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第12話

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次の日、片腕として働くレオンが真面目な顔でハリー殿下に告げました。

「奥様の不倫相手はジョージという伯爵家の次男で独身です」
「そうか…」

ハリー殿下はレオンが動いて段取りをしてくれた調査報告に寂しそうな顔で返事をする。オリビア夫人が不倫していると分かっていましたが面と向かって明確に言われると心が痛む。

レオンの話によると二人は週に3回もの逢い引きを繰り返していた。だから夫である自分が誘ってもいつも拒否して抱かせてくれなかったと思うとハリー殿下は嫉妬をして苛立つ。

帰宅して心に固い決意をしているハリー殿下はオリビア夫人に別れ話を切り出す。

「オリビアもう言わなくても分かってるよな?」
「はい…」

昨日は気違いのように騒いでヒステリックに狂いだしたような断末魔の叫び声を上げていたのに今日は魂を抜かれたように大人しい控えめな態度。

そんな妻の姿にハリー殿下は動揺しますが、離婚の覚悟を決めているので同情を誘われることはなくいくら誠心誠意謝罪されても割れたガラスのように元の仲の良い夫婦関係には戻れない。

最初は離婚を拒否しましたがハリー殿下の一歩も引かない態度に最終的にはオリビア夫人も諦めて揉めることなく円満に二人の別れが決まる。

その話し合いの場で一言も不倫相手のジョージのことは言わなかった。それどころかハリー殿下は二人を制裁することもなく最後まで妻に優しい微笑みを向けていた。

離婚から一ヶ月後にハリー殿下は人生の幕を閉じる。でも自ら命を絶ったわけではありません。

実は、ハリー殿下は医者からもう長くないと教えられていたのです。なのでハリー殿下は身を引いてオリビア夫人と別れました。

ありのままに言うと不倫をしても心の底では妻のことは愛していた。自分の寿命は短く風前の灯のような状態なので、不倫からスタートした許されぬ恋でも愛し合っている二人に幸せになってもらいたかった。

ハリー殿下はそのことを黙ってこの世を去りましたが、ハリー殿下のことを誰よりも深く気づかい親愛の情を抱いていた側近のレオンは、あまりにも気の毒に思い我慢できずにオリビア夫人に手紙を送り全てを伝える。

手紙を読んだオリビア夫人は罪の意識にさいなまれ生涯苦しむことになります。

ジョージとも呆気なく別れて不倫していたことが世間に知れ渡ると実家からも断絶を宣告され孤独になり、娘のカミーユはハリー殿下の両親の養子になる。

その後、ジョージは別の貴族の令嬢と結婚しますが、因果応報なのか実家が不祥事を起こして、その結果お家取りつぶしになりジョージは深刻な病気を発症して悲惨な生活を余儀なくされるのでした。

**********

新作『妹の婚約者が子供の時に好きだった人で誘惑すると、彼は妹に婚約破棄を告げた』の連載を始めました。
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