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第17話
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「ハリー助けて!」
このまま黙っていたら、王子と大貴族の令嬢の新婚旅行に強引に押し切った形で一緒についていき、二人の仲を引き裂いた愚か者として処刑されてしまう。
イリスを怒らせた自分は旅行から帰れば、悲惨な状況に陥るのは間違いなく決まっている。そう思ったエレナは伏せていた顔を上げて、ハリーに向けてありったけの力を振り絞って助けを求めて叫んだ。
「ハリー?」
だが、呼びかけてもハリーからは何も反応がない。その瞬間、エレナの脳裏に閃いたものがあった。
つい今しがたイリスの怒りを静めるために、自分がひどく動揺していたことに気づいた。今は冷静になっているのではっきり分かる。
自分がイリスに冷酷非情に叱り飛ばされているのに、今まで口を挟むこともなく黙って聞いているなんておかしい。ハリーなら直ぐに話に割って入り自分のことを弁護してくれるはずだ。
「えっ……?」
エレナは立ち上がると慌てて駆け寄った。イリスから自分の人生が破滅するまで追い詰められているのに、この男は何をのんびり構えているんだ?さっさと助けなさい!と内心不満でたまらなかった。
とにかく救われたい一心で頭が一杯なので、恋愛感情を持っているハリーに対しても初めて憎しみさえ感じた。自分の命と比べたら、それも仕方がないことであろう。
エレナは不安な気持ちでハリーの顔をじっと覗き込む。目を開けたままの状態で完全に気絶したように固まっていた。
「なんで?ハリーどうしてこんなことに?」
先ほどまでハリーは、イリスと声を張りあげて口喧嘩をしていた。ハリーはこれまで見たことがなかった美しく上品なイリスの怖い雰囲気に気後れする。
弱気になったハリーは、負けるわけにはいかないと強がって見せてはいたものの、実際には恐ろしくて寒くなり怯えていたのです。
その恐怖がついに限界に達し絶頂を通り超えたときには、立ったまま意識を失ったのが真相であった。
「ハリー!お願い動いて!動いてよーー!」
心強い味方だと頼みにしていたハリーが、情けなく気絶していたことが分かりエレナは希望を失う。だがそれで落ち込んではいられない。このままでは自分が大罪人になってしまうのだ。
エレナはハリーの体を激しく揺さぶり始め、全力で顔を何度も叩いて耳元に大声で呼びかけた。実に雑に扱っているが、自分の窮地から救ってくれる唯一の男なのである。
この場をやり過ごし、お先真っ暗の自分の人生を切り開くために、何としてもハリーの目を覚まさないといけないとエレナは真剣だった。
「……エレナ……?」
気も狂わんばかりの顔でエレナは悲鳴を上げ続ける。その努力が実を結んだらしくハリーは意識を取り戻した。
このまま黙っていたら、王子と大貴族の令嬢の新婚旅行に強引に押し切った形で一緒についていき、二人の仲を引き裂いた愚か者として処刑されてしまう。
イリスを怒らせた自分は旅行から帰れば、悲惨な状況に陥るのは間違いなく決まっている。そう思ったエレナは伏せていた顔を上げて、ハリーに向けてありったけの力を振り絞って助けを求めて叫んだ。
「ハリー?」
だが、呼びかけてもハリーからは何も反応がない。その瞬間、エレナの脳裏に閃いたものがあった。
つい今しがたイリスの怒りを静めるために、自分がひどく動揺していたことに気づいた。今は冷静になっているのではっきり分かる。
自分がイリスに冷酷非情に叱り飛ばされているのに、今まで口を挟むこともなく黙って聞いているなんておかしい。ハリーなら直ぐに話に割って入り自分のことを弁護してくれるはずだ。
「えっ……?」
エレナは立ち上がると慌てて駆け寄った。イリスから自分の人生が破滅するまで追い詰められているのに、この男は何をのんびり構えているんだ?さっさと助けなさい!と内心不満でたまらなかった。
とにかく救われたい一心で頭が一杯なので、恋愛感情を持っているハリーに対しても初めて憎しみさえ感じた。自分の命と比べたら、それも仕方がないことであろう。
エレナは不安な気持ちでハリーの顔をじっと覗き込む。目を開けたままの状態で完全に気絶したように固まっていた。
「なんで?ハリーどうしてこんなことに?」
先ほどまでハリーは、イリスと声を張りあげて口喧嘩をしていた。ハリーはこれまで見たことがなかった美しく上品なイリスの怖い雰囲気に気後れする。
弱気になったハリーは、負けるわけにはいかないと強がって見せてはいたものの、実際には恐ろしくて寒くなり怯えていたのです。
その恐怖がついに限界に達し絶頂を通り超えたときには、立ったまま意識を失ったのが真相であった。
「ハリー!お願い動いて!動いてよーー!」
心強い味方だと頼みにしていたハリーが、情けなく気絶していたことが分かりエレナは希望を失う。だがそれで落ち込んではいられない。このままでは自分が大罪人になってしまうのだ。
エレナはハリーの体を激しく揺さぶり始め、全力で顔を何度も叩いて耳元に大声で呼びかけた。実に雑に扱っているが、自分の窮地から救ってくれる唯一の男なのである。
この場をやり過ごし、お先真っ暗の自分の人生を切り開くために、何としてもハリーの目を覚まさないといけないとエレナは真剣だった。
「……エレナ……?」
気も狂わんばかりの顔でエレナは悲鳴を上げ続ける。その努力が実を結んだらしくハリーは意識を取り戻した。
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