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第19話

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「アメリアに浮気相手の男が複数いるだって……?そんな事あり得ないことだ!」

公爵家の当主アレッサンドロは机を叩いてやり場のない怒りを露わにした。アメリアは見た目は生真面目で遊んでいそうな様子は全然ないので、何かの間違いじゃないかと疑り深い顔で信じがたい話としか思えなかった。

両親は理想的な人格者としても知られ温厚で人望があり、聖女のフローラとエリザベスをこの世に誕生させた偉大な人物だと褒め称えられていた。

子供から老人まで賞賛の嵐が巻き起こるほど幅広い層に尊敬されている公爵夫妻ですが、三姉妹の次女として生まれたアメリアに対して長女のフローラと三女のエリザベスは、小さな子供の頃から冷たい態度で接していることは気がつかなかった。

夫妻は三姉妹はとても仲が良いと思っていた。フローラとエリザベスは親の前ではすごく良い子なのに、見ていないところではアメリアに意地悪をして道具のようにこき使っていた。

両親には三姉妹が普段から仲良くしている様子が頭にあるので、みんな楽しそうに遊んでいるように見えた。実際にはアメリアはフローラとエリザベスから苦しみを受けていた。

「驚かれるのも無理はありませんがクロフォード殿下からの手紙に記された内容は事実そのものです。私はアメリアの浮気に悩まされていたクロフォード殿下の相談相手になっていました」
「フローラ本当なのか?」
「お父様、フローラお姉様のおっしゃる通りですわ」

フローラとエリザベスは先手を打つ形で事情を説明した。フローラは心なしか申し訳なさそうに肩を落として不意に言った。アメリアの浮気は夢でも何でもなく紛れもない事実だと主張して、クロフォードを救いたい一心で相談に乗っていたと語る。

気持ちが不安定な状態の父にエリザベスが落ち着いた態度で言葉を口にする。裏付ける証拠は自分たちだという感じでフローラの意見に同意した。フローラとエリザベスは恐ろしく真剣な顔をして嘘をついた。

「お父様には申し上げにくいことですがアメリアには浮気相手が複数いて、中にはもいたみたいです」
「……は?」

アメリアが男にだらしないのは変わることのない本当のことだと、もっともらしい顔でフローラは改めて話した。アメリアの浮気相手は複数存在した。中には不倫関係になっていた相手もいて妻子ある男と熱烈な恋をしていたと言う。アレッサンドロは脳の理解が追いつかなくて、意味が分からないという顔で立ち尽くしている。

「アメリアお姉様が男遊びにふけって品行が悪いことは学園では有名ですよ」
「何だと!?いつからなんだ?」

エリザベスはアメリアの品行の悪さを暴露した。ほとんどの生徒が知っていることだと、険しい顔で思い詰めたような雰囲気を漂わせて言った。化石のように強張っていたアレッサンドロは、エリザベスの言葉で再起動を果たすと同時に流れるように質問する。

「もうかなり前からです。お父様とお母様に心配かけたくなくて……今まで黙っていたことをどうかお許しください」

アメリアの反倫理的な行為はずっと以前から知っていたと答えた。エリザベスは今にも泣きそうな顔で消えるような声で謝ると、ハンカチを取り出して目元に当て涙をぬぐうような仕草をした。
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