8 / 26
第8話 妻の兄に夫は恐怖と不安で緊張
しおりを挟む
「――何事だ!?」
レオナルドはいったい何ごとだと荒っぽく言う。大声で叫んだ男の声が耳に流れ込んできて、何か異変でも起こったのではないかと思ったのだ。
「この声はシモンお兄様……?」
イリスはつぶやくように声をもらした。遠くからかすかに聞こえてきた声は、どことなく妙に聞き覚えのある声だと感じる。
「イリスを溺愛している面倒な兄が来たのか?」
レオナルドはびっくりして振り返ってイリスを見た。小声でささやくように言ったイリスの声でしたが、妙によく聞こえて恐怖心から過剰に反応した。眼からは不穏な気配が感じられ愚痴をこぼしているようであった。
「レオナルドどうしたの?」
顔は困惑から慌て気味になっているレオナルドに、エレナは不思議がって聞いた。
「どうやらイリスの兄が来たみたいだ」
「公爵閣下の!?」
「そうだ。今はシモンが継承して公爵家の当主をしている」
妻の兄が来た。レオナルドは不安な気持ちを正直に話すと、エレナは衝撃を受けて驚いた顔に変わる。イリスが公爵家の生まれである事は当然知っていた。現在は公爵家の家督はイリスの兄のシモンが継いでいる。
「どんな人なの?」
「イリスの事を信じられないほど大切にしていて、妹は本物の天使のようだと可愛がってるよ」
「本当なの?」
ふっと表情を引き締めてエレナは真面目な気配で尋ねた。レオナルドは真剣に話した方がいいだろうと思いながら口に出す。
最初にシモンに会ったときから気になった。何かとイリスのことを意識して心配そうな視線を向けイリスの顔を覗き込んでいた。
兄はいつもこんな感じなのでどうぞお構いなくとイリスは言いながら、兄が気にかけてくれること自体は嬉しいらしく照れた表情を浮かべ明るい笑顔を見せた。
「昔の話だけど結婚する前イリスに少し丁寧さに欠ける扱いした時にすごい剣幕で怒られたんだ。あの時は怖かったな……」
レオナルドは遠い過去の出来事がよみがえってくるのだった。まだ結婚する前のことだが公爵家に食事に招かれた。初対面の挨拶を交わして明るい雰囲気に包まれてみんなが温和な笑顔を浮かべていた。
その時にあまり深く考えずにイリスに冷たい素振りをしてしまい、シモンに大目玉をくらったことが脳裏にちらついた。
ささいなことが原因となりシモンに怒鳴られながら、レオナルドはひたすら低姿勢に徹して謝り続けた。私は気にしてないのでお兄様は冷静になってくださいと、イリスが間に入りなだめ役にまわって懸命に説得しシモンの怒りを思いとどまらせた。
レオナルドはいったい何ごとだと荒っぽく言う。大声で叫んだ男の声が耳に流れ込んできて、何か異変でも起こったのではないかと思ったのだ。
「この声はシモンお兄様……?」
イリスはつぶやくように声をもらした。遠くからかすかに聞こえてきた声は、どことなく妙に聞き覚えのある声だと感じる。
「イリスを溺愛している面倒な兄が来たのか?」
レオナルドはびっくりして振り返ってイリスを見た。小声でささやくように言ったイリスの声でしたが、妙によく聞こえて恐怖心から過剰に反応した。眼からは不穏な気配が感じられ愚痴をこぼしているようであった。
「レオナルドどうしたの?」
顔は困惑から慌て気味になっているレオナルドに、エレナは不思議がって聞いた。
「どうやらイリスの兄が来たみたいだ」
「公爵閣下の!?」
「そうだ。今はシモンが継承して公爵家の当主をしている」
妻の兄が来た。レオナルドは不安な気持ちを正直に話すと、エレナは衝撃を受けて驚いた顔に変わる。イリスが公爵家の生まれである事は当然知っていた。現在は公爵家の家督はイリスの兄のシモンが継いでいる。
「どんな人なの?」
「イリスの事を信じられないほど大切にしていて、妹は本物の天使のようだと可愛がってるよ」
「本当なの?」
ふっと表情を引き締めてエレナは真面目な気配で尋ねた。レオナルドは真剣に話した方がいいだろうと思いながら口に出す。
最初にシモンに会ったときから気になった。何かとイリスのことを意識して心配そうな視線を向けイリスの顔を覗き込んでいた。
兄はいつもこんな感じなのでどうぞお構いなくとイリスは言いながら、兄が気にかけてくれること自体は嬉しいらしく照れた表情を浮かべ明るい笑顔を見せた。
「昔の話だけど結婚する前イリスに少し丁寧さに欠ける扱いした時にすごい剣幕で怒られたんだ。あの時は怖かったな……」
レオナルドは遠い過去の出来事がよみがえってくるのだった。まだ結婚する前のことだが公爵家に食事に招かれた。初対面の挨拶を交わして明るい雰囲気に包まれてみんなが温和な笑顔を浮かべていた。
その時にあまり深く考えずにイリスに冷たい素振りをしてしまい、シモンに大目玉をくらったことが脳裏にちらついた。
ささいなことが原因となりシモンに怒鳴られながら、レオナルドはひたすら低姿勢に徹して謝り続けた。私は気にしてないのでお兄様は冷静になってくださいと、イリスが間に入りなだめ役にまわって懸命に説得しシモンの怒りを思いとどまらせた。
128
お気に入りに追加
1,267
あなたにおすすめの小説
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
余命わずかな私は家族にとって邪魔なので死を選びますが、どうか気にしないでくださいね?
日々埋没。
恋愛
昔から病弱だった侯爵令嬢のカミラは、そのせいで婚約者からは婚約破棄をされ、世継ぎどころか貴族の長女として何の義務も果たせない自分は役立たずだと思い悩んでいた。
しかし寝たきり生活を送るカミラが出来ることといえば、家の恥である彼女を疎んでいるであろう家族のために自らの死を願うことだった。
そんなある日願いが通じたのか、突然の熱病で静かに息を引き取ったカミラ。
彼女の意識が途切れる最後の瞬間、これで残された家族は皆喜んでくれるだろう……と思いきや、ある男性のおかげでカミラに新たな人生が始まり――!?
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる