上 下
11 / 17

11 運命の出会い

しおりを挟む
「奇跡だ……」
「これほど見事な回復魔法の使い手は滅多にお目にかかれない」
「……あなたは何者なんだ?」
「重傷者まで瞬きするほどの時間で……信じられない」

死に至る怪我を負っている人や生まれつきの病気までも素早くきれいに治す。クロエの治癒師としての実力を目の当たりにした騎士達は、神のなせる業と口を揃えて漏らし、次第に尊敬の眼差しを向け始めた。

「皆さんがご無事で良かったです」
「あなたはまさか……聖女様?」

傷を癒し終えたクロエが思いやりに満ちた笑顔を見せると、一人の騎士が詰め寄ってきて聖女と発言した。

……早くも知られてしまった!?クロエはもどかしい顔色を浮かべ心がどよめく。


「申し訳ない……あんな回復魔法を見てしまって感動で気持ちが高ぶった。おかしなことを言ってすまい……それと名前を教えてほしい」
「いえ、気になさらないでください。私はクロエと申します」
「俺はこの騎士団の団長を務めるアルバート。クロエ様助けていただいて感謝の言葉もない」
「ふふっ……そんなかしこまった呼び方は必要ありませんよ」

対応に困るクロエの表情にハッと我に返って純粋に詫びる男性。クロエも聖女だと確実に気づかれていないようだと分かり、安心してふっと肩の力が抜けて柔らかい笑顔で答える。

普通の男性よりも遥に上背があり、強靭な肉体でいかつい顔の男性は、騎士団長のアルバートと名乗る。クロエも聖女という事は伏せて正直に自分の名を口にしました。


「私からも一言お礼を言わせてくれるかな」
「レオン様!!」

和やかな雰囲気が漂う中、一際目を引く豪華な馬車から声がして降り立つ。見た瞬間に目がくらみそうになるほどの美しい青年。クロエは起きていたのに覚醒したような感覚でその容姿に引き込まれる。

「身体の具合は……立ち上がっても大丈夫なのですか?」
「心配はいらない。彼女の回復魔法のおかげで体調は至って良好だよ。身体が驚くほど軽いんだ。怪我をする前よりもずっと健康だと思う」

アルバートがご自愛くださいと控えめな態度で、そのレオンと呼んだ青年の身体を労わる。青年はクロエから癒しを与えられたから、問題はないと輝く笑顔を振りまいて返事をした。

あっ!あの方……確か先ほど治療した……クロエは不意に閃く。顔を仮面で隠していたけど何となく分かる。身分の高い人だから内密にしていたんだと。

それにレオンという名前……過去に人づてに聞いたことがあるような……?えーっと……思い出せない……誰でしたっけ?他国の人物には関心が薄いので、ド忘れしてしまいました。


*****
新作「転生したら悪役令嬢に自己中王子を譲って婚約破棄。溺愛されても私は国を発展させます。」を投稿しました。よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

本当の聖女は私です〜偽物聖女の結婚式のどさくさに紛れて逃げようと思います〜

桜町琴音
恋愛
「見て、マーガレット様とアーサー王太子様よ」 歓声が上がる。 今日はこの国の聖女と王太子の結婚式だ。 私はどさくさに紛れてこの国から去る。 本当の聖女が私だということは誰も知らない。 元々、父と妹が始めたことだった。 私の祖母が聖女だった。その能力を一番受け継いだ私が時期聖女候補だった。 家のもの以外は知らなかった。 しかし、父が「身長もデカく、気の強そうな顔のお前より小さく、可憐なマーガレットの方が聖女に向いている。お前はマーガレットの後ろに隠れ、聖力を使う時その能力を使え。分かったな。」 「そういうことなの。よろしくね。私の為にしっかり働いてね。お姉様。」 私は教会の柱の影に隠れ、マーガレットがタンタンと床を踏んだら、私は聖力を使うという生活をしていた。 そして、マーガレットは戦で傷を負った皇太子の傷を癒やした。 マーガレットに惚れ込んだ王太子は求婚をし結ばれた。 現在、結婚パレードの最中だ。 この後、二人はお城で式を挙げる。 逃げるなら今だ。 ※間違えて皇太子って書いていましたが王太子です。 すみません

家柄が悪いから婚約破棄? 辺境伯の娘だから芋臭い? 私を溺愛している騎士とお父様が怒りますよ?

西東友一
恋愛
ウォーリー辺境伯の娘ミシェルはとても優れた聖女だった。その噂がレオナルド王子の耳に入り、婚約することになった。遠路はるばる王都についてみれば、レオナルド王子から婚約破棄を言い渡されました。どうやら、王都にいる貴族たちから色々吹き込まれたみたいです。仕舞いにはそんな令嬢たちから「芋臭い」なんて言われてしまいました。 連れてきた護衛のアーサーが今にも剣を抜きそうになっていましたけれど、そんなことをしたらアーサーが処刑されてしまうので、私は買い物をして田舎に帰ることを決めました。 ★★ 恋愛小説コンテストに出す予定です。 タイトル含め、修正する可能性があります。 ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします。 ネタバレ含むんですが、設定の順番をかえさせていただきました。設定にしおりをしてくださった200名を超える皆様、本当にごめんなさい。お手数おかけしますが、引き続きお読みください。

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

冷遇された王女は隣国で力を発揮する

高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。 父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。 そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。 今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。 自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。 一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……

学院内でいきなり婚約破棄されました

マルローネ
恋愛
王立貴族学院に通っていた伯爵令嬢のメアリは婚約者であり侯爵令息、さらに生徒会長のオルスタに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかも学院内のクラスの中で……。 慰謝料も支払わず、さらに共同で事業を行っていたのだがその利益も不当に奪われる結果に。 メアリは婚約破棄はともかく、それ以外のことには納得行かず幼馴染の伯爵令息レヴィンと共に反論することに。 急速に二人の仲も進展していくが……?

私が王女だと婚約者は知らない ~平民の子供だと勘違いして妹を選んでももう遅い。私は公爵様に溺愛されます~

上下左右
恋愛
 クレアの婚約者であるルインは、彼女の妹と不自然なほどに仲が良かった。  疑いを持ったクレアが彼の部屋を訪れると、二人の逢瀬の現場を目撃する。だが彼は「平民の血を引く貴様のことが嫌いだった!」と居直った上に、婚約の破棄を宣言する。  絶望するクレアに、救いの手を差し伸べたのは、ギルフォード公爵だった。彼はクレアを溺愛しており、不義理を働いたルインを許せないと報復を誓う。  一方のルインは、後に彼女が王族だと知る。妹を捨ててでも、なんとか復縁しようと縋るが、後悔してももう遅い。クレアはその要求を冷たく跳ねのけるのだった。  本物語は平民の子だと誤解されて婚約破棄された令嬢が、公爵に溺愛され、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である

処理中です...