上 下
48 / 65

第48話

しおりを挟む
かつての婚約者である失神していたフレッドが目を覚ましたらしく、セリーヌのところにやって来た。これでやっと安心して移動できる。この場を離れることにセリーヌは寂しさはありませんでした。国は崩壊してしまって生まれ育った土地をなつかしむ気持ちはなかったのだ。

移動魔法を発動しようとしていた時だった。フレッドが意外な言葉を投げかけてきてセリーヌは絶句するような気分になる。

「フレッドが行くなら俺も一緒にいいかな?」

幼馴染のアランでした。フレッドが行くなら自分も同行したいと言ってきた。彼らは何を考えているのか?セリーヌは顔に困惑に似た表情が浮かべた。

「あの、どのようなで私についてくるのですか?」

セリーヌは疑問が頭をかけめぐる。彼らがどうして自分に同行したいのか見当がつかなかった。この後のセリーヌの予定は、所在がつかめない家族の行方を捜しに避難しているであろう領地に行く。

家族の無事が確認できれば現在幸せに暮らしている遠く離れた異国の地に戻り、セリーヌが経営する精霊のレストランの手伝いをしたいと思っていました。

とりわけセリーヌがいなくても頼りになり信頼できる従業員たちが店を切り盛りしているので、経営者の彼女が仕事を行う必要はないのだが趣味みたいなものでウエイトレスをしていた。

「セリーヌの事が心配だからに決まってるだろう?」
「フレッドと同じ気持ちだ。セリーヌもっと俺たちを頼ってくれ!」

フレッドは思いやる気持ちを見せた。続いてアランも熱のこもった言い方でセリーヌを心配する。彼らは本気で心配そうな顔をして胸を痛めている。自分たちがセリーヌのことを守らなければならないという気持ちだった。

「私は大丈夫ですよ。それより国の立て直しに集中してください」

セリーヌは竜に様々な能力を与えられているので、どんな魔法でも自在に使いこなすことができる。二人が考えているよりも彼女は遥かに強い。

フレッドとアランの助けは必要ないし、かえってになると思っていた。でも彼らを傷つけないようにはっきり言いませんでした。

「水臭いじゃないか。私たちは元婚約者じゃないか?」
「セリーヌそんな寂しいことは言うなよ」

崩壊した国を元に戻すのに力を入れてほしいと返したセリーヌに、二人は遠慮することなんかないと顔に深い悲しみが満ち溢れる。セリーヌが他人行儀な受け答えをしていると言い切ない感情を覚え、両目に涙を浮かべ積極的に協力を申し出てくれた。

正直にいってセリーヌはありがた迷惑な気分で困ったように愛想笑いをしていた。

*****
新作「夫と愛人が共謀して私を陥れようと不倫をでっち上げて離婚と慰謝料を要求してきた。ひどい義家族と戦いの記録。」を投稿しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜

水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。 メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。 最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。 それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。 しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。 そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。 メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。 そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。 次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。 男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。 そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。 「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動

しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。 国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。 「あなた、婚約者がいたの?」 「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」 「最っ低!」

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

わ、私がやりました

mios
恋愛
悪役令嬢の断罪中申し訳ありません。 それ、やったの私です。 聖女様を池に落としたり、階段から突き落としたフリをしたり、虐められたフリをした聖女様の演出は、全て私がやりました。

処理中です...