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第20話 顔の化粧が落ちて化け物退治

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「おい返事をしろ!」

シモンは部屋に響き渡る声で言った。何度も声をかけてもエレナから反応がなかったので、シモンは徐々に語気を強める。

「お兄様」
「どうした?」
「その人は気を失っているのでは?」

兄の後ろで不安そうな顔で見守っていたイリスが疑問を抱いて声をかける。シモンがくるりと振り返りイリスに愛想のよい笑顔を見せて応じた。

イリスはエレナは気絶しているのでは?と言うとシモンはなるほどそう言われてみればと気がつき、近づいてすぐ側に立ってエレナの顔を覗き込んだ。

「イリスの言う通りだったよ」

シモンはエレナの顔を覗き込んで確認すると、目を開けて口を半ば開けたまま意識がない状態だった。立ったまま失神していたので、まさかそんなことがと信じられぬ気分でした。

「どうされるのですか?」
「気絶しているだけなら起こせばいい」

何気なくイリスは質問すると、シモンはそれなら起こせばいいと当然のように言う。大切な妹の心を傷つけておいて放置してレオナルドに向かうという選択はシモンにはなかった。

シモンは呼吸するように自然な感覚で魔法を念じ始める。数秒後エレナの頭上には一般的な大きさの浴槽に入る量の水が空中に浮いていた。

次の瞬間ザブーン!と水が派手にエレナにこぼれる。

「う、うわあ!げほっ、ごほっ、いやぁぁぁあああああああああっ!」

夢から覚めたエレナは最初は息ができなくて慌てふためき取り乱した。その場に尻もちをついて奇妙な金切り声をあげた。

その様子を緊張して神妙な表情で見ていた十数人のメイドたちは、エレナの姿を見て気持ちが晴れて飛びあがって喜んだり、嬉しくて手を取り合い踊っているメイドなど様々でした。

心から尊敬してお慕いするイリス夫人に対して、失礼なことを言って苦しめてレオナルドと一緒に不快な笑い声を立てていた。それが本当に許せなかったのでざまあ見ろ!という思いで胸がすっとした。

「やっと起きたか」

シモンは凍りつきそうな冷酷な眼差しで、放心したように床に座っているエレナを見下ろす形で眺めて言う。先ほどイリスに向けていた優しさはなく機械的な口調だった。

「え?あ、あの……私は……ど、どどどうすれば助かるのですか?」

エレナは正気を取り戻し顔を上げると自分の前に男が仁王立ちになっている。それが誰なのか間を置かず理解して不安な眼でひどく怯えたように見える。

エレナは泣き顔で寂しげに震える声で返答した。頭から水を浴びたエレナは、メイクというが消えて無くなる。

「それがお前の姿か……化粧が落ちてになったな」

シモンはエレナの顔を見て頭を殴られたような重い衝撃を受けた。エレナは顔のシミを隠したくて必要以上に厚化粧をしていたのもあるだろう。

エレナはシモンが部屋に到着した時には意識はありました。ところが途中で頭がぼんやりして意識が薄れ始めて昏睡こんすい状態になる。

その時は兄と妹が長く熱い濃厚なキスを交わしていた時だった。一部始終を目撃したエレナは脳裏に強烈なインパクトを与えられて、意識が飛んで立ち尽くしてしまった。
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