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第3話

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「イリス様、私の我儘なお願いを聞き入れてくれてありがとうございます」
「僕も嬉しいよ。イリスありがとう」

イリスから一緒に旅行を行くことを許されたエレナは、心からお礼を申し上げてよろしくお願いしますと、感謝の気持ちでいっぱいです。

ハリーは、ありがとうとイリスの耳元でささやくように言うと、エレナをまっすぐに見つめ、今までイリスに見せたことのない柔らかで幸福そうな表情を浮かべる。

そして二人は抱き合いながらハリーはエレナの頭をなでてやり、エレナは頬をハリーの胸に押し当てて、とても嬉しそうに微笑していた。

すぐ横でイリスは肩を落とし、気絶しているのに近い状態で無言で立ち尽くしたままだった。

結婚披露パーティーが終わり、ほとんど全ての出席者から拍手喝采を浴びた。イリスとハリーは照れ笑いしていますが、とても幸せな気分で恵まれた人生を歩んでいくに違いないと思っていた。

夫婦はその後馬車に乗ってハネムーン旅行に向かった。その馬車にエレナは乗ってきた。自然な形で着席しているのに気がついたイリスは、首をひねって不安と疑問を感じてしまう。

「エレナも一緒だから楽しい旅行になりそう」
「私も新婚旅行に連れて行ってくれて嬉しい」

ハリーとエレナは見るからに和気あいあいたる様子であった。二人は至極愉快な気分で、打てば響くような会話のやり取りをしている。

だがイリスは、その話に納得出来ない部分があって不思議そうな顔になった。エレナが口にした新婚旅行に連れてってくれて嬉しいという言葉。


「あなたは一体どうしてここへ?」

イリスがそう問いかけるまでに少し時間がかかる。ハリーとエレナが陽気なおしゃべりを続けて、時々甘い言葉と笑顔を振りまきつつ、べたべたお互いの体を触れながら幸せそうにしているので、イリスは若干居心地が悪かった。

二人の会話は、イリスの陰気な雰囲気をよけいきわだたせているようだった。話の輪に入れそうで入れず、数時間前に結婚式を挙げたばかりの自分を、気遣わないハリーにも苛立ちを隠せない。

ぞんざいに扱われているみたいで、このまま放って置かれるのではないかと思うと、ついにイリスは我慢ならなくなって口を開いた。その声色には怒りの気持ちが現われていた。

「イリス何を言っているんだ?」
「えっ?どういうこと?」

二人で楽しくおしゃべりをしていたら、イリスが口を挟んできて会話が一時中断された。ハリーは不意の質問にもかすかな笑みを向けて平然と答える。

だが、どれだけ考えてもイリスは答えが全く浮かんでこなかった。
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