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第21話 受付嬢マリン視点1

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私は職業安定所の職員マリン。受付嬢として勤務している。仕事をお探しの方や求人事業主の方の間を取り持つ仕事です。ここで働き始めてもうすぐ十年になる。この仕事は自分に合っていてやりがいもある。でも恋人がいないことが個人的な悩み事の一つ。

まだここで働き始めた頃は殿方からのデートの申し込みは結構あった。最近はあまりないけど……。仕事が忙しくてそんな暇はありませんと断っていたことが少し懐かしい。上司からお前も一人前だと仕事を認められるようになった頃には友人や同僚は結婚していた。

結婚式に招待されて友人の花嫁姿を見るたびに、顔はおめでとうと笑顔でも心は氷のように冷え切っていた。花嫁の友人だということでスピーチを求められて、祝福の言葉やエールを贈るたびに虚しさを感じるのはなぜだろう。家に帰って友人の幸せそうな顔を思い出してはため息ばかり出る。

「そんな事は気にせず今日も頑張ろう!」

マリンは恋人がいない悲しみを乗り越えて自分を勇気づけるように言う。マリンは気を引き締めて業務に取り組む。

(な、なんて綺麗な人なの!?)

今日もいつもと変わらない日常が始まると思っていました。だが職務に就いて仕事を始めて少し経ってマリンの心は衝撃を受ける。マリンの担当する受付に並んでいた女性は自分の順番になってマリンの前にやってきた。何気ない様子で客の顔を見た瞬間に驚きで目を見張った。頭の中が真っ白になるというのはこういう感じなんだと思った。その女性の顔はあり得ないほど整って美しかった。

受付嬢といえば組織の顔とも言われる花形の仕事。だからマリンは顔にはそれなりに自信がある。これは決して自分を過大評価しているわけではないと思う。周りから美人だと言われてお姫様のようにチヤホヤされたことは何度もあった。最近では全然そういうのないけどね。昔は好きだ愛してると告白されることが当たり前だったのに。

その女性の顔を見た瞬間、マリンの昔はモテた自慢は完全に頭から吹き飛んでいた。客観的な判断をして、その女性と自分を比べると自分が美人なんて恥ずかしく思ってしまう。それほどまでに圧倒的な差で負けとなることをマリンはしみじみと痛感させられた。

「ハローワークへようこそ。今日はどういったご用件でしょうか?」

マリンは心は騒いで落ち着かなかったが表面は冷静さを保っていた。訪問者に良い印象を与えられるように明るい感じで丁寧に接する。普段どおりに必要な項目を尋ねた。女性の名前はアンナ。年齢は十八で職業は家事だという。家事と聞いてマリンは気の毒に思えた。

(こんな美人でも家事で苦労してるんだ……)

アンナという女性が容貌の整った世にも稀な美しい人なのは変わりないが、よく見ると元気がなさそうに感じる。明らかに落ち込んでいる様子が見て取れた。不遇職の家事だから仕方ないよね。

ここの職員のマリンは豊富な経験で知っている。家事の職業の人が能力が低くて無能で役立たずと言われて、邪険な扱いを受けていることを胸が痛いほど理解している。それゆえにこんな美しい人でも職業で苦労しているんだなと涙ぐましい心持ちになった。
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