある声でイリスに対して、どんなに感謝してもしきれないと思いつつ、とにかく頭を下げてお礼を言い続けるがイリスは戸惑った感じで答えた。
「イリス本当にありがとう」
「いえ……そんな……」
「イリスほど素晴らしくて心が広い女性はいないよ」
感謝にあふれた心で、ひたすら祈りを捧げてイリスという女神にありがとうと言った。ハリーは混じり気のない幸福な顔で涙を流しながら謝意をこめる。
だが先ほどからイリスは気の毒そうな目でハリーを見ると、少し顔を伏せて返事をする。あれ?なんでそんな申し訳ないような態度を見せるのかとハリーは不思議に思うのだった。
41
お気に入りに追加
3,191
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。


そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1

どーでもいいからさっさと勘当して
水
恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。
妹に婚約者?あたしの婚約者だった人?
姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。
うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。
※ザマアに期待しないでください

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる