結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

第16話 夫婦の会話は大切

部屋にはアメリアにエリー、スカーレットにジェームズに後はメイドが二人。

夫とは二週間ぶりに再会する。普通に元気そうで笑顔を向けてきた。こちらにだんだん近づいて来るとチョコレートの甘い香りが鼻をついた。アメリアは眉を寄せて迷惑げな表情に変化した。

今まで我慢したからご褒美だとスカーレットが大量のチョコレートを渡して、ジェームズは隠し部屋で心おきなくチョコレートを食べていた。

アメリアはナタリアの妊娠と結婚について徹底的に追求したくて、この際チョコレートの匂いは精神的な修行だとでも思いひたすら耐えようと唇を噛みしめる。

「エリーも一緒に来たの？エリー久しぶり！」

夫は妙に明るく爽やかな声を響かせる。不倫相手だったエリーを見つけると、親しそうに笑いながら話しかけますがエリーは気まずそうに顔をそむけた。

「ジェームズふざけないで！」
「別にふざけてないよ。久しぶりに人と話すのが新鮮で嬉しくてさ。アメリアは可愛いから怒っても全然怖くなくて可愛さが増すだけだね」

次の瞬間アメリアは全身の怒りを解放させたように叫んだ。夫の軽口を飛ばす冗談とも本気ともつかない態度に、説明のつかない苛立たしさが湧いてきて落ち着かなかった。

ジェームズは本音を言っていた。隠し部屋に引きこもって誰とも会わなかったので、人との日常会話的なやりとりにも幸せな気持ちになりとても楽しかった。

ジェームズは久しぶりにアメリアの顔を見て恋に落ちたように愛おしそうに見つめますが、逆にアメリアのほうは不機嫌そうに顔をしかめ睨みつけている。

アメリアから突き刺さるような視線を向けられてもジェームズは強い喜びを感じた。お互いの視線がぶつかって見つめ合っているのが何だか嬉しく、ジェームズの全身に幸福の電流が走って体が震えた。

「ジェームズ一つ言いたいことがあるんだけどいい？」
「アメリア何かな？」
「チョコレート臭いから私の前で息しないでくれる。さっきから吐きそうだから」

気高い心を持ったアメリアは先ほどから、ジェームズに軽んじられたと感じて誇りが傷ついた。敬意を払わない夫にひと泡吹かせてやろうと反撃を開始した。ずっと臭くても我慢していたアメリアは暴言すれすれの言葉を浴びせてやった。

「あははは、手厳しい意見だね。でも生きたいから呼吸はさせてくれよ」
「それなら手で口を押さえてジェームズの息がもれないようにして」

ジェームズはまだ生命を維持したいと笑って言う。アメリアからの想像の斜め上の言葉にジェームズは格好がつかない気分になった。チョコレートのことは初めて言われたので、精神が破壊されて泣きそうになる。

アメリアは心温かい包容力のある女性なので夫の不倫が発覚する前までは、夫の息がいくらチョコレート臭くても傷つけたくないので言いませんでした。抱き合ってキスをした時もまだ愛していたので、自分の気持ちをごまかして健気にも苦痛に耐えていた。

「これでいいかな？ハンカチを口に当てて話すから許してくれ」
「言わなくても最初からそうしなさい」

夫はポケットからハンカチを取り出して、マスクを着用するようにハンカチを口に押し当てた。デリカシーに欠けた鈍感な人だとアメリアは文句を言う。二人は久しぶりの夫婦の会話を以外に楽しんでいた。