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第6話

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クロエとジャックが復縁して元の恋人関係に戻った数日前。

ジャックの家ではこれまでにない悲惨な事態に突入しようとしていた。相変わらず家に遊びに来ていたエリザベスにジャックが家族と絶縁する覚悟で勇気を持って切り出す。

「僕達少し離れないか?」

しばらくの間距離を置こうとジャックが告げたところ突然子供のようにギャーギャー泣き喚いて一時は解決の糸口がつかめないほどでした。ジャックも自分の過去を否定する申し訳ない思いでやりきれない顔をしていたが別れたクロエのことを断ち切れない気持ちが後押しする。

エリザベスからしたら不意にそんなことを言われては事情が飲み込めないし理解もできない。驚きのためグリーンに輝く大きく美しい瞳を無意識のうちにまぶたを一段と見開いた。そして涙を含んだ瞳からぽろぽろと涙を落とし始めるのです。

部屋中に響き渡る悲鳴のようなエリザベスの泣き声を聞いて鼓膜が震えた両親は何事かと慌てふためいた顔で走るような足取りで駆けつける。

「一体どうしたんだ?」
「何があったの?」

ジャックの両親は興奮して息子をとがめるような様な声を出す。それもそのはずエリザベスのことを自分達の子供のように可愛がり家族同様のエリザベスが悪霊が取り憑かれたと思うほどに荒れ狂っていたのだから両親が取り乱した口調になるのも仕方がない。

「まずはエリザベスの気持ちを静めてなだめるんだ」
「エリザベスもう大丈夫だよ?怖かったね」

有無を言わせない威圧感のある父親の声で、悲しくて声を立てて泣くエリザベスの肩を素早く抱いて優しい調子で子供の機嫌をうかがい諭すように懸命になって慰める母親。

その光景を目の当たりにしたジャックは今まで特に意識しないで普通の事だと思っていましたが、感じたことがなかった気持ちになり幼馴染のエリザベスとは異様な関係といってよいほどの思いが湧いてきて頭の中で疑問が飛び交う。

「お父様にお母様!ジャックが…」
「ジャックがどうしたんだい?エリザベス教えておくれ」
「ジャックが私にひどいことを言うの!」

母親のいたわりの言葉で優しく包み込まれたエリザベスは徐々に心が平静に戻る。それでも痛々しいほど途方にくれた表情をして泣き腫らし目を真っ赤にしたエリザベスは納得のいかない態度で涙ながらにジャックの両親にわめき散らして嘆く。

その瞬間にジャックは部屋の空気が重苦しくなるのを感じてハッとする。両親から息子に向けるとは思えないほど鋭く非難するような凄まじい形相で睨みつけられていたことに気がつく。ジャックは今にも泣き出しそうな情けない顔で追いつめられた小動物みたいに身震いしていた。
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