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第1話

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その日結婚披露パーティが終わると、イリスとハリーは新婚旅行に向かった。現在は馬車に乗って移動しているが、イリスは違和感を感じている。理由はなぜか?ハリーの幼馴染のエレナが一緒に乗っているのです。

「この人は何なのでしょう?」

誰にも聞こえないほどの小声でイリスはつぶやいた。

これから二人は新婚旅行の予定なのだが、エレナが一緒に行きたいとせがんできたのだ。

ハネムーンに出かけるために教会の出口に向かい、みんなから祝福と拍手を受ける数時間前のこと。


「私もハリーの新婚旅行について行きたい」

エレナはハリーと腕を組みぴったりと寄り添いながら、甘えるような口調になって言った。隣にいたイリスは、まったく思いがけないことが目の前に起こって言葉を失くして眉を寄せる。

驚いたことにハリーはエレナも旅行に行くことに、かなり乗り気でありイリスのことを熱心に説得してきた。

「ハリーのことが心配だから私も連れてって。迷惑かけないからお願い」
「仕方ないな」

エレナは半分泣いたような不安げな顔を向けてきている。するとハリーは、子供のわがままを聞いてあげるみたいに、しょうがない奴だなぁ、と苦笑いしつつもハリーは嬉しそうだ。

これは随分とんでもない男と、結婚してしまったと呆れるよりほかなかった。でもどうしたらいいのだろう?つい先ほどの出来事がイリスの頭を駆けめぐる。

挨拶では、お互いの家族に友人に関係者から盛大に祝福された。これから出席者一同の前で永遠の愛を誓い合って、二人の栄光ある門出を祝ってもらうところなのに、別れるなんて言えるはずもない。

「エレナもいたほうが楽しいんじゃないかな?」
「本気なの?」

家族同士で昔から懇意にしていたけれど、ハリーとエレナは恋人とかいうタイプじゃないと言い、まあ、言ってみれば兄と妹みたいなものらしい。

エレナは純白のドレスを着てきて、花嫁であるイリスより目立っていた。そのことにも大いに不満を持っていたが、他の出席者たちに微妙な雰囲気が漂い、エレナをたしなめる声がきこえたのでイリスは気持ちを抑えたのだ。

「男女間の結びつきは恋愛だけじゃない」

ハリーがずっと主張し続けてたんだけど、イリスは受け入れられなかった。だが、こういう男女関係をどういっていいのか、イリスはうまく言い返せなかったのである。

幼馴染のエレナを一緒に新婚旅行に連れて行こうというのが、そもそも無理な話であって、ハリーはエレナと親密な間柄らしいが、イリスには縁もゆかりも無い人なのです。
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