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第44話 彼の嫉妬に彼女は呆れて美しい顔が歪む

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「ヴィオラ!僕とミカエルどっちがカッコいいか答えてくれ!」
「え……?」

真剣な顔で問いただすレオナルド令息にヴィオラ令嬢はどうしていいか迷いほとほと困り果てる。

ミカエルのほうが素敵と言ったら彼が傷つくし逆でもそう。レオナルド令息は確かに美青年だけどミカエルも容姿端麗なのだから決められない。

「レオナルドそのくらいにしとけ。大事な彼女が困っているだろ?」
「今はできるだけ早く森を脱出するべきだ」

ヴィオラ令嬢に助け舟を出したのは色男のローレンとマティオだった。

「そうだな。すまない…」

申し訳なさそうな顔で謝るレオナルド令息に美しい顔は肩の荷が下りたような明るい表情になる。

「森から出たら聞くからな。ヴィオラはその間に考えてほしい」

彼の言葉にヴィオラ令嬢はあっという間に不安で落ち着かない気分になりくたびれた顔で肩を落とす。

ここまで嫉妬深い性格だったのかと相当に呆れ気味のヴィオラ令嬢でした。


その時ガサッと音がする。

ヴィオラ令嬢を連れ去り森の小屋にいた二人のむさ苦しい男は、少し離れた場所から隠れて様子をうかがっていた。

「俺達が出て行ける状況じゃない。ここは引き返そう」
「そうだな。あいつら騎士であの人数だ」
「もう女を取り戻せないな…」
「この仕事はなかったことにするしかないか。いい報酬だったんだがな…」

女神のようなまばゆい令嬢の周りには既に複数の男性がいる。これでは自分達はどうすることもできない。

出て行ったところであっけなく返り討ちにあうのが火を見るよりも明らかだ。

そればかりか貴族の令嬢を誘拐した罪で牢屋に入れられて短期間のうちに処罰されるだろう。

男達は震えながら逃げることを頭の中で確認するように考えてゆっくりつぶやく。

「君達なにしてるの?逃げようとしても無駄だよ。逃がさないからね」

ミカエルだった。自分達の後ろで聞こえる美声に驚いて魚のように口を間抜けに開けたまま動けなくなり思わず心臓が一瞬止まる。

視点の定まらない瞳で自分達はもう助からないとお先真っ暗な気持ちだった。


「お前達ヴィオラに変なことをしてないだろうな!もしそうなら許さないぞ!ぶん殴ってやる!」

縄で縛った男達に向かってレオナルド令息が烈火の如く怒りを爆発させる。

「指一本触れておりません」
「俺もです」

ここでおかしなことを言えば命が尽きてしまう。哀れな誘拐犯は心が大波のように荒れてがむしゃらに否定していた。

**********

新作『妹の婚約者が子供の時に好きだった人で誘惑すると、彼は妹に婚約破棄を告げた』の連載を始めました。
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