28 / 44
第28話 婚約者の恋人へプレゼントは彼女が欲しい物をあげる
しおりを挟む
予告もなしにレオナルド令息が何かに気づいて足を止めると一緒に歩いていた友人のローレンが言う。
「どうしたんだ?」
「プレゼントを買うのを思い出した」
「プレゼント?」
レオナルド令息はプレゼントを買うと答えるが不思議でならないといった顔のローレン。
「昼間にレオナルドと巡回していた時にいい店を見つけたんだ」
もう一人の友人のマティオの記憶が呼び覚まされる。
今日の日中の時間帯は、レオナルド令息は同僚のマティオと二人で事件や犯罪などが起こっていないか街の見回りをしていた。
街で暮らす人々が穏やかな毎日で過ごせるように治安を守る。それも騎士としておろそかに出来ない大事な職務の一つ。
その巡回の合間に何げなくジュエリー店に入ってみた。様々な宝石やブレスレットやネックレスなどが並べられている。
それを見ていたら愛してやまない絶世の美女のヴィオラ令嬢に、何か買ってプレゼントしようと考えるのは恋人としては極自然な思いだった。
「なるほど!婚約者への贈り物ってわけか」
ここでローレンも納得した様子で言う。
「レオナルドあの店だろ?確か婆さんが店主だったな」
「そう、その店で買い物してくるから少し待っててくれ」
「一緒に行くけど?」
「すぐそこだからいいよ。昼に買う物も決めてあるし」
見たところ店主は老婆だけの一人でやっていて、それほど大きな店ではなく入口に入ったら店全体が見渡せるくらいの広さでこじんまりした隠れ家のような店。
友人が一緒に行くと言うが今いる場所から距離が近いこともあり、一度入った時に購入する品物も選んであるのでレオナルド令息は断る。
「そうか…まあゆっくりでいいぞ」
「その通りだ。俺達のことは何も気にしないで恋人が一番喜んでくれる欲しい物を選んでこい」
「なんたって婚約者のヴィオラ様へのお土産だからな」
「悪いな…じゃあちょっと行ってくる。直ぐに戻るからな」
大事な婚約者であるヴィオラ令嬢の贈り物なのだから、友人達は俺達には気を遣わず時間をかけて慎重に選択しろと顔一杯に笑顔を広げながら言ってくれます。
レオナルド令息は少し申し訳ない顔をして一人で小走りで向かうと、友人達は暖かい視線で後ろ姿を見守っていた。
大通りから入り組んだところにある隠れ家のような小さな店。少し複雑なので慣れてないと迷いそうだがレオナルド令息は道を覚えているので迷うことなく店に到着する。
「婆さん来たよ」
「…おお、昼に来てくれたお兄さんか」
レオナルド令息が店に入ると少し間があり老婆が反応した。年寄りだから耳が遠いのだろうと深く考えずに思う。
「ネックレスが欲しいんだけど」
レオナルド令息は昼間に来た時に既に買う物を決めていた。ピックアップした物の中から絞り込んでピアスやブローチにブレスレットも良いなと考えたが結局ネックレスを選ぶ。
「ネックレスかい?そりゃいい…恋人さんへのプレゼントだね」
「そうなんだ。婚約してる彼女へのね」
老婆の問いかけに美青年は口元をゆるめて嬉しそうに答えた。
「お兄さんそれならお揃いのネックレスにしたらどうだい?」
ネックレスをご所望の客に同じように恋人とお揃いで身に付けたらどうか?とレオナルド令息にもネックレスを勧める。
商売上手と言うか店側としては当たり前の事だろう。老婆も長年商売を行っていてその能力が優れているのでこのくらいは無意識に言葉が出る。
「それはいいね。それじゃあ僕も買おうかな」
老婆の思惑通りにレオナルド令息は自分にもネックレスを買うのを決めた。
首をすくめて老婆はニヤニヤと何か裏がありそうに怪しく笑い高齢の目の光とは思えないほど鋭く輝く。
レオナルド令息の動きを一つも見落とすまいと一瞬たりとも目を離さない。
悪魔が乗り移ったかのような薄気味悪く得体の知れない老婆は、イケメンの爽やかな空気を一瞬で消し去り悪臭に変えるような腐敗した死体に近い臭気を心の中に漂わせていた。
「どうしたんだ?」
「プレゼントを買うのを思い出した」
「プレゼント?」
レオナルド令息はプレゼントを買うと答えるが不思議でならないといった顔のローレン。
「昼間にレオナルドと巡回していた時にいい店を見つけたんだ」
もう一人の友人のマティオの記憶が呼び覚まされる。
今日の日中の時間帯は、レオナルド令息は同僚のマティオと二人で事件や犯罪などが起こっていないか街の見回りをしていた。
街で暮らす人々が穏やかな毎日で過ごせるように治安を守る。それも騎士としておろそかに出来ない大事な職務の一つ。
その巡回の合間に何げなくジュエリー店に入ってみた。様々な宝石やブレスレットやネックレスなどが並べられている。
それを見ていたら愛してやまない絶世の美女のヴィオラ令嬢に、何か買ってプレゼントしようと考えるのは恋人としては極自然な思いだった。
「なるほど!婚約者への贈り物ってわけか」
ここでローレンも納得した様子で言う。
「レオナルドあの店だろ?確か婆さんが店主だったな」
「そう、その店で買い物してくるから少し待っててくれ」
「一緒に行くけど?」
「すぐそこだからいいよ。昼に買う物も決めてあるし」
見たところ店主は老婆だけの一人でやっていて、それほど大きな店ではなく入口に入ったら店全体が見渡せるくらいの広さでこじんまりした隠れ家のような店。
友人が一緒に行くと言うが今いる場所から距離が近いこともあり、一度入った時に購入する品物も選んであるのでレオナルド令息は断る。
「そうか…まあゆっくりでいいぞ」
「その通りだ。俺達のことは何も気にしないで恋人が一番喜んでくれる欲しい物を選んでこい」
「なんたって婚約者のヴィオラ様へのお土産だからな」
「悪いな…じゃあちょっと行ってくる。直ぐに戻るからな」
大事な婚約者であるヴィオラ令嬢の贈り物なのだから、友人達は俺達には気を遣わず時間をかけて慎重に選択しろと顔一杯に笑顔を広げながら言ってくれます。
レオナルド令息は少し申し訳ない顔をして一人で小走りで向かうと、友人達は暖かい視線で後ろ姿を見守っていた。
大通りから入り組んだところにある隠れ家のような小さな店。少し複雑なので慣れてないと迷いそうだがレオナルド令息は道を覚えているので迷うことなく店に到着する。
「婆さん来たよ」
「…おお、昼に来てくれたお兄さんか」
レオナルド令息が店に入ると少し間があり老婆が反応した。年寄りだから耳が遠いのだろうと深く考えずに思う。
「ネックレスが欲しいんだけど」
レオナルド令息は昼間に来た時に既に買う物を決めていた。ピックアップした物の中から絞り込んでピアスやブローチにブレスレットも良いなと考えたが結局ネックレスを選ぶ。
「ネックレスかい?そりゃいい…恋人さんへのプレゼントだね」
「そうなんだ。婚約してる彼女へのね」
老婆の問いかけに美青年は口元をゆるめて嬉しそうに答えた。
「お兄さんそれならお揃いのネックレスにしたらどうだい?」
ネックレスをご所望の客に同じように恋人とお揃いで身に付けたらどうか?とレオナルド令息にもネックレスを勧める。
商売上手と言うか店側としては当たり前の事だろう。老婆も長年商売を行っていてその能力が優れているのでこのくらいは無意識に言葉が出る。
「それはいいね。それじゃあ僕も買おうかな」
老婆の思惑通りにレオナルド令息は自分にもネックレスを買うのを決めた。
首をすくめて老婆はニヤニヤと何か裏がありそうに怪しく笑い高齢の目の光とは思えないほど鋭く輝く。
レオナルド令息の動きを一つも見落とすまいと一瞬たりとも目を離さない。
悪魔が乗り移ったかのような薄気味悪く得体の知れない老婆は、イケメンの爽やかな空気を一瞬で消し去り悪臭に変えるような腐敗した死体に近い臭気を心の中に漂わせていた。
1
お気に入りに追加
1,817
あなたにおすすめの小説
[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!
日向はび
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」
あなたの婚約者は、わたしではなかったのですか?
りこりー
恋愛
公爵令嬢であるオリヴィア・ブリ―ゲルには幼い頃からずっと慕っていた婚約者がいた。
彼の名はジークヴァルト・ハイノ・ヴィルフェルト。
この国の第一王子であり、王太子。
二人は幼い頃から仲が良かった。
しかしオリヴィアは体調を崩してしまう。
過保護な両親に説得され、オリヴィアは暫くの間領地で休養を取ることになった。
ジークと会えなくなり寂しい思いをしてしまうが我慢した。
二か月後、オリヴィアは王都にあるタウンハウスに戻って来る。
学園に復帰すると、大好きだったジークの傍には男爵令嬢の姿があって……。
***** *****
短編の練習作品です。
上手く纏められるか不安ですが、読んで下さりありがとうございます!
エールありがとうございます。励みになります!
hot入り、ありがとうございます!
***** *****
一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました
LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。
その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。
しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。
追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる…
※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる