上 下
14 / 22

第14話 彼は心を見透かされる

しおりを挟む
アイリーンは取り巻きにむかって目くばせをした。取り巻きはアイリーンのわずかな変化をとらえて素早く対応する。持っていた手さげバッグから男物の服を取り出した。

「今日はこれを着なさい」
「な!?こ、こんなものを……君はどれほど特殊な……」

アイリーンは柔らかな声で言いますが命じるような強い響きがあり、ロナウドは心理的な圧迫感が体中を走った。

着替えるように言われても恐ろしくド派手な色と模様の服に、ロナウドは戸惑っている様子で着るのにすぐに踏ん切りがつかないでいる。

「着ないの?」
「べ、別に着ないなんて言ってないだろっ着ればいいんだろ!」
「従順なところは評価しますよ」
「呆れたものだな……これが公爵家のお嬢様の性癖か!」

アイリーンに着用するように問われると、ロナウドは歯をくいしばって悔し涙を流して何度もぶつぶつ文句を言いますが、実は着るつもりでやる気十分で張り切っている。だけど自分の気持ちをアイリーンに気づかれないように、演技して苦しげな表情をして愚痴ぐちをこぼした。

「うふふふふっロナウドは私との子供を望んでいますね?」
「僕はそんな事はほんの少しも思ってないぞ!」
「本当は私を妊娠させてを作りたくて仕方ないのでしょう?」
「き、君の想像で……か、勝手な事を言うな!」

だがアイリーンに耳に息を吹きかけられるとロナウドは取り乱した様子を見せてしまう。さらにアイリーンはロナウドの心を見透かしたような言葉をかけてくる。

その瞬間、図星を突かれてロナウドは全身から冷や汗が噴き出して頭を殴られたような衝撃を受けた。アイリーンに自分の心を読まれてる気がしてロナウドは怖くなる。動揺し精神的に不安定になりながらも真正面のアイリーンに真剣な顔で抗議してむきになって言い返した。

「くっ……これでいいか!」
「ロナウドよく似合っていますよ」

着用したロナウドは恥ずかしそうに頬を赤らめている。全身タイツ姿で顔部分が開いてシースルーという奇抜なセクシー系の衣装。さすがに生地がスケスケ過ぎて恥ずかしそうである。

孔雀くじゃくのように派手な衣装に身を包んだロナウドを見て、アイリーンは満足そうな顔で喜んで嬉しそうな声だった。

「僕は何をされても絶対に負けない。ソフィアを愛してるんだ!」

体は自由に出来ても心まで自由に出来ると思うなよ!ロナウドは愛する恋人の名前を叫び自分は決して屈しないと言いたげな正義の瞳を向けていた。

しかし数分後には、ロナウドはアイリーンの手のひらの上で踊らされているのを不安に感じつつも、彼女に支配される喜びのほうが勝り脳がとろけるほど言い知れぬ心地良さに溺れて天にも昇る気持ちを味わっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています

中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

氷の騎士様は実は太陽の騎士様です。

りつ
恋愛
 イリスの婚約者は幼馴染のラファエルである。彼と結婚するまで遠い修道院の寄宿学校で過ごしていたが、十八歳になり、王都へ戻って来た彼女は彼と結婚できる事実に胸をときめかせていた。しかし両親はラファエル以外の男性にも目を向けるよう言い出し、イリスは戸惑ってしまう。  王女殿下や王太子殿下とも知り合い、ラファエルが「氷の騎士」と呼ばれていることを知ったイリス。離れている間の知らなかったラファエルのことを令嬢たちの口から聞かされるが、イリスは次第に違和感を抱き始めて…… 「小説家になろう」様にも掲載しています。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

処理中です...