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第16話

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「あの男は自己弁護が腹の底に出来上がっているのでしょう。この状態では解決しないと思います」
「そのようね。結局ミカエルは自分は悪くないと言い訳してるみたい」

要はミカエルは理不尽にクロエに暴力を振るったことも反省しつつ、自分のやったことは間違いじゃないと思ってるのである。

送られてきた手紙も本来なら反省してるので謝罪をしたいが、クロエに顔向けできないので両親に口添えを頼んで、なんとか許して欲しいという感じだろう。

「マリアンヌ相談に乗ってくれてありがとう」

クロエはお礼を言ったらマリアンヌは微笑んだ顔で黙って頷いた。ミカエルは年齢を重ねていても精神年齢は低く、駄々をこねている子供と同じで、クロエは本当の意味でミカエルに反省の気持ちは無いと印象を受ける。

今回のことでミカエルは自分だけが悪者になったのが耐えられなかった。今まで妻思いの穏やかな良き夫として振る舞っており、その積み上げてきたものが一気に崩れる感覚を味わったのです。


それから数日経って、別居してから二十八日。あちら側の両親から手紙が届いた。余裕を無くしたミカエルがどうしても話し合いをしたいと、顔を真っ赤にしながら叫んでいるという。

ミカエルが悔い改める時間は一ヶ月の期限なので、クロエは返事を書いて家に呼んだ。

「クロエごめん……」
「何が悪いのか分かってるの?」

両親に連れられてやってきた。久しぶりにミカエルの顔を見たけど、左頬に青あざができ、両目とも大きく腫れ上がっている。そしてクロエに対して何度も謝罪し涙を浮かべていた。

クロエは何が謝りたいのか?と差し迫った雰囲気で質問してみた。すると恐る恐る顔を上げたミカエルは頷いて語った。

「ローラが悪いのに僕がクロエに逆切れして手をあげてしまった。最低のことをした。クロエの気持ちを考えずに、ローラを強引に住まわせたことも反省している」

声が上ずり涙声になって答えるミカエルに、少しは分かってくれたかと、クロエはようやく安堵の胸をなで下ろした。だが一連の出来事で受けた衝撃は大きく、以前と元通りの感覚はない。

なのでこれから時間をかけてゆっくりミカエルの姿を見ていかないと分からないと、クロエは心配ごとを抱えたような暗い顔をして思う。

「クロエ様、息子はいかがでしょうか?少しはマシな人間にさせましたが……」

しばらく黙ってじっとミカエルの様子を見ていた父が重い口を開いた。両親は息子に対してかなり厳しい指導をしてきた。例えばミカエルが苦手意識を持っている蛇でとり囲んだ。

「お父様、お母様蛇だけはお許しください。僕が小さい頃蛇に噛まれてそれ以来、蛇を見ただけで震えが止まらなくなることはご存じでしょう?」
「クロエ様もローラがいた時はこのような気持ちだったのだ」
「ミカエルお黙りなさい!これはあなたを心から反省させる試練で避けては通れないことよ」
「ローラと蛇は違いますよ!」
「生意気な口答えをするようでは反省してない証拠だな」

ミカエルは蛇には深刻なトラウマ体験があり、目にしただけで不安で背筋が縛られたみたいになる。両親は執拗にミカエルの嫌なことをして説教していたようです。
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