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第4話 離婚寸前の夫婦

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アメリアはベッドの上に横になって冷静に出来事を考えようとした。何か言っているジェームズを無視して逃げるように階段を上り自分の部屋に入った。

つい先日まで予想しえなかった事態が起こる。親友だと思っていたエリーの裏切りを知り悲しかったし、怒りの持って行き場がなくて辛い思いに耐えていた。

「エリーの旦那さんの顔は怖かったな」

今ふと思い出してみたらエリーの旦那さんが怒っている時の顔は火を噴きそうな恐ろしい形相をしていた。

アメリアが慰謝料を請求することを伝えると、妻とこれから話し合いますと言われ今日は帰ってくださいと言われた。エリーはジェームズに言い寄られ熱烈なアプローチを断りきれず、密接な関係をもってしまったと旦那さんに言って責任から逃れようとしていた。

仮にエリーの言うことが本当だとしてもそんな言い訳が旦那さんに通用するのかとアメリアは思っていました。向こうは結婚して長く二人の子供がいるので、エリーの本性は旦那さんがよく分かっているでしょう。

「私はエリーのことを無二の親友として全幅の信頼を寄せていたのに……」

またか?みたいなことを旦那さんが言っていたことを思い出した。その言葉からエリーは過去にも不倫をしていたことがわかる。もしそうなら全く気が付かなかった自分は親友のことを何も知らなかったのだと思い、アメリアの顔は深く落ち込んで寂しく暗い影を背負っているように見えた。

――翌日朝起きて一階に到着すると、ジェームズはソファに腰をおろし呑気のんきそうに煙草を吹かしていた。今はもう気持ちの上では開き直っているような態度に、アメリアは冷たい眼で眺めながらジェームズのどこか安定して図太い神経にふてぶてしさを感じる。

「アメリアは最終的にどうしたいんだ?」

向かい合って座ってしばらく黙っているとジェームズが急に話しかけて、アメリアはじっと警戒の眼を光らせた。

アメリアは離婚の決意をしていました。それなのに、いざとなるとなかなか思いを伝える事が出来なくてどうしたいのかが自分の中でまだ整理がつかない。

「まだはっきりとは決めていませんが、心にけじめをつけるために慰謝料は頂きます」
「わかった」

ジェームズに甘いと思われて舐められないように、不倫に対する慰謝料を請求することは話した。数日後、伯爵家から封書が送られてきて開けてみると夫婦で話がまとまったので、今度はアメリア側と話し合いたいということでした。

ジェームズは話し合いには消極的な姿勢で嫌々ながらという感じで受け入れていた。
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