上 下
5 / 23

5話

しおりを挟む
「それよりも向こうでの話し合いはどうなったんだ?」

ウィリアムは単刀直入に切りだす。ロバートが婚約破棄を宣言したことについて心配で気になっていた。婚約披露パーティーは解散することになり、アンジェラとロバートと国王と王妃の話し合いがどのように落ち着いたのか結論を知りたかった。

「ロバートとは別れます。国王と王妃がいくら説得しても無駄でした」
「そうか……アンジェラはあの男に未練があるのかい?」

父から当然聞かれると思っていたので、アンジェラは表面はあくまで冷静さを見せながら答える。国王と王妃は動揺しながらも婚約破棄を思いとどまるよう説得するが、ロバートの決意は固くニーナという年下の幼馴染との愛を貫く姿勢を見せていた。

ウィリアムは納得したというように頷いてからしゃべり始めた。息づまるような切ない表情を浮かべてアンジェラの気持ちを聞いた。

「全くございません!」

突然のことで気持ちの整理がつかないというのが正直なところですが、ロバートに未練が残っているとは思いたくなかった。アンジェラは父を心配させたくなかったので堂々とした態度できっぱりと断言した。

「それなら良かった。もういいのか?」
「これから相手の人を呼んで事実確認をしたうえで国王が処分を下すそうです。私も話し合いに参加して最後まで見届けたいと思います」

未練はないとはっきり答える娘の言葉を聞いてウィリアムは救われた気持ちになる。続けてウィリアムは話し合いは終わったのか?と尋ねた。アンジェラは父の顔をまっすぐに見つめながら言った。ロバートの想い人である年下の幼馴染のニーナを交えて話し合いを行う。その返答で国王が処罰を決めるという。アンジェラは元婚約者として終わりまで付き合うという。その姿は気高さに満ちていた。

「私も行った方がいいのだろうが、正直なところ我が最愛の娘の顔に泥を塗った男には会いたくないというのが本音だ」
「大丈夫です。お父様はお母様のそばにいてあげてください」

ウィリアムはロバートに対する怒りが非常に強くある。婚約披露パーティーに訪れた大勢の人たちの前で、婚約破棄を言い渡してアンジェラの感情を踏みつけにする行為をした。娘を傷つけた男の顔も見たくないという気分だった。

アンジェラは父の気持ちを理解して優しい声と表情をつくって言う。アンジェラの後ろ姿を見送りながら思いやりの心を持った人間に成長したことを嬉しく感じ、ウィリアムは大切に育てた娘を嫁がせなくて本当に良かったとほっとする思いを味わっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染と恋人は別だと言われました

迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」  大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。  毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。  幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。  そして、ある日突然、私は全てを奪われた。  幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?    サクッと終わる短編を目指しました。  内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m    

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

気弱な公爵夫人様、ある日発狂する〜使用人達から虐待された結果邸内を破壊しまくると、何故か公爵に甘やかされる〜

下菊みこと
恋愛
狂犬卿の妻もまた狂犬のようです。 シャルロットは狂犬卿と呼ばれるレオと結婚するが、そんな夫には相手にされていない。使用人たちからはそれが理由で舐められて虐待され、しかし自分一人では何もできないため逃げ出すことすら出来ないシャルロット。シャルロットはついに壊れて発狂する。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者を幼馴染にとられた公爵令嬢は、国王陛下に溺愛されました

佐倉ミズキ
恋愛
ダミア王国でも美しいと有名な公爵令嬢セシリアは、幼馴染でソフィアナに婚約者ガルを寝取られた。 お腹には子供までいるという。ソフィアナの計画的犯行だった。 悔しかったが、取り乱すところを見せたくなかったセシリアは笑顔で二人を送り出す。。 傷心の中、領土内にあった王宮病院に慰問へ行く。 そこで、足を怪我した男性と出会い意気投合した。 それから一月後。 王宮から成人を祝うパーティーが開かれるとのことでセシリアはしぶしぶ参加することになった。 やはりそこでも、ソフィアナに嫌味を言われてしまう。 つい、言い返しそうななったその時。 声をかけてきたのはあの王宮病院で出会った男性だった。 彼の正体はーー……。 ※カクヨム、ベリーズカフェにも掲載中

愛しておりますわ、“婚約者”様[完]

ラララキヲ
恋愛
「リゼオン様、愛しておりますわ」 それはマリーナの口癖だった。  伯爵令嬢マリーナは婚約者である侯爵令息のリゼオンにいつも愛の言葉を伝える。  しかしリゼオンは伯爵家へと婿入りする事に最初から不満だった。だからマリーナなんかを愛していない。  リゼオンは学園で出会ったカレナ男爵令嬢と恋仲になり、自分に心酔しているマリーナを婚約破棄で脅してカレナを第2夫人として認めさせようと考えつく。  しかしその企みは婚約破棄をあっさりと受け入れたマリーナによって失敗に終わった。  焦ったリゼオンはマリーナに「俺を愛していると言っていただろう!?」と詰め寄るが…… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

邪魔者は消えようと思たのですが……どういう訳か離してくれません

りまり
恋愛
 私には婚約者がいるのですが、彼は私が嫌いのようでやたらと他の令嬢と一緒にいるところを目撃しています。  そんな時、あまりの婚約者殿の態度に両家の両親がそんなに嫌なら婚約解消しようと話が持ち上がってきた時、あれだけ私を無視していたのが嘘のような態度ですり寄ってくるんです。  本当に何を考えているのやら?

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

処理中です...