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12話

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アンジェラは気分転換もかねてダリアと一緒に買い物に行った。今回の婚約破棄騒動で両親は何かと心配してくれた。今日は気晴らしになるから遊びに行きましょうとダリアは優しく声をかけた。アンジェラは嬉しそうな顔をしてお誘いに二つ返事で行くことを了承した。

「アンジェラ!」

母と買い物帰りのときだった。これから馬車に乗って帰ろうという時に突然自分の名前を呼ばれた。アンジェラは驚いた顔で立ち止まり不思議そうに周りを見渡した。

ぽつんと一人で不審な男が静止している。失礼な事だと思ったが何だかすごくみすぼらしく見えた。不衛生を絵に描いたような印象を受ける。アンジェラは少し首をかしげ頬に手を当てて考え込むが、こんな知り合いは記憶に残っていない。ダリアも心当たりがないという顔をしている。

「止まれ!それ以上は近づくなっ!!」

変な不審者はアンジェラをじっと見て、急にこっちの方へ近づきかけているときである。厳しい態度で警告を叫んだのは、そばに立っていたエスコート役を務めていた男性だった。

立ち姿を見るに上背があって一見細身に見えますが、よく見ると筋肉質の引き締まった体つきをしていて鍛えていることが一目でわかる。公爵家に仕える者としては奥様とお嬢様を保護するのが最優先なので、数人の男性は二人を守るように立ちふさがった。

「待ってくれ!僕は怪しい者じゃないから落ち着いてください」
「それなら名前を言え」

不審な男は慌てふためいて大声を上げて弁解しようとした。不審者に怪しい者じゃないと言われても信じることはできない。正体がわからないので警戒しながら強張った怖い顔で質問の答えを要求した。不審者から対象の身を守るために護衛の男性は正しい行動を取っていると断言できる。

「僕はロバートでこの国の王子だ」
「はぁ?本当なのか?」

不審者はロバートだった。ふてくされたような声を上げた。護衛の男性は眉をひそめて疑わしそうな視線を向けて重ねて問う。ロバート王子と名乗っているがで嘘か本当か分からなかった。

「お前がロバート王子だと……?」
「嘘をつくならもう少しまともな嘘をつけ」
乞食こじきだと言った方が納得できるぞ」

不審者に間違いないが危害を加えるつもりはなさそうな気がした。護衛の男性たちは近づいてよく見るとボサボサの髪に、どう見ても清潔感がない汚れてボロボロの服装などから王子とは思えなかった。

「おい、やめろ……離せぇーーー!僕は絶対に嘘なんか言ってない!アンジェラ黙ってないで何とか言ってくれよぉーーーーー!!」

自分のことを王子だとふざけたことを言う頭のおかしな男をこのままにはしておけないと思った。王族に対する不敬行為といった道徳的な罪目で、護衛男性たちは捕らえて連れて行くことにした。

その時ロバートがアンジェラに助けを求めてきた。一生懸命さを感じる涙を流さんばかりの顔で、通行人が驚いて振り返るほどの辺りに響く大きな声をあげた。
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