50 / 66
第50話 元婚約者の後悔と反省3
しおりを挟む
「ダニエル殿下が苦戦なさったスライムというのは希少種ですか?もしくは特殊個体ではないのですか?」
ジョセフは真面目くさった顔で言う。魔物には稀に希少種と呼ばれる存在がいる。ただの色違いであったり変異種みたいなもの。見た目は通常種と似ているようでも様々な能力が上昇している場合もある。名前の通り遭遇する確率が限りなく低い。
特殊個体は通常種が何らかの基準値をクリアすると、通常種を遥かに上回る存在に変化を遂げたもの。基本的な能力の上昇に理性を失い残忍で凶暴化している場合が多い。
希少種は戦闘になっても逃げに徹することもあるが、特殊個体は好戦的で積極的に向かってくる。ジョセフは普通と変わったスライムなので、ダニエルが思い通りに戦いを進められなくて手を焼いたんじゃありませんかと尋ねた。
「あとで専門家に調べさせたが普通のスライムだった」
ダニエルは普通のスライムだったと返答した。まだ幼い子供に体が衰弱している老人にもスライムは簡単に倒せるのに、ダニエルは恥ずかしげもなくジョセフを真剣な目で見つめて気取った態度で足を組んだ。
まともな感覚を持つ人間なら、普通のスライムに手痛い敗北を喫したら困ったように頭をかいたり、気まずそうな顔で視線をさまよわせる。または顔から火がでる思いで穴があったら入りたいような気持ちになるのではなかろうか。
「そうですか……」
ジョセフは困った顔のまま精神的に弱っている感じの声で応じた。ダニエルは洞窟で普通のスライムと遭遇して殺されかけたと言った。予想をずっと上回るダニエルの弱さにジョセフは思考が止まっていた。
(うわっ……ダニエル様、弱すぎ……?)
スザンナ夫人とレイチェルも口を開けて呆れたような表情になっていた。スライムに負けるなんて弱いにも程があると、レイチェルは心の中で大きなショックを受ける。
当然の如く気まずい雰囲気になって、しばらく沈黙が部屋を満たした。
「――アンナがいなくなってから弱くなった気がする。アンナがパワースポットに思えてならないんだ」
重苦しい空気の中でダニエルが口を開いた。アンナが関係しているのではないかとダニエルは直感的にそう思った。アンナがいなくなってから急に力を失ってしまった。以前は体の周囲には神秘的なオーラが揺らめいていたが今は全く感じられない。ダニエルはアンナがパワースポットの役割を果たしていたのではないかと言った。
「私も最近になって魔力が急激に落ちたが……?まさかアンナが……!?」
ジョセフはダニエルの言葉を聞いて頭に閃いたことがあった。ジョセフの職業は妖術師で怪しげな魔法を得意とする。魔法を使う職業では中位くらい。
ジョセフは最近、魔力がガタ落ちした。以前のように神秘的なオーラを体に感じなくなった。アンナを追放してから公爵家で様々な問題が発生した。食事に掃除など家事全般をアンナがたった一人でこなしていた。だが、それだけではなかった。
アンナは家事がレベルアップした時に、身体能力や家事の技能が上がるだけでなく様々な特別な能力が自動的に与えられる。ダニエルの言った通りアンナ自身がパワースポットで、周囲にいる人たちの身体能力に魔力などあらゆる能力を格段に向上させていた。
「私もだわ!アンナがいなくなってから歌と踊りがひどくお粗末なものになって……」
スザンナ夫人は次の瞬間、ハッとした顔で頭の中の霧が晴れた心地だった。スザンナの職業はアイドルスター。歌と踊りが得意。若い頃は美人で可愛いとチヤホヤされて、いつも歌が口をついて出て蝶のように軽やかに舞って周りを魅了していた。
スザンナは悩んでいた謎が解けて安らかな気持ちになる。ほのぼのとした顔で微笑みを浮かべていた。
ジョセフは真面目くさった顔で言う。魔物には稀に希少種と呼ばれる存在がいる。ただの色違いであったり変異種みたいなもの。見た目は通常種と似ているようでも様々な能力が上昇している場合もある。名前の通り遭遇する確率が限りなく低い。
特殊個体は通常種が何らかの基準値をクリアすると、通常種を遥かに上回る存在に変化を遂げたもの。基本的な能力の上昇に理性を失い残忍で凶暴化している場合が多い。
希少種は戦闘になっても逃げに徹することもあるが、特殊個体は好戦的で積極的に向かってくる。ジョセフは普通と変わったスライムなので、ダニエルが思い通りに戦いを進められなくて手を焼いたんじゃありませんかと尋ねた。
「あとで専門家に調べさせたが普通のスライムだった」
ダニエルは普通のスライムだったと返答した。まだ幼い子供に体が衰弱している老人にもスライムは簡単に倒せるのに、ダニエルは恥ずかしげもなくジョセフを真剣な目で見つめて気取った態度で足を組んだ。
まともな感覚を持つ人間なら、普通のスライムに手痛い敗北を喫したら困ったように頭をかいたり、気まずそうな顔で視線をさまよわせる。または顔から火がでる思いで穴があったら入りたいような気持ちになるのではなかろうか。
「そうですか……」
ジョセフは困った顔のまま精神的に弱っている感じの声で応じた。ダニエルは洞窟で普通のスライムと遭遇して殺されかけたと言った。予想をずっと上回るダニエルの弱さにジョセフは思考が止まっていた。
(うわっ……ダニエル様、弱すぎ……?)
スザンナ夫人とレイチェルも口を開けて呆れたような表情になっていた。スライムに負けるなんて弱いにも程があると、レイチェルは心の中で大きなショックを受ける。
当然の如く気まずい雰囲気になって、しばらく沈黙が部屋を満たした。
「――アンナがいなくなってから弱くなった気がする。アンナがパワースポットに思えてならないんだ」
重苦しい空気の中でダニエルが口を開いた。アンナが関係しているのではないかとダニエルは直感的にそう思った。アンナがいなくなってから急に力を失ってしまった。以前は体の周囲には神秘的なオーラが揺らめいていたが今は全く感じられない。ダニエルはアンナがパワースポットの役割を果たしていたのではないかと言った。
「私も最近になって魔力が急激に落ちたが……?まさかアンナが……!?」
ジョセフはダニエルの言葉を聞いて頭に閃いたことがあった。ジョセフの職業は妖術師で怪しげな魔法を得意とする。魔法を使う職業では中位くらい。
ジョセフは最近、魔力がガタ落ちした。以前のように神秘的なオーラを体に感じなくなった。アンナを追放してから公爵家で様々な問題が発生した。食事に掃除など家事全般をアンナがたった一人でこなしていた。だが、それだけではなかった。
アンナは家事がレベルアップした時に、身体能力や家事の技能が上がるだけでなく様々な特別な能力が自動的に与えられる。ダニエルの言った通りアンナ自身がパワースポットで、周囲にいる人たちの身体能力に魔力などあらゆる能力を格段に向上させていた。
「私もだわ!アンナがいなくなってから歌と踊りがひどくお粗末なものになって……」
スザンナ夫人は次の瞬間、ハッとした顔で頭の中の霧が晴れた心地だった。スザンナの職業はアイドルスター。歌と踊りが得意。若い頃は美人で可愛いとチヤホヤされて、いつも歌が口をついて出て蝶のように軽やかに舞って周りを魅了していた。
スザンナは悩んでいた謎が解けて安らかな気持ちになる。ほのぼのとした顔で微笑みを浮かべていた。
45
お気に入りに追加
2,787
あなたにおすすめの小説

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~
岡暁舟
恋愛
名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました
天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。
伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。
無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。
そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。
無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました
楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。
王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。
アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。
薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。
魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。
ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。
婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる