13 / 26
第13話 美しい顔で能力の高い兄の最大の弱点
しおりを挟む
「――イリスどこにいるんだ?イリスーーーーー!お願いだから返事をしてくれえええ!」
伯爵邸の広い玄関ホールで妹の名を叫んだ兄のシモンは、イリスを目指して猪突猛進にぐるぐる走り回っていた。
現在は薄暗い部屋の中で大声で妹を呼びかけ続けたが、反応はなく途方に暮れるばかりだった。
「イリスが助けを待っているのに……何もできない自分が悔しい……」
兄として情けないと思いながら、シモンは不満そうに愚痴をこぼすと悔しさに耐えるように唇を噛んだ。周囲から呆れられるほどイリスを溺愛して朝から晩まで頭の中にイリスがいる。
「私はなんて無能な男なんだ……」
妹を救うためにやって来たのに、自分自身に言いようのない腹立たしさを感じていた。シモンは今にも泣きそうな顔でうるんだ眼が美しく光って見えた。
「――こんなの絶対おかしい!あの料理人の言う通りに進んでいたのに……」
シモンはぶつぶつ文句を言いながら、これまでの行動を振り返ってみた。今から三十分前には最高の気分でイリスという姫を助けるべく伯爵邸へ勇ましく乗り込んだ。
イリスの危機を知ったのは深夜早朝の時間帯。シモンは世界でも指折りの自然魔法の使い手で、大切な妹に色々な魔法を施して身を守っていた。
「今日のイリスはどうかなぁ?」
シモンは盗聴器と同じような機能の魔法をイリスの体を包むように付与している。それにより日頃からイリスの会話や音声を盗み聞きして陰ながら見守っていました。
プライバシーに関わるので当然だがイリスには秘密で言えない。正直に盗聴魔法をかけたいと言えば、頑なに拒むことは目に見えているのであえて言う必要もありません。
この日もシモンは毎日の楽しい日課になっているイリスの安全確認を行うために、録音された音声を再生した。途中までは問題はないと何度も頷きながら、口元が緩んでニヤけた顔つきで聞いていた。
「――何だと!?」
夫婦の会話を聞いていた時でした。突然シモンは気迫のこもった声を出して平常心を失った顔になる。夫のレオナルドがイリスに家を出て行けと言った。
「あいつは何を言ってるんだ?冗談じゃなく本気か?」
最初シモンはレオナルドがふざけて冗談で言っていると思いましたが、残念なことに間違いなく真面目に言っていると確信した。
「レオナルド許さん!私との約束を忘れたのか?今度イリスを傷つけたら命はないと言って脅しておいたのに。あいつは頭に障害でもあるのか?とにかく頭が悪いらしいな……」
次々と耳を疑うような言葉を発するレオナルドに、過去の一連の出来事が頭に浮かんでレオナルドの頭は大丈夫なのか?と正気とは思えない気がした。
シモンは急いで支度を整えるとイリスが暮らす伯爵領へ向かった。
伯爵邸の広い玄関ホールで妹の名を叫んだ兄のシモンは、イリスを目指して猪突猛進にぐるぐる走り回っていた。
現在は薄暗い部屋の中で大声で妹を呼びかけ続けたが、反応はなく途方に暮れるばかりだった。
「イリスが助けを待っているのに……何もできない自分が悔しい……」
兄として情けないと思いながら、シモンは不満そうに愚痴をこぼすと悔しさに耐えるように唇を噛んだ。周囲から呆れられるほどイリスを溺愛して朝から晩まで頭の中にイリスがいる。
「私はなんて無能な男なんだ……」
妹を救うためにやって来たのに、自分自身に言いようのない腹立たしさを感じていた。シモンは今にも泣きそうな顔でうるんだ眼が美しく光って見えた。
「――こんなの絶対おかしい!あの料理人の言う通りに進んでいたのに……」
シモンはぶつぶつ文句を言いながら、これまでの行動を振り返ってみた。今から三十分前には最高の気分でイリスという姫を助けるべく伯爵邸へ勇ましく乗り込んだ。
イリスの危機を知ったのは深夜早朝の時間帯。シモンは世界でも指折りの自然魔法の使い手で、大切な妹に色々な魔法を施して身を守っていた。
「今日のイリスはどうかなぁ?」
シモンは盗聴器と同じような機能の魔法をイリスの体を包むように付与している。それにより日頃からイリスの会話や音声を盗み聞きして陰ながら見守っていました。
プライバシーに関わるので当然だがイリスには秘密で言えない。正直に盗聴魔法をかけたいと言えば、頑なに拒むことは目に見えているのであえて言う必要もありません。
この日もシモンは毎日の楽しい日課になっているイリスの安全確認を行うために、録音された音声を再生した。途中までは問題はないと何度も頷きながら、口元が緩んでニヤけた顔つきで聞いていた。
「――何だと!?」
夫婦の会話を聞いていた時でした。突然シモンは気迫のこもった声を出して平常心を失った顔になる。夫のレオナルドがイリスに家を出て行けと言った。
「あいつは何を言ってるんだ?冗談じゃなく本気か?」
最初シモンはレオナルドがふざけて冗談で言っていると思いましたが、残念なことに間違いなく真面目に言っていると確信した。
「レオナルド許さん!私との約束を忘れたのか?今度イリスを傷つけたら命はないと言って脅しておいたのに。あいつは頭に障害でもあるのか?とにかく頭が悪いらしいな……」
次々と耳を疑うような言葉を発するレオナルドに、過去の一連の出来事が頭に浮かんでレオナルドの頭は大丈夫なのか?と正気とは思えない気がした。
シモンは急いで支度を整えるとイリスが暮らす伯爵領へ向かった。
127
お気に入りに追加
1,261
あなたにおすすめの小説
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました
紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。
ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。
困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。
頼れる人は婚約者しかいない。
しかし婚約者は意外な提案をしてきた。
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される
つくも
恋愛
病弱な令嬢アリスは伯爵家の子息カルロスと婚約していた。
しかし、アリスが病弱な事を理由ににカルロスに婚約破棄され、義妹アリシアに寝取られてしまう。
途方に暮れていたアリスを救ったのは幼馴染である公爵様だった。二人は婚約する事に。
一方その頃、カルロスは義妹アリシアの我儘っぷりに辟易するようになっていた。
頭を抱えるカルロスはアリスの方がマシだったと嘆き、復縁を迫るが……。
これは病弱な令嬢アリスが幼馴染の公爵様と婚約し、幸せになるお話です。
お金のために氷の貴公子と婚約したけど、彼の幼なじみがマウントとってきます
鍋
恋愛
キャロライナはウシュハル伯爵家の長女。
お人好しな両親は領地管理を任せていた家令にお金を持ち逃げされ、うまい投資話に乗って伯爵家は莫大な損失を出した。
お金に困っているときにその縁談は舞い込んできた。
ローザンナ侯爵家の長男と結婚すれば損失の補填をしてくれるの言うのだ。もちろん、一も二もなくその縁談に飛び付いた。
相手は夜会で見かけたこともある、女性のように線が細いけれど、年頃の貴族令息の中では断トツで見目麗しいアルフォンソ様。
けれど、アルフォンソ様は社交界では氷の貴公子と呼ばれているぐらい無愛想で有名。
おまけに、私とアルフォンソ様の婚約が気に入らないのか、幼馴染のマウントトール伯爵令嬢が何だか上から目線で私に話し掛けてくる。
この婚約どうなる?
※ゆるゆる設定
※感想欄ネタバレ配慮ないのでご注意ください
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる