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第8話

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アンドレ殿下がうすら笑いを浮かべながら言う。

「僕に求愛して来た理由は姉に勝ちたいからと言っていたではないか?」
「何を突然に世迷いごとを言うのですか!」
「その割には先ほどと比べて理性を失っているようだが?」
「それは殿下が戯言を抜かすからでしょう!」
「ベッドの上ではいつも悲しそうな顔で泣きながら言っていたな」
「殿下もういい加減にして……」
「姉と比べて自分には能力や価値がないと自分は姉には一生勝てない敗北者だと……」

パンッ! とまた強烈な音が聞こえる。次はエレナ令嬢がアンドレ殿下のほっぺたを叩きました。

「よくも僕の顔を殴ったな!」
「つい今しがた殿下も叩いたからおあいこです」

その後もアンドレ殿下とエレナ令嬢は、感情が高まり荒れ狂い掴みかかったり、品性に欠ける非難の応酬で足の引っ張り合いをして言い逃れに終始する。

実際のところエレナ令嬢は、二人の関係を知ったアンドレ殿下の息のかかった者から、これまで何度も指摘を受けて関係を切るように説得されていた。

それなのにエレナ令嬢は、反抗的な言動を繰り返して全く聞く耳を持たなかった。あげくの果てに結婚発表という場で広く知れ渡る結果になる。

中にはこの事実を以前から知っていた関係者もかなりいたが、まさかあのような場で白日のもとに晒されるとは夢にも思わない。

二人の言い訳が理解を得られるわけもなく、お互いの両親から怒鳴りつけられて全員が不愉快極まりない顔をしていました。

自らの罪を認めて心の底から謝罪することもできない二人に、ヴィオラ令嬢は怒りに身を震わせますが、なおいっそう浅ましく恥ずべき振る舞いを行う二人に絶句する。

二人に対して苛立ちを覚え叱り飛ばしたい気持ちもありましたが、深呼吸して感情を表に出さずに必死で感情を押さえつけていた。
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