16 / 29
第16話
しおりを挟む
「それにしてもアメリアに罪を擦り付けるという発想をするとはフローラ容赦ねえな」
「本当に浮気して乱れているのは僕たちの方なのにね。アメリアに悪いことしたかな?」
「フローラお姉様はずる賢い性格で狡猾な頭脳をもっていますわ」
「アメリアに罪を着せるのが私たちにとって一番都合がいいでしょ?」
「それもそうだな、あはははははーっ!!」
(あなた達はひどい事をするものですね……)
いつも自分に自信がない弱気なアメリアですが、クロフォードに婚約破棄されて逆にそれで吹っ切れてしまうかもしれない。そうなったら躊躇わずに言うべきことを告白するだろう。自分たちが禁じられた恋に落ちて何度したか分からないほど熱烈なキスをして浮気を繰り返していることを……。そうなれば破滅的な結果をもたらすことになる。
フローラは勝気な性格で高い自尊心を持ち敬意を払うべき人格者として、誰からも好かれ認められた存在だと常に意識して日常生活を送っている。妹の婚約者を寝取っているなんて暴露されたら、神秘的な尊さが感じられる聖女の清らかさは失われ世間から後ろ指を指され石を投げられる。そんな事あっては絶対にならない。
フローラは真っ青になって唇がわなわな震えて美しい顔に怯えのような影が走る。自分が追い詰められているのがよくわかった時、悪魔的な発想が脳裏にひらめいた。フローラは卑劣な策略を実行してアメリアに無実の罪を負わせることを思いついた。
(私はどうすればいいの?)
アメリアは悔しそうに顔を歪めた。すべてフローラ達によって仕組まれたものだった。しかし具体的に何をどうすればいいのかわからずに混乱した。今ここでアメリアがみんなの前に姿を現し、よくも責任を負わせて悪者に仕立て上げてくれたわねと激怒して食ってかかればどうなるのか。
アメリアが不意に背後から声をかけたら最初は全員が驚くだろう。狼狽を顔に漂わせて慌てふためきながら、この場を取り繕うとすると思う。ところがアメリアが一人だけだと分かると逆襲される。身柄を拘束された後に反論の機会すら与えられずに一方的に判決を言い渡されるかもしれない。
最悪の場合は生命の危険すらある。自分たちの人生が崩壊するほどの重大な秘密をアメリアに知られてしまった。犯人視点から見ればアメリアを生かしておく理由はない。アメリアの気分で白日の下に晒され全ての人間が真実を知ることになるからだ。
これから先アメリアが生きている限り、フローラたちはアメリアに悪事を言いふらされるかもしれない恐怖に怯えて暮らすことになる。とは言え、元からアメリアには飛び出して叱責する勇気はなかった。弱気な性格からして実行するのは難しい。
(いいことを思いついた!)
アメリアは悩み続けていたその時、頭の中で偶然にいいアイデアを思いつくという僥倖を得た。不思議そうな顔をしていたアメリアは心に迷いが消えた。小さく背中を丸めて座り込んでいる姿勢でアメリアはただ黙って静かに微笑んでいた。
一通り話し終えると四人は何事もなかったように立ち去っていく。少し経ってアメリアは警戒しながら、ゆっくりと立ち上がった。その瞬間ふらっと足元がよろめいてしまう。
「本当に浮気して乱れているのは僕たちの方なのにね。アメリアに悪いことしたかな?」
「フローラお姉様はずる賢い性格で狡猾な頭脳をもっていますわ」
「アメリアに罪を着せるのが私たちにとって一番都合がいいでしょ?」
「それもそうだな、あはははははーっ!!」
(あなた達はひどい事をするものですね……)
いつも自分に自信がない弱気なアメリアですが、クロフォードに婚約破棄されて逆にそれで吹っ切れてしまうかもしれない。そうなったら躊躇わずに言うべきことを告白するだろう。自分たちが禁じられた恋に落ちて何度したか分からないほど熱烈なキスをして浮気を繰り返していることを……。そうなれば破滅的な結果をもたらすことになる。
フローラは勝気な性格で高い自尊心を持ち敬意を払うべき人格者として、誰からも好かれ認められた存在だと常に意識して日常生活を送っている。妹の婚約者を寝取っているなんて暴露されたら、神秘的な尊さが感じられる聖女の清らかさは失われ世間から後ろ指を指され石を投げられる。そんな事あっては絶対にならない。
フローラは真っ青になって唇がわなわな震えて美しい顔に怯えのような影が走る。自分が追い詰められているのがよくわかった時、悪魔的な発想が脳裏にひらめいた。フローラは卑劣な策略を実行してアメリアに無実の罪を負わせることを思いついた。
(私はどうすればいいの?)
アメリアは悔しそうに顔を歪めた。すべてフローラ達によって仕組まれたものだった。しかし具体的に何をどうすればいいのかわからずに混乱した。今ここでアメリアがみんなの前に姿を現し、よくも責任を負わせて悪者に仕立て上げてくれたわねと激怒して食ってかかればどうなるのか。
アメリアが不意に背後から声をかけたら最初は全員が驚くだろう。狼狽を顔に漂わせて慌てふためきながら、この場を取り繕うとすると思う。ところがアメリアが一人だけだと分かると逆襲される。身柄を拘束された後に反論の機会すら与えられずに一方的に判決を言い渡されるかもしれない。
最悪の場合は生命の危険すらある。自分たちの人生が崩壊するほどの重大な秘密をアメリアに知られてしまった。犯人視点から見ればアメリアを生かしておく理由はない。アメリアの気分で白日の下に晒され全ての人間が真実を知ることになるからだ。
これから先アメリアが生きている限り、フローラたちはアメリアに悪事を言いふらされるかもしれない恐怖に怯えて暮らすことになる。とは言え、元からアメリアには飛び出して叱責する勇気はなかった。弱気な性格からして実行するのは難しい。
(いいことを思いついた!)
アメリアは悩み続けていたその時、頭の中で偶然にいいアイデアを思いつくという僥倖を得た。不思議そうな顔をしていたアメリアは心に迷いが消えた。小さく背中を丸めて座り込んでいる姿勢でアメリアはただ黙って静かに微笑んでいた。
一通り話し終えると四人は何事もなかったように立ち去っていく。少し経ってアメリアは警戒しながら、ゆっくりと立ち上がった。その瞬間ふらっと足元がよろめいてしまう。
25
お気に入りに追加
1,563
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
次に貴方は、こう言うのでしょう?~婚約破棄を告げられた令嬢は、全て想定済みだった~
キョウキョウ
恋愛
「おまえとの婚約は破棄だ。俺は、彼女と一緒に生きていく」
アンセルム王子から婚約破棄を告げられたが、公爵令嬢のミレイユは微笑んだ。
睨むような視線を向けてくる婚約相手、彼の腕の中で震える子爵令嬢のディアヌ。怒りと軽蔑の視線を向けてくる王子の取り巻き達。
婚約者の座を奪われ、冤罪をかけられようとしているミレイユ。だけど彼女は、全く慌てていなかった。
なぜなら、かつて愛していたアンセルム王子の考えを正しく理解して、こうなることを予測していたから。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる
冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」
第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。
しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。
カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。
カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる