「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

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第5話

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「この人はやっぱり普通じゃない……」

思わず吐息のように小さな声でささやく。端的に申し上げるとエレナのことを目障りな存在だと感じましたが、イリスは勇ましく高らかに響き渡らせることもなく、丁寧に諭すような口調で言った。

イリスは迷惑は掛けないと涙目で必死こいて主張するが、一緒に新婚旅行についてくること自体が迷惑なのである。普通の神経の持ち主では耐えられないだろう。

人によっては、気は確かかと無慈悲なまでのお叱りを受けるかも知れません。いつも几帳面で淑やかな性格をしてイリスでなければ、こっぴどく怒られたうえ、凄まじい視線を浴びせられることは間違いない。

「エレナも一緒に僕達の新婚旅行に連れて行こう。なぁイリスいいだろう?」
「何を言ってるの?」
「言っておくけど僕とエレナはイリスが思っているような関係ではないよ」

ところが、それから先のことが思い出せない。記憶喪失に近い症状で遠くぼやけているのだ。ただ、それからの結婚式のことは鮮明に頭に残っていた。

実際のところ、イリスがその部分だけの記憶を失った原因はハリーにある。エレナにお願いされた時は腹が立って、あなたみたいに厚かましい人は初めて会ったと思いながらも、自分の心の安定をかろうじて保っていたのです。

「無理を承知でお願いしてるけどイリス頼むよ」
「ハリーもういい加減にして!」

だが、これから正式に結婚式を行い夫婦として生活していくハリーが、幼馴染のエレナの味方になって、擁護する発言を繰り返すと、イリスは精神的に追い詰められてしまう。

自分はこんな情けない男と結婚するのか?プロポーズされた時に、永遠の愛を誓ってくれた男から言われていることが信じられない。

その直後、ハリーのことが実に恥知らずな男に思えたイリスは脳に強いストレスを受けて、その時の記憶が抜け落ちてしまった。


イリスは誰もがはっと目を引く美しい顔立ちをしていたが、大人しい性格のため学園に通っていた時は、自分から率先して目立つ事はしなかった。

でもイリスに対して恋心を抱いていた男は多く、かなりの人数に告白された。イリスはどれも顔も性格もタイプじゃなくて断っていたのである。

「イリス様、好きです。この世界で一番愛しております」
「ごめんなさい」

ある日、帰り際に太ったニキビ面の男が、一目惚れしたので付き合ってほしいと声をかけてきた。

「やめろ!彼女が嫌がっているじゃないか!」

イリスは往生際が悪く言い寄ってくる男を、軽くあしらうこともできずに困っていると、モデルみたいに気取ったポーズのハリーが割って入る。
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