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第1話

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「好きな人ができたから悪いけどアメリアとの婚約は破棄させてもらう」
「言われなくても分かってます。相手はフローラお姉様ですよね?」
「そうだ、聖女のフローラと真剣に付き合うことにした」
「わかりました。今までありがとう。どうぞ末永くお幸せに」

公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を一方的に告げられてしまった。だがアメリアは呼び出された時点で全て知っていたので動揺することなく平気な顔で受け入れられた。

その理由は――話は半年ほど前にさかのぼる。

その日は婚約者のクロフォードと幼馴染のハリー伯爵家の令息と三人で学園のグループ課題を作成していた。気兼ねなく話せる仲良し三人組でアメリアの部屋で楽しい時間を過ごしていた。

「やっと終わったー」
「結構かかったな」
「二人ともお疲れ様」

課題を終えてハリーが声を漏らしながらテーブルに両手をついて前のめりになった。クロフォードも課題から解放されて安心して気がゆるんだ様子で言う。アメリアは二人に向かって優しく微笑んでねぎらいの言葉をかけた。

「アメリア今日はありがとう」
「私のほうこそ助かりました。クロフォードに任せてばかりですみません」
「そうだぞアメリア~俺にも感謝しろよ!」
「はぁー、ハリーはほとんど役に立ってないでしょ?」
「まあそうだけどな……」 

クロフォードは爽やかな笑顔を見せてからお礼を言う。学園でも成績優秀で真面目なクロフォードに課題を頼りきりだったのでアメリアは素直な心で感謝をした。すると無邪気でお調子者のところがあるハリーが冗談めかした口調で言った。

アメリアは呆れたようにクロフォードと顔を見合わせてため息をつき首を横にふった。ハリーは勉強嫌いで遊んでばかりで課題はクロフォードとアメリアでまとめ上げた。アメリアに言われてハリーは反省して恥じるように視線を落とした。三人は思わず笑みを漏らして和んだ空気が部屋に漂っていた。

「アメリア」
「なに?」
「美人で聖女のお姉様と妹様はまだお帰りにならないのか?」
「う、うん……」

ハリーが何気なく言うとアメリアは一瞬ドキッと胸が痛んだ。アメリアには姉と妹がいて三人姉妹。国には聖女が二人いた。美しくて才能のある姉と妹は聖女に選ばれて救世主として国の人々から崇められている。

正直に言うとアメリアのほうが聖女としての才能があるのだが、積極的で気が強い肉食系の姉と妹と比べて、消極的で気が弱い草食系のアメリアは姉と妹に遠慮して聖女の座を譲った。

アメリアも姉と妹に負けず劣らず美しい顔で魅力のある女性でした。間違いなく三姉妹の中で一番美しいのはアメリアだが、穏やかで控えめな性格なので目立たないように地味な服装をしてわざとおとなしい感じの化粧をしていた。

その時、部屋のドアをノックする音がした。
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