1 / 1
わたあめ
しおりを挟む
ある部屋にその女の子はいます。
部屋と言っても一枚の板で仕切られただけの淡い空間です。
その女の子には夢がありました。
この部屋を抜け出し、外の世界へいくことです。
彼女には足があります、歩くことができます。
その淡い部屋にはもちろん鍵などありません。
そして、外の世界には敵などいません、ただ広く壮大な自然が広がっているのです。
*
彼女は毎朝6時に目を覚まします、大きな音と共に。
それから起きると最初にこう願います。
(今日こそ外の世界へ行けますように)
彼女は部屋の中で毎日カケラをなくしていきます。
そのカケラは、かけがえのないものであり、しかし、今の彼女には不必要なものでもあります。
カケラをひとつ、ふたつとなくしていくうちに外はもう暗くなってしまうのです。
そして眠りにつく前最後にこう願います。
(目覚めたら外の世界へ行けますように)
1日の最後に失うカケラはこうして目からこぼれ落ちます。
*
翌朝、いつもと同じことを願います。
しかし今日はいつもと様子が違います。
なんだかとても夢を叶ええられる気持ちになっています。
急いでクローゼットを開けると女の子は落胆しました。カワイイ服がひとつもありません。
こんな晴れやかな気持ちと夢を叶えるのにふさわしい服がないと台無しです。
「困ったな」
彼女は気付いていませんが声を出すのは数ヶ月ぶりです。
どうしようと数分悩んでいる内に、大きく膨らんでいた気持ちが溶けた綿飴のようにしぼみベトベトと彼女にまとわり付きました。
彼女からまた、カケラが落ちました。
いつものカケラとはまったく違います。
だって、数分前まで夢が叶うと確信していたのです、落ちたカケラはベトベトがつき女の子の中へ戻るように入りこんできます。
いつも失うカケラはまだ帰ってきたことがないのにです。ベトベトのそれは戻ってきました。
そうして彼女は昨日の倍以上のカケラをなくし、そのまま眠りにつくのでした。
*
*
眠れません。
カケラが止め処なく溢れて睡眠を妨害してくるからです。
「どうして…」
女の子の声はかすかに震えています。
部屋から酸素が抜け出して誰もいない遠い場所に部屋ごと捨てられたような。そんな息苦しさと寂しさを感じながらも彼女にはどうしようもできずにいるのです。
ふと、一瞬だけカケラが止まりました。
何故かは分からないけど彼女の意思とは関係なくピタッと止んだのです。
(今しかない)
その瞬間、彼女は走りました、仕切られていた板を倒して。
部屋着のままだし髪の毛はボサボサでリップも塗らない唇は乾燥しています。
それでも、彼女は部屋を抜け出すことができました。
外の世界に足を踏み入れた彼女が驚いて立ち止まると、深い青の空に数えきれない数の星がそこにはありました。
彼女はカケラのベトベトがふわふわに戻り空に飛んでいくのを感じながら、その場にへたりこみました。
(こんなにも簡単なことだったのか)
その女の子、ミオは涙をこぼしながら笑いました。
部屋と言っても一枚の板で仕切られただけの淡い空間です。
その女の子には夢がありました。
この部屋を抜け出し、外の世界へいくことです。
彼女には足があります、歩くことができます。
その淡い部屋にはもちろん鍵などありません。
そして、外の世界には敵などいません、ただ広く壮大な自然が広がっているのです。
*
彼女は毎朝6時に目を覚まします、大きな音と共に。
それから起きると最初にこう願います。
(今日こそ外の世界へ行けますように)
彼女は部屋の中で毎日カケラをなくしていきます。
そのカケラは、かけがえのないものであり、しかし、今の彼女には不必要なものでもあります。
カケラをひとつ、ふたつとなくしていくうちに外はもう暗くなってしまうのです。
そして眠りにつく前最後にこう願います。
(目覚めたら外の世界へ行けますように)
1日の最後に失うカケラはこうして目からこぼれ落ちます。
*
翌朝、いつもと同じことを願います。
しかし今日はいつもと様子が違います。
なんだかとても夢を叶ええられる気持ちになっています。
急いでクローゼットを開けると女の子は落胆しました。カワイイ服がひとつもありません。
こんな晴れやかな気持ちと夢を叶えるのにふさわしい服がないと台無しです。
「困ったな」
彼女は気付いていませんが声を出すのは数ヶ月ぶりです。
どうしようと数分悩んでいる内に、大きく膨らんでいた気持ちが溶けた綿飴のようにしぼみベトベトと彼女にまとわり付きました。
彼女からまた、カケラが落ちました。
いつものカケラとはまったく違います。
だって、数分前まで夢が叶うと確信していたのです、落ちたカケラはベトベトがつき女の子の中へ戻るように入りこんできます。
いつも失うカケラはまだ帰ってきたことがないのにです。ベトベトのそれは戻ってきました。
そうして彼女は昨日の倍以上のカケラをなくし、そのまま眠りにつくのでした。
*
*
眠れません。
カケラが止め処なく溢れて睡眠を妨害してくるからです。
「どうして…」
女の子の声はかすかに震えています。
部屋から酸素が抜け出して誰もいない遠い場所に部屋ごと捨てられたような。そんな息苦しさと寂しさを感じながらも彼女にはどうしようもできずにいるのです。
ふと、一瞬だけカケラが止まりました。
何故かは分からないけど彼女の意思とは関係なくピタッと止んだのです。
(今しかない)
その瞬間、彼女は走りました、仕切られていた板を倒して。
部屋着のままだし髪の毛はボサボサでリップも塗らない唇は乾燥しています。
それでも、彼女は部屋を抜け出すことができました。
外の世界に足を踏み入れた彼女が驚いて立ち止まると、深い青の空に数えきれない数の星がそこにはありました。
彼女はカケラのベトベトがふわふわに戻り空に飛んでいくのを感じながら、その場にへたりこみました。
(こんなにも簡単なことだったのか)
その女の子、ミオは涙をこぼしながら笑いました。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
【R18】かわいいペットの躾け方。
春宮ともみ
恋愛
ドS ✕ ドM・主従関係カップルの夜事情。
彼氏兼ご主人様の命令を破った彼女がお仕置きに玩具で弄ばれ、ご褒美を貰うまでのお話。
***
※タグを必ずご確認ください
※作者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ書きなぐり短編です
※表紙はpixabay様よりお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる