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第52話 衝撃の料理に感動

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「美味しいっ!どうしてこんなに美味しいんだ!?」

ルークは衝撃的な出来事に驚きで美しい大きな目を見開いていた。その料理を口に含んだ瞬間、無上の喜びを感じていた。なんて味わい深い料理なんだと平常心を失って、はしゃいだ気持ちになって満足そうな笑顔を見せていた。

「お口に合って良かったです」

アンナは自然と笑みをこぼして言った。自分の作った料理が褒められたら嬉しい。それも凄く喜んで食べてくれている。ルークがあまりに最高のものだったと絶賛してくれるから、アンナは恥ずかしいような照れくさいような気持ちになった。

アンナはルークの家で一緒に夕食を取っていた。ダイヤモンド鉱山を出て空を移動中に話し合って決めた。職業安定所に依頼完了の報告をするのは、明日でも数日後でもいいだろうとなって伯爵邸へ帰ってきた。

本来であれば、ダイヤモンド鉱山で宝石を数時間で発見してしまうことが異常なこと。普通なら数ヶ月間にわたって採掘作業を行う必要がある。それでも宝石を発見できるかどうかは不明。

ルークの祖父が鉱山を購入した時に数年間続けても宝石は小さな欠片かけらすら発見されることはなかった。おそらく専門家を集めて大人数で効率的に採掘作業は行われたのだろう。

それに比べてルークとアンナは二人だけの採掘。ルークも当然のように数ヶ月間は必要になると考えていたが、アンナが並み外れた優秀な女性で予想外の素晴らしい結果をもたらした。

「アンナは料理まで出来るんだな……それもこれほど見事な……僕は正直言って感動した!世の中にこんな美味しいものがあったのかと思ったほどだ」

食事を終えたルークは改めてアンナの作った料理を高く称賛した。ルークは驚異的な美味しさに食欲が増進して、やめられなくて手が止まらなくて自分の食い意地に呆れた。ルークはアンナのことを常識を超えた存在だと思っている。アンナ本人もルークも家事の隠された真実は分かっていない。

伯爵邸に到着した時は、もうあたりがすっかり暗くなっていた。ルークは伯爵家の当主だが使用人たちが大勢でお出迎えしてくれることはなかった。ルークの家庭の事情で使用人はほんの少数しかいないので、一人のメイドが急ぎ足で出て来て「おかえりなさいませ」と丁寧に頭を下げて出迎えた。

ルークがアンナを紹介すると、メイドは親しみを感じさせるお辞儀をした。目が合うとアンナも微笑んで軽く会釈した。居心地のいい場所になりそうだなあと、アンナは全身の力が抜けていくような感じで心の底から安心感がこみ上げてきた。

まずは食事をしようという話になったとき、アンナはもし良かったら作りますと言った。客に食事を作らせるなんてとメイドは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。その理由は家庭の事情で詳しく言うと、ルークの父であるクーズィハが作った莫大な借金返済のために使用人たちを満足に雇えなかった。

クーズィハは大変な浪費家で酒好きで毎夜のように飲み歩いていた。派手な女性関係で次々と愛人を妊娠させた。その女性たちに金銭的援助を惜しまないで行っている。鉱山で見つけた宝石や鉱石を売って資金の目処がついたら、解雇した使用人たちを呼び戻そうと思っている。何から何まで全部アンナのおかげで救われてルークは深く感謝していた。

「アンナ今日は本当にありがとう。ゆっくり体を休めてくれ。今日は遅いからアンナのことは明日両親に紹介する」

「わかりました」

ルークは部屋の前でもありがとうと頭を下げてアンナに礼を言う。夜遅くなっているので、両親には明日アンナのことを紹介すると言った。アンナも同意する返事をした。案内された部屋に入ると疲れていたので、すぐにベッドに横になっていつの間にか眠りについていた。
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