婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

第28話

「クロエがいない！」

エリザベスの驚きに溢れた悲鳴が部屋中に響く。クロエが出て行ってから家の中は祭りのように騒がしくなった。

今日も一緒に遊ぼうと思って部屋に向かったエリザベスはクロエの姿がない事に不安に襲われる。何度呼びかけても返事がないのだ。

実は一緒のベットで寝たいとさえ考えていて繰り返し迫ったが、それはクロエに断られて渋々ながら納得した。

「クロエはどこ？」

片時も離れたくないのに自分を置いてクロエはどこに行ったのだろう？エリザベスは部屋を飛び出して家の中を走り回りくまなく探す。

「ねぇ、クロエ知らない？」
「エリザベス様申し訳ありませんが私にも分かりません」

探している途中すれ違ったメイドに尋ねるがメイドは知らないと答えた。それは本当だったけど、自分達がクロエをいじめて追い出したことは当たり前だが口にしない。

そんなことを言えばエリザベスから大目玉を食らう。以前エリザベスとクロエが二人で話している時に、メイドがお菓子を運んで行ったところエリザベスには紅茶だがクロエには水を出した。

「お前は5日間ご飯抜き！」
「お許しを…間違っていただけなんです…」
「しつこいから今月は給金も無しにします！」
「そんな無慈悲な…」

その時にクロエがそれを指摘したらエリザベスは顔を真っ赤にして烈火のごとく叱りまくりメイドに向かって数日間食事は無しだと命令した。

メイドが涙を流して一心不乱に許しを願うもエリザベスの怒りはおさまることはなかった。執念深く謝り続けるメイドに今月はただ働きだと歯に衣着せぬ態度で言い放ったのです。

「あの子馬鹿ね…」
「エリザベス様はあの子のことをとても気に入っているのよ」
「露骨に嫌がらせしたらバレるに決まってるでしょ？」
「そんなあからさまなやり方するから…」
「私だったらもっと陰湿にするわ」
「エリザベス様に私達がクロエに意地悪してることが知られたら私達は破滅なのよ！」
「そうよ！あなたはそれを肝に銘じなさい！」
「すみませんでした」
「まあいいわ…食事は私達の分を少しずつ分けてあげるから…」
「ありがとう…」
「そんなに落ち込まないで元気出して」
「私達はいつでも仲間だから」
「でも食事は分けてあげるけどお金はダメだからね」
「うん…」

メイドも当然ながらエリザベスがクロエにべた惚れになっていることは認識していた。

それなのにエリザベスのいる前でオブラートに包まずにクロエをいじめたら、怒られるのは当然だと罰が下されたメイドに同情する言葉をかける者は誰一人としていない。

数日間食事を抜きだと言い渡されたメイドの表情が曇り抜け殻のようになっていると、他のメイド達が心配した目で哀れな心に浸かり優しさをみせる。

各々が自分の食事を分け与えると声を上げ始めると涙声で感謝の言葉を述べる。メイド達の連帯感が高まり絆が揺るぎないものになりました。

エリザベスは本当に無邪気で子供みたいな性格で、メイド達がクロエを陰でいたぶりおざなりな扱いをされていることなど夢にも思わない。クロエもエリザベスに真意を語ることはしませんでした。