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第7話
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「どういうことですか?」
「別にフローラと結婚するつもりはない。そのことはフローラと話し合って決めた」
「はぁ?」
いまいち納得できないアメリアは首をかしげ眉を寄せて尋ねた。クロフォードとフローラはお互いの意志が一致して友達以上恋人未満の付き合いをしていくと言う。アメリアはきょとんとした顔をして寝ぼけたような声で応じる。
「フローラはアメリアには秘密にしとけばいいと言ったが、やっぱりこういうのはちゃんとアメリアの許可を得てからの方が良いからな」
「クロフォードはフローラお姉様のことが好きなの?」
クロフォードは謙虚な態度で告白しているが、どんなもっともらしい理由を並べ立てたところで婚約しているアメリアを裏切った。それだけでなくフローラと不適切な関係を認めてほしいとわけの分からない戯言を聞かされただけのことだ。
アメリアは息が苦しくなるほどの激しい動悸を刻みながら、フローラのことが好きかどうか確認するように尋ねた。
「うん、フローラのことが好きになった。でも体だけの関係で心はアメリアにある」
「っ!」
クロフォードは恥を恥とも思わない顔で他人事みたいに言っているが、フローラとは夫婦や恋人といった関係を望まず要するに体だけの関係を続けるみたい。アメリアは返す言葉もなく無念そうに唇を噛み涙が瞳からこぼれ落ちようとしていた。
「最初はアメリアに悪いと思ったけどフローラと関係を持って生まれ変わった気分だ。自分がこんな恋愛するなんて思わなかった。聖女だから何となく近寄りがたい雰囲気があったけど、話してみるとフローラは美しいだけじゃなくて心の温かい女性だと感じたよ」
アメリアは大きなショックを受けて意気消沈したような顔でいると、クロフォードは恥ずかしそうに顔を赤らめて言い始める。誘惑と欲望に負けてフローラと親密な関係を結んでしまったけど、生まれ変わったと幸せそうに瞳を潤ませていた。
王子のクロフォードでさえも国の守護聖女という立場のフローラには気安く話しかけるのもはばかられるほどだった。フローラは独特の雰囲気を醸し出していて最初はフローラに対し冷たい印象を抱いていたというが、話してみると心の奥まで温かい女性でフローラの本当の優しさを知ったと忠誠を誓ったように語る。
「フローラお姉様は普段は感情を表に出さないですけど実際は気配り上手で気さくな人柄ですからね」
「さすがアメリア!姉妹だからよくフローラのことを分かってるな」
フローラを悪く言うとクロフォードに怒られそうで怖くて、アメリアは姉を褒め上げてヨイショしまくるという卑屈な行動をとった。クロフォードは白い歯をのぞかせて笑って幸せそうな空気を体じゅうから出していた。アメリアは言ってしまってから悔しくて情けなくて泣きたい気分になった。
「別にフローラと結婚するつもりはない。そのことはフローラと話し合って決めた」
「はぁ?」
いまいち納得できないアメリアは首をかしげ眉を寄せて尋ねた。クロフォードとフローラはお互いの意志が一致して友達以上恋人未満の付き合いをしていくと言う。アメリアはきょとんとした顔をして寝ぼけたような声で応じる。
「フローラはアメリアには秘密にしとけばいいと言ったが、やっぱりこういうのはちゃんとアメリアの許可を得てからの方が良いからな」
「クロフォードはフローラお姉様のことが好きなの?」
クロフォードは謙虚な態度で告白しているが、どんなもっともらしい理由を並べ立てたところで婚約しているアメリアを裏切った。それだけでなくフローラと不適切な関係を認めてほしいとわけの分からない戯言を聞かされただけのことだ。
アメリアは息が苦しくなるほどの激しい動悸を刻みながら、フローラのことが好きかどうか確認するように尋ねた。
「うん、フローラのことが好きになった。でも体だけの関係で心はアメリアにある」
「っ!」
クロフォードは恥を恥とも思わない顔で他人事みたいに言っているが、フローラとは夫婦や恋人といった関係を望まず要するに体だけの関係を続けるみたい。アメリアは返す言葉もなく無念そうに唇を噛み涙が瞳からこぼれ落ちようとしていた。
「最初はアメリアに悪いと思ったけどフローラと関係を持って生まれ変わった気分だ。自分がこんな恋愛するなんて思わなかった。聖女だから何となく近寄りがたい雰囲気があったけど、話してみるとフローラは美しいだけじゃなくて心の温かい女性だと感じたよ」
アメリアは大きなショックを受けて意気消沈したような顔でいると、クロフォードは恥ずかしそうに顔を赤らめて言い始める。誘惑と欲望に負けてフローラと親密な関係を結んでしまったけど、生まれ変わったと幸せそうに瞳を潤ませていた。
王子のクロフォードでさえも国の守護聖女という立場のフローラには気安く話しかけるのもはばかられるほどだった。フローラは独特の雰囲気を醸し出していて最初はフローラに対し冷たい印象を抱いていたというが、話してみると心の奥まで温かい女性でフローラの本当の優しさを知ったと忠誠を誓ったように語る。
「フローラお姉様は普段は感情を表に出さないですけど実際は気配り上手で気さくな人柄ですからね」
「さすがアメリア!姉妹だからよくフローラのことを分かってるな」
フローラを悪く言うとクロフォードに怒られそうで怖くて、アメリアは姉を褒め上げてヨイショしまくるという卑屈な行動をとった。クロフォードは白い歯をのぞかせて笑って幸せそうな空気を体じゅうから出していた。アメリアは言ってしまってから悔しくて情けなくて泣きたい気分になった。
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