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第21話

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自分を殺す見返りに前金だけで一般的な依頼の5倍というありえない報酬と聞かされれば裕福でなければ払えない。

そもそも暗殺依頼自体が高額なのはレオナルド令息もそれなりに理解していた。

「ふぅ…いくら刺客でもあまり殺したくなかったんだけどな……」

大きく息を吐きレオナルド令息は独り言のようにつぶやく。

「だがレオナルド俺は手加減はしない。悪く思うなよ」
「これから先まだ刺客に狙われるなら早く倒したほうがいいな」
「なんだ? 今まで手を抜いていたとでも言いたげだな?」
「まあな、出来れば生かしたままで捕らえたかった」
「ならば早くかかってこい……ぐはっ…はは、まさか本当に力を隠していたとはな……俺も見くびられたもんだ……」

レオナルド令息のあまりの速さに男は目視することもできず、腹を切られ致命傷となり血を吐いてぐったりと倒れた。

レオナルド令息も腕には切られた傷が多数あり、実は肩に浅くはない傷を負っていて膝をつく。荒い息をして肩を上下させて息を整えるように何度も大きく呼吸する。

男を退けることができて戦いに勝つことはできたが、レオナルド令息の不安が心の奥底から消え去ることはなかった――


翌日の昼頃、一人の美しい女性が胸をときめかせながら待っていました。この日ヴィオラ令嬢はレオナルド令息とデートの約束をしていたのでした。

「レオナルドどうしたの!」

部屋のドアが開き彼の姿を見たヴィオラ令嬢は口を開くやいなや悲鳴を上げました。とても大切な婚約者のレオナルド令息が痛々しいほどに肩から腕にかけて包帯を巻いていたのです。

「大丈夫ほんのかすり傷だよ」

レオナルド令息は心配をさせないように優しい声で白い歯を見せる。

「そんなわけないでしょ! ちょっとよく見せて!」

ヴィオラ令嬢は声を荒げる。それほどレオナルド令息の怪我の容態が気にかかって心が落ち着かなかったのです。
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