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第12話

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アメリアが勇気を出してクロフォードに意見したことがきっかけとなり、二人の間の亀裂は修復不可能になっていた。学園で顔を合わせても挨拶を交わすこともなくなったが、余計な心配を周りにかけたくないので周りに人がいるときは仲の良いふりをして表面だけを装っていた。

「悪いけど婚約は破棄させてもらう」
「言われなくても分かってます」

それから数ヶ月後、クロフォードに話があると手紙で呼び出された。婚約破棄を伝えられ二人の恋愛は終わることとなる。姉のフローラと浮気をしていることは知っていたし、呼び出された時に別れを切り出されることは何となく分かっていたので、別れるのが悲しくて泣いたり恋愛に破れて生きる自信を失うようなショックはなかった。

逆にクロフォードの浮気問題に頭を悩ましているうちに、別れたいという思いを心に強く持っていた。王家と公爵家の政治的な理由も加わってアメリアの方から婚約解消を申し出ることはできない。

自分から別れ話が出来ないアメリアは、クロフォードに婚約破棄を言い渡され苦しみから解放されて心が軽くなる。憑き物が落ちたようにすっきりした顔ですがすがしい気分になる。しかし翌日からアメリアに本当の苦しみが始まる――

「アメリア様ってクロフォード殿下に捨てられたらしいわよ」
「え?どうして?」
「なんでも手当たり次第に浮気してたみたい」
「うそー、信じられない!クロフォード王子かわいそう」
「大人しそうに見えて実は……って子は多いですわ」

次の日、学園ではこんな噂話を耳にして刺すような冷たい視線を向けられる。寝耳に水の話でアメリアは何を言ってるのか理解できなかった。これまでクロフォード王子だけを一途に想い続けて浮気など考えたこともないし実際にした事もないのに、アメリアが浮気を繰り返してクロフォードに愛想を尽かされて見捨てられたと広まっていた。

アメリアに関する噂が流布るふされているが事実とは異なる驚くべきもので、実際これだけの短い間に学園の生徒に噂が知れ渡るのは不自然に感じる。何者かによる陰謀によってアメリアの冒涜を目的としたものを感じずにはいられません。

「まるで悪魔の化身ね」
「被害者が聖女のおふたりに相談されたらしいわ」
「フローラ様とエリザベス様によってアメリアは制裁されたのよ!」

具体的な内容はアメリアが公爵家の威光を笠に着て、好みの男を紹介しろと下級貴族や平民階級の生徒に命令した。気に入らない男を紹介したら血相を変えて怒りをぶちまけられむち打ちに処すなど厳しい罰を受けさせられた。アメリアの横暴な振る舞いは繰り返し行われ、耐えきれなくなってアメリアの肉親に助けを求めたのだという。
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