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第48話

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「アイラと話したい」

本当は楽しくおしゃべりしたいのに、周りの連中が自分とアイラのコミュニケーションを観察してるかもしれない。

そんなことをあれこれ考えると、アイラへの返事もぎこちないものになってしまい、親切心の無い言い方をするようになった。

「ガブリエル君、最近話しかけても冷たくなったね」
「そうかなぁ」

ガブリエルがそっけない態度だから、最初はいつものように話しかけてくれたアイラが、次第に話しかけてこなくなる。

いつもガブリエルを見かけると誰よりも先に、明るい笑顔を見せて活発に挨拶をしてくれていたのに、それもなくなってしまった。

この時は、別に二人の関係が悪くなっているわけではないと、ガブリエルは確固たる信念を持っていた。その理由は、朝登校する時や帰りの時だけは、クラスの子に見られていないからアイラと会話をしていたのだ。

「アイラ途中まで一緒に帰ろう」
「うん、いいよガブリエル君」

教室での緊張が解けてやっと安心して息をつくことができた。アイラと普通に笑顔で言葉を交わすだけで、ガブリエルは嬉しさのあまり瞳が輝いて、お腹からの笑いを抑えきれないほどでした。

クラスの子たちの視線を気にしながら、隠れてこっそり会話を交わすという、何とも情けない有様である。だがガブリエルには精一杯のことだった。

「僕はなんて臆病者なんだ」

家に帰ってきてから強烈な自己嫌悪を味わうものの、やはり皆がいる教室ではアイラに話しかけられない。ただガブリエルが腑抜けだっただけのこと。

こんなに好きなのに、ガブリエルの肝っ玉が小さ過ぎてアイラを避けるようになった。当然ながら恋は前進どころか、大きく後退したのは間違いない。

「はぁーっ」

ガブリエルは止むを得ないという思いでため息をもらす。何となく二人の仲がギクシャクしているような状態で半年が経った。

ガブリエルには想像を絶する苦痛でした。同じクラスになっても遠くからアイラを目で追うことしかできなくて、途方にくれる気分になる。

でもアイラは病気がちで身体が弱いのに、いつも元気な声を響き渡らせていた。アイラは愛想がよく誰とでも仲良くできるから、ガブリエルと会話することがなくなっても笑顔を絶やさぬ日々を送っている。

「かわいいなぁ」

そんなアイラの屈託のない無邪気な笑顔を見ていると、憂鬱な気分に陥っているガブリエルの心が、パッと明るく照らされたようでした。
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