「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

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第26話

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「エレナこのまま旅行を楽しもう!」
「そうね」

イリスからの置き手紙を読んで最初は落ち込んだ気分も、何とかなるだろうと半ば開き直って、心ゆくまで旅行を堪能してから帰ってきたのである。

普通なら即座に行動を起こしてイリスの後を追いかけるべきだろう。何ともお気楽で頭がからっぽの二人であった。

「お前たちは随分帰りが遅いな。今まで何をしていたのだ?」

イリスが帰ってきてから、数日ぶりに戻ってきた自分の息子。どうして帰りがこんなに遅くなったのか?話し合いの始めに国王のほうから穏やかな口調で尋ねる。

「お父様、どうせならエレナと旅行を思う存分楽しんでから帰ろうと思いまして……」
「この恥さらしが!」

息子から少しも悪びれた様子もなく答えられて、 思わず大声で怒鳴り返すとハリーはさすがに顔色を改めている。国王の隣に座っている王妃は実に呆れた顔で大きく頭を左右に振った。

その後は息子から事情を聞いた結果、イリスからの話が事実と判明する。

「ですが……」
「これ以上言い訳をするな!どうしようもない愚か者の二人を追い出すのだ!」

ハリーが何かを言おうとしたが、反射的に怒りと苛立ちを含んだ怒声が浴びせられる。父の言う通り自己弁護しようとしたハリーは、まさに図星を指されて口をつぐむ。

すでに精神的なプレッシャーに耐えられなかったエレナは、口から泡を吹き完全に気を失っている。

「お父様なにとぞお許しください」

そんな状態のエレナに、心配そうな視線を向けるが両親に謝罪すべきだと思い発言を繰り返した。救いを求める悲鳴を上げるも、父からは鋭い視線を受けてハリーは息もできない。

国王の命令でハリーはエレナと共に身柄を拘束され、強引な方法で外に連れ出されていく。もう抵抗する気力は残っていなくて怯えたような目をしている。

「お母様助けて……」

無力な自分をお救いくださいと母に涙ながらに訴える。だが普段はやわらかく温かな愛情ある母の顔が変わって、瞳に怒りを溜めて自分を睨んでいるのが一番辛かった。

もう駄目だ、ついに自分にも終わりがきたのだとハリーは、取り返しのつかない絶望的な状況に追い込まれる。

「ハリー」

その時、穏やかで綺麗な声音で呼びかけられた。正面には誰もが見とれるほどの美しい女性がすらり立っている。イリスはハリーが旅行から帰って来たという知らせを受けて、急いでやってきたのです。

「イリス……」 

ハリーはそう言って顔を上げながら涙をこぼし視線を投げた。イリスを見た瞬間、かすかな希望の光を心の隅に感じ始めたのだった。
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