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第32話 親友が倒れて意識を失っていた〜見つけた親友は叫ぶ

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美女二人が居なくなり数分間他愛もない話をしていると、ローレンが納得がいかないといった不審な顔で言う。

「いくらなんでもレオナルド遅すぎないか?」
「確かにそうだな…でも恋人で婚約者のヴィオラ様のプレゼント選んでるんだろ?」

レオナルド令息の帰りが遅すぎると言うローレンの言葉に、マティオも遅いとは感じていましたが慎重に時間をかけて恋人へのプレゼントを選んでいるのでは?と返す。

逆ナンされた二人組の美女とは10分くらい話したと双方ともに思っていますが、実際にはその倍以上の時間話していました。

何しろ美女の華やかさにおしゃべりの上手さで会話が盛り上がり、二人は楽しくて気持ちが高揚し言葉が体の中から泡のように浮き上がってくるほど心地の良いひと時だったのです。

そう考えればこの美女達は暗殺者側に頼まれた仕事を非の打ち所がないほどに確実にこなしたと言える。

だが即座にハッとした顔で何かに気づくマティオ。気心の知れた親しい仲だけにレオナルド令息の性格をよく知っている。

「あいつは約束を必ず守る!」

直ぐに戻ると告げて店に向かったレオナルド令息の顔を思い出した。

それは無意識のうちに軽い気持ちで口にした言葉だったが、そうだとしても親友は約束を踏みにじるようなことはしない。

マティオの頭の中にも疑問が雲のように湧いて、心の中をかきむしられるような激しい不安と後悔が襲う。

「あ!」

マティオがそう言った時には二人は店に向かって全力疾走していた。すれ違って驚く人の顔など気にすることなく手を振り回して夢中で駆けている。

レオナルド令息の身に何かが起こったと直感した二人は自分達の嫌な予想が外れることを胸の中で祈りながら店の前に到着した。

「ローレン気を抜くなよ」
「お前もな相棒」

ただならぬ雰囲気を感じた二人は呼びかけてお互いに警戒を促す。

鍵はかけてなくローレンが店のドアを開いた。時間は夕方でまだ外は明るいが、店の中には明かりがなく幽霊屋敷のように暗い。

人の気配も全くと言っていいほど感じなく、ひっそりと静まり返る店内。

今日の昼頃、巡回の合い間にレオナルド令息と一緒に店に訪れているマティオが記憶の中にある店主の老婆を思い出す。

「婆さんいないのか!」

静かな空気を破ってマティオが怒鳴るような掛け声を出した。

しかし何も反応はない。帰ったのか?でも鍵はかかってなかった。ならなぜ誰も返事をしない?マティオは不審な顔で眉を寄せる。

ジュエリー店だけに狭い店内だが、各種様々な宝石やアクセサリーなどがありどれもそれなりに高価に見える。

それなのに鍵もかけていなくて店員も誰一人いないと言うのは、泥棒に入ってくださいと言ってるようなもので不用心すぎる。

ここが裏通りで目立たないところに店を構えているにしても、その間に悪意のある人間が入って来たらどうなるのか火を見るよりも明らかだ。

既にこの店が確実におかしいのは二人は理解している。

何故ならだいたい40分ほど前に店に向かった親友のレオナルド令息の姿がどこにも見当たらない。煙のように消失しているのです。

その時点で確実に親友の身に何かよからぬことが起こったのは疑いようがない。

すれ違いで反対方向に通りすぎた?それはありえない。二人いた場所からここまで走ってきて1分もかからずに到着した。

二人は本気の駆け足で進んできたがレオナルド令息が小走りで向かったとしてもその違いはほんの僅かな短い時間の違いしかない。

「なんだあれ?」
「どうした?」
「あそこに何かあるからちょっと見てくる」
「気をつけろよ。後ろは俺にまかせろ」

その時ローレンが暗い店内で床に倒れている人らしき姿を発見した。マティオもその声に反応してローレンはそれを確認してくると言う。

近づいて確かめるとハッとして身震いした。そして首を垂れてその場から身動きが出来なくなる。

少し前まで元気だった親友がうつ伏せで倒れていた。

「レオナルドーーーーー!」

ローレンは店の外まで遠くに響くような大きな声を出して親友の名前をこれでもかと言うほど叫んだ。
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