国のために好きな恋人と別れて大嫌いな皇太子殿下と結婚〜殿下が浮気して妹が妊娠？殿下は土下座して泣きながら許してくれと…

第16話

一人の男がひどく取り乱して部屋の中に入ってきてアンドレ殿下に声をかけました。

「殿下！」
「そんなに慌ててどうした？」
「ヴィオラ令嬢が婚約したようです」
「何だと！」

何を隠そうアンドレ殿下は今なおヴィオラ令嬢のことを強く思っていた。あれほど陛下から情け容赦ない叱責を受けても全く懲りてなく諦めてなかったのです。

自分の配下にある者にヴィオラ令嬢の情報を集めさせて、再び婚約できるように日々を過ごしながら足りない頭でせいぜい考えていました。

「ヴィオラと婚約したのはやっぱりあの男か？」
「殿下のおっしゃる通りレオナルド伯爵令息です」
「伯爵家風情が！　僕のヴィオラによくも……あの男は許さん！」

アンドレ殿下は目の色を変えて殺気立った顔になり尋常でない嫉妬心を抱く。レオナルド令息の顔を思い浮かべるたびに怒りが煮えたぎる。

それほどレオナルド令息に嫉妬の感情が心に食い込んでいた。アンドレ殿下の憎しみは、とどまることなく毎日成長していきました。

とっくに自分でも制御できないほどの憎しみで、アンドレ殿下の心中を灼熱の怒りが突き抜けて身もだえして寝付けないほどでした。

後日、そこはアンドレ殿下が所有する別宅の一室。部屋の中には二人の男の姿。アンドレ殿下と交流の深い取り巻きの一人で名前はドミニクがいた。

「殿下それは！」
「声が大きいぞ。少し落ち着け」
「失礼いたしました」

飼いならされた男は驚いて大声を上げる。間髪を入れずにアンドレ殿下が小言を言って男もすぐに謝罪をした。