上 下
19 / 50

第19話

しおりを挟む
「その人にハリーは騙されてるのが分からないの?」
「イリスそんな言い方は良くない。エレナは僕たちのことを心配してくれてるんだよ」

ハリーは学園での授業科目では成績優秀者であったが、恋愛問題においては成績下位と言える男である。

未だに正しい認識ができていないのが証拠だろう。新婚旅行に幼馴染を連れてきたことに対してイリスが怒っていることを理解していないのです。

美しい容姿と恵まれたスタイルをしているので学園では、ハリーはいつも女子生徒に囲まれて遊んでいそうな印象を抱かれていたが、実はかなり奥手でイリスが初めて付き合った女性だった。

「ハリーどいて!」
「ここから先は通すことはできない!」

まさにハリーはイリスの前に立ちはだかる壁。エレナの安全を守る義務があると言いたげな顔で、ハリーは鉄壁のディフェンス力を発揮していた。

さっきまで気を失っていたことに、自分は何をやっていたんだと思いながら、反省する気持ちもあってエレナに近づかないようにと伝えて、イリスからの非難の声にも負けずに全力で受け止める。

「ハリーそうよ!私を助けるために頑張って!」

弾除けくらいにはなるかな?エレナはそう思いながらイリスからの攻撃の盾代わりに、ハリーを利用することに一応成功した。

簡単に壊れてしまう貧弱な盾だと思っていたら、意外に丈夫でなかなか耐久性の高い盾のようです。そのままハリーが押し切って勝利し、自分の無罪を勝ち取るのだと内心ほくそ笑みながら唇をなめる。

良い方向に予想を裏切る結果になってエレナは笑顔で、やや甲高い声で応援の声をかけた。

「エレナありがとう!」

後ろでエレナが愛嬌のいい声で応援してくれている。振り返って喜んでくれる可愛い顔を見たら、ハリーは力が湧いてきて何よりも嬉しかった。


「何やってるのよ。ハリーの役立たず……」

しばらくエレナは二人の攻防を注意深く見守っていた末に、このままではハリーに勝ち目がなさそう?と不安そうに小声でつぶやく。

次第に劣勢へと追い込まれていくハリーの姿に、理不尽にもエレナは苛立ちをつのらせ始め、落ち着かない気分になっていた。

今はイリスの怒りを抑えることが先決だよね?まもなく崩れそうな目の前の壁を見ながら、そう思い焦ったエレナは悪魔のような悪知恵を閃く。そうだ!この男に全ての責任を負わせようと良心を捨てた腹黒さを見せる。

「ハリーは新婚旅行をなんだと思ってるの!イリス様が可哀想だとは思わないの?どうして私を誘ったのよ!」

エレナはハリーのことが好きでしたが今は自分が助かりたいがために、ハリーのことを自分の身代わりに差し出したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。ありがとうございます。

黒田悠月
恋愛
結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。 とっても嬉しいです。ありがとうございます!

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

あなたの婚約者は、わたしではなかったのですか?

りこりー
恋愛
公爵令嬢であるオリヴィア・ブリ―ゲルには幼い頃からずっと慕っていた婚約者がいた。 彼の名はジークヴァルト・ハイノ・ヴィルフェルト。 この国の第一王子であり、王太子。 二人は幼い頃から仲が良かった。 しかしオリヴィアは体調を崩してしまう。 過保護な両親に説得され、オリヴィアは暫くの間領地で休養を取ることになった。 ジークと会えなくなり寂しい思いをしてしまうが我慢した。 二か月後、オリヴィアは王都にあるタウンハウスに戻って来る。 学園に復帰すると、大好きだったジークの傍には男爵令嬢の姿があって……。 ***** ***** 短編の練習作品です。 上手く纏められるか不安ですが、読んで下さりありがとうございます! エールありがとうございます。励みになります! hot入り、ありがとうございます! ***** *****

邪魔者というなら私は自由にさせてもらいますね

影茸
恋愛
 これまで必死に家族の為に尽くしてきた令嬢セルリア。  しかし彼女は婚約者を妹に渡すよう言われてしまう。  もちろん抵抗する彼女に、家族どころか婚約者さえ冷たく吐き捨てる。  ──妹の幸せを祈れない邪魔者、と。  しかし、家族も婚約者も知る由もなかった。  今までどれだけセルリアが、自分達の為に貢献してきたか。  ……そして、そんな彼女が自分達を見限ればどうなるかを。  これはようやく自由を手にした令嬢が、幸せに気づくまでの物語。 ※試験的にタイトル付け足しました。

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて
恋愛
【本編完結】私の婚約者は、妹に会うために家に訪れる。 【ほか】続きです。

私の婚約者が、記憶を無くし他の婚約者を作りました。

霙アルカ。
恋愛
男爵令嬢のルルノアには、婚約者がいた。 ルルノアの婚約者、リヴェル・レヴェリアは第一皇子であり、2人の婚約は2人が勝手に結んだものであり、国王も王妃も2人の結婚を決して許さなかった。 リヴェルはルルノアに問うた。 「私が王でなくても、平民でも、暮らしが豊かでなくても、側にいてくれるか?」と。 ルルノアは二つ返事で、「勿論!リヴェルとなら地獄でも行くわ。」と言った。 2人は誰にもバレぬよう家をでた。が、何者かに2人は襲われた。 何とか逃げ切ったルルノアが目を覚まし、リヴェルの元に行くと、リヴェルはルルノアに向けていた優しい笑みを、違う女性にむけていた。

私は何も知らなかった

まるまる⭐️
恋愛
「ディアーナ、お前との婚約を解消する。恨むんならお前の存在を最後まで認めなかったお前の祖父シナールを恨むんだな」 母を失ったばかりの私は、突然王太子殿下から婚約の解消を告げられた。 失意の中屋敷に戻ると其処には、見知らぬ女性と父によく似た男の子…。「今日からお前の母親となるバーバラと弟のエクメットだ」父は女性の肩を抱きながら、嬉しそうに2人を紹介した。え?まだお母様が亡くなったばかりなのに?お父様とお母様は深く愛し合っていたんじゃ無かったの?だからこそお母様は家族も地位も全てを捨ててお父様と駆け落ちまでしたのに…。 弟の存在から、父が母の存命中から不貞を働いていたのは明らかだ。 生まれて初めて父に反抗し、屋敷を追い出された私は街を彷徨い、そこで見知らぬ男達に攫われる。部屋に閉じ込められ絶望した私の前に現れたのは、私に婚約解消を告げたはずの王太子殿下だった…。    

処理中です...