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第13話

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「わかった」
「本当!嬉しいよ!」
「待って!私一人だけで行くのは嫌よ」
「僕と一緒なら問題ないってこと?」
「それならいいよ」
「じゃあ今度二人で行こうね。約束だよ」
「うん」

彼のしつこい説得に気の進まない様子で頷く。その瞬間アルスの顔が急速に希望に満ちて暗い胸の中に明かりがともりました。

だけど間髪入れずに一人では行きたくないと拒否をするウェンディ。幼馴染との息苦しい張り詰めた部屋の中でいることに気持ちが耐えられないのが理由です。

それなら二人でお見舞いに行こうとやる気に満ちた顔で活発な声で言う。彼も一緒について来てくれることが分かり少しだけ心が落ち着く。

返事をしてアルスは彼女のウェンディと幼馴染のエリーゼが、親しみを込めた表情で楽しそうにお喋りしている姿を想像して笑顔がこぼれ期待を膨らませる。ウェンディは不本意ながら寂しそうな声で返事をしました。


「エリーゼと会うの楽しみだな。ウェンディもそう思うだろ?」
「はい……」

あれから数日経ち今は馬車の中。ウェンディとアルスは二人で彼の幼馴染のエリーゼの家に向かっている最中。

久しぶりの再会に彼の顔は輝いて幸せそうですが、反対にウェンディは暗く沈んだ表情をしている。いくら彼が同行してくれていても最後まで不安が解消されることはありませんでした。

「どうしたんだ?元気がないじゃないか?」
「あなたの幼馴染とまともに会話をできる気がしないので……」
「ウェンディ!会う前からそんな後ろ向きな発言をするのはよくないぞ」
「だってそれが私の心からの本音ですよ」

恋人の弱々しい声に憂わしげな表情でアルスが尋ねてきます。そんなの分かり切っている事なのにとウェンディは眉をしかめて憂鬱そうな顔で答えます。

彼はネガティブなことを言うんじゃない!とウザいほど熱を入れて説得してくる。あなたが泣きながら懸命に頼み込むから仕方なくお見舞いに行くのですよ?いう感情が心中に渦巻いている。

「僕も二人が心地良く喋れるように助け舟を出すから何も心配することはない!」
「なるべく頑張ります……」

エリーゼと気持ち良く会話できるように応援すると言いますが、元から話したくもない相手なので彼女が不平不満を並べ立てるのも、常識的な感覚をしていたら理解できるでしょうけど彼の頭の中は普通じゃないようです。

そもそも正常な人だったら恋人が断っているのに幼馴染のお見舞いに行こうとは言わないよね?とウェンディは自問自答を繰り返す。

彼が捨て犬のような瞳ですがりついてきたから、同情の念がわき起こり甘い顔を見せてしまって一度は許しましたが、やっぱり慈悲を与えずに突き放したほうが良かったのかと後ろ髪を引かれる思いでした。
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