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「ふぅ……やっぱり我が家は落ち着くわね」
「左様でございますか」

しばらくするとリディアは、お気に入りのソファに腰かけて優雅に紅茶を楽しむ幸せな時間に酔いしれる。先ほどと打って変わって上機嫌な様子のリディアにメイドも微笑み相槌を返す。

「そう言えばお父様とお母様を見かけませんが?」
「それでしたら早朝から街のほうにお買い物に行かれましたよ」
「そう……」
「リディアお嬢様がお帰りになるので、何かサプライズパーティーを計画していらっしゃるかもしれませんよ?」

落ち着いてきたら両親の不在がふと気がつく。どうやら朝早くから街に出かけているらしい。自分が里帰りしたのに留守にしてるなんてとリディアは残念な表情をします。

すると、その悲しい気持ちに沈むリディアに、胸を痛めたメイドが元気付けるように言うのです。ご両親様は帰って来るリディアに、何か驚くようなプレゼントを準備しているのでは?と。

仮にそうであったとしても、前日までに用意しておけばいいだけ。プレゼントなんていらないから、リディアは両親に出迎えてほしかった。顔一面に笑顔を浮かべて強く抱きしめてもらったほうが、何よりも嬉しい最高の喜び。


「ご飯まだ?お腹減ったからさっさと支度して!」

急に姿を現すエマ。見たところ風呂に入っていたことが一目で分かる。何故ならば、頭にタオルをのせて髪の毛が濡れている状態。

それに普段から使うリディアの花もようが綺麗に装飾を施してある寝巻き姿。背格好が少し小さいのでだらしなく着ている。リディアは可笑しいのと驚きで頭が揺れ思わず紅茶を吹き出しそうになるのを我慢した。

空腹だからご飯を用意をしろと、公爵家に礼儀作法を身につけるために奉公に来ている貴族のメイドに、恥じることもなく半ば当然のように命令するのです。

「親の顔が見てみたい……」

リディアは呆れて思わず口に出してしまう。子供を放置している時点でろくな親じゃない事は確かですが、家に居られても不快だし迷惑以外の何者でもない。

あなたさっきまでお菓子を好きなだけ食べてたでしょ?と突っ込みを入れたくなる。平民の分際で身の程を弁えない厚かましく憎らしい態度。

「あなた何様なの!黙って聞いていれば調子に乗り過ぎよ!」
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