10 / 12
第10話
しおりを挟む
「それじゃあジョージのことを教えて」
「うん」
娘のカミーユの心を落ち着かせてから改めてジョージのことを聞く。心が透き通った声で嬉しそうな顔をして素直に返事をする。
「ジョージとは何して遊んでるの?」
「色々お話する」
「この前は3人で遊んでいると途中でママがジョージとどこかに行くって教えてくれたよね?」
「うん」
「一緒について行ったことはあるの?」
「ないけど…」
「ないけど?」
「戻って来たらママの髪が濡れてた」
「その時はママとジョージはどうしてたのか聞いたの?」
「ママに聞いたら汗かいたからジョージと洗いっこしたって嬉しそうな顔で笑いながら言ったの」
子供の予告なしのありのままの告白に気持ちの整理がつかないほど感情が混乱する。カミーユの本心にはハリー殿下に人の心を忘れさせるくらいのショックを与えた。
妻とジョージの関係はとっくに分かっていたことだが実際に子供から打ち明けられると耐え難い苦痛に生きていられないほどの喪失感で身にこたえる。
「それじゃあ頼んだぞ」
「殿下お任せください」
恥を承知で信用に値する腹心のレオンにオリビア夫人のことを包み隠さず語るとレオンは自分のことのように涙を流して殿下お辛かったでしょうと親身な対応に胸を打つ。
レオンが周到な準備をして妻の調査をしてくれることになり氷が溶けるようにハリー殿下の心も緊張がとけて気持ちが少しだけ軽やかになった。
「あなたに話があるの」
本当に久しぶりにオリビア夫人から話しかけてきた。妻の調査が完了する頃に手の平を返したように態度が変わり何か勘付かれてのかと脳裏をかすめる。
妻の調査をしている世にも惨めな夫にまだ心に苦痛を与えるのかという思いで悲しみのどん底にいるハリー殿下は声のしたほうに寂しげな目を向けた。
「1ヶ月ぶりくらいに口を開いてなんだ話って?」
「あなたは勘違いしてると思うからジョージとは何でもないって話がしたい。あなたの思い込みを解きたいの」
強い絆で結ばれた夫婦はひと月ぶりに会話をした。妙に懐かしさを感じる妻の声は弱々しくて体も別人のように激ヤセしていた。
だが今ごろになってジョージとは男女の関係はないからハリー殿下の誤解を晴らしたいと涼しい顔で呆れたことを抜かす。
**********
新作『突然両親からお見合いして結婚しろと言われた令嬢は全力で拒否して、学園でイケメンに囲まれる青春生活を送る成功者に』の連載を始めました。
「うん」
娘のカミーユの心を落ち着かせてから改めてジョージのことを聞く。心が透き通った声で嬉しそうな顔をして素直に返事をする。
「ジョージとは何して遊んでるの?」
「色々お話する」
「この前は3人で遊んでいると途中でママがジョージとどこかに行くって教えてくれたよね?」
「うん」
「一緒について行ったことはあるの?」
「ないけど…」
「ないけど?」
「戻って来たらママの髪が濡れてた」
「その時はママとジョージはどうしてたのか聞いたの?」
「ママに聞いたら汗かいたからジョージと洗いっこしたって嬉しそうな顔で笑いながら言ったの」
子供の予告なしのありのままの告白に気持ちの整理がつかないほど感情が混乱する。カミーユの本心にはハリー殿下に人の心を忘れさせるくらいのショックを与えた。
妻とジョージの関係はとっくに分かっていたことだが実際に子供から打ち明けられると耐え難い苦痛に生きていられないほどの喪失感で身にこたえる。
「それじゃあ頼んだぞ」
「殿下お任せください」
恥を承知で信用に値する腹心のレオンにオリビア夫人のことを包み隠さず語るとレオンは自分のことのように涙を流して殿下お辛かったでしょうと親身な対応に胸を打つ。
レオンが周到な準備をして妻の調査をしてくれることになり氷が溶けるようにハリー殿下の心も緊張がとけて気持ちが少しだけ軽やかになった。
「あなたに話があるの」
本当に久しぶりにオリビア夫人から話しかけてきた。妻の調査が完了する頃に手の平を返したように態度が変わり何か勘付かれてのかと脳裏をかすめる。
妻の調査をしている世にも惨めな夫にまだ心に苦痛を与えるのかという思いで悲しみのどん底にいるハリー殿下は声のしたほうに寂しげな目を向けた。
「1ヶ月ぶりくらいに口を開いてなんだ話って?」
「あなたは勘違いしてると思うからジョージとは何でもないって話がしたい。あなたの思い込みを解きたいの」
強い絆で結ばれた夫婦はひと月ぶりに会話をした。妙に懐かしさを感じる妻の声は弱々しくて体も別人のように激ヤセしていた。
だが今ごろになってジョージとは男女の関係はないからハリー殿下の誤解を晴らしたいと涼しい顔で呆れたことを抜かす。
**********
新作『突然両親からお見合いして結婚しろと言われた令嬢は全力で拒否して、学園でイケメンに囲まれる青春生活を送る成功者に』の連載を始めました。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
悪役令嬢になりそこねた令嬢
ぽよよん
恋愛
レスカの大好きな婚約者は2歳年上の宰相の息子だ。婚約者のマクロンを恋い慕うレスカは、マクロンとずっと一緒にいたかった。
マクロンが幼馴染の第一王子とその婚約者とともに王宮で過ごしていれば側にいたいと思う。
それは我儘でしょうか?
**************
2021.2.25
ショート→短編に変更しました。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
大正政略恋物語
遠野まさみ
恋愛
「私は君に、愛など与えない」
大正時代。
楓は両親と死に別れ、叔父の堀下子爵家に引き取られた。
しかし家族としては受け入れてもらえず、下働きの日々。
とある日、楓は従姉妹の代わりに、とある資産家のもとへ嫁ぐことになる。
しかし、婚家で待っていたのは、楓を拒否する、夫・健斗の言葉で・・・。
これは、不遇だった少女が、黒の国・日本で異端の身の青年の心をほぐし、愛されていくまでのお話。
たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。
弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。
浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。
婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。
そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった――
※物語の後半は視点変更が多いです。
※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。
※短めのお話です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる