42 / 43
加速していく想い。
しおりを挟む
マオの家に帰ってきた後、マオは料理を始めた。
この前食べた『さんどいっち』を作ってるようだ。
(勉強も教えれて料理もできて・・・すごいな。)
マオが料理をしてるのを向かいに立って見てると、手際よく作られていっていた。
フライパンの中で美味そうに焼けていく卵や、食欲をそそるような匂いのする焼き鳥。
それらを野菜と一緒にパンに乗せていき、持ちやすい大きさにマオが切っていく。
「やば・・うまそ・・・」
「ふふ。男の人はがっつり系が好きですよね?多分卵と野菜だけじゃ足りないと思って照り焼きも作ったんですけど・・。」
「好きな匂いだから大丈夫。」
そう答えるとマオはクスクスと笑いながら皿に乗せていった。
「はい、どうぞ?」
渡された皿に乗ってるサンドイッチは、卵が挟まれてるものと鶏肉が挟まれてるものがある。
卵のはこの前食べたけど、この鶏肉のは初めてだ。
「このままかぶりついていい?」
そう聞くとマオは一瞬驚いた顔をしたけど、口に手をあてて笑いを堪え始めた。
「ふふっ・・・!いいですよ?豪快にがぶっ・・!と、食べてください。」
「!!・・・いただきます!」
片手で皿を持ち、もう片方の手でパンを掴む。
そして言われた通り大きく口を開けてばくっ・・!とかぶりついた。
「!!・・・美味い!!」
柔らかい肉が口の中いっぱいにある。
鶏肉に付けられた味がなんとも言えないくらい美味くて、不思議と野菜やパンとも合っていた。
「男の人は好きな味で有名なんですよ?女の人も好きな人多いですしー。」
「へぇー・・・。」
マオの言った『男の人は好きな味』という言葉に引っかかりながらも、俺はマオが作ってくれたサンドイッチを全て平らげていった。
普段はどこかの店で食べたり、騎士団の宿舎で食べれるものを口にすることが多く、こうやって誰かの手作りなんて・・・久しぶりのものだった。
「上手かった。マオは料理が上手いな。」
そう言って皿をマオに返した。
「あー・・前の世界で料理・・というか家のこと全般?を教えれる資格持ってまして・・・料理はできるんですよ。」
「そういうのもあるのか。」
「ちょっと調味料を探すのに苦労しましたけど・・・前の世界のと同じのがあったのでよかったですー。」
笑顔を漏らしながら皿を洗い始めるマオ。
俺は空になってる水桶を手に取った。
「裏で汲んできてるだろ?汲んでくるよ。」
「あ・・ありがとうございますー。」
ご飯を作ってくれたお礼には程遠いかもしれないけど、できることをしたくて外に出た。
水を汲めるように造られた井戸で水をたっぷり桶に入れていく。
「男が好きな味・・・か。」
マオの言葉に俺は胸がぎゅっと締め付けられていた。
マオが前の世界で・・・こんな風に男に食事を作っていたことを知り、胸が痛んでいたのだ。
「そりゃあ・・いるよな。マオもいい大人だし・・・。」
マオが前の世界でどんな生活を送っていたかはわからないけど、大人なことは確かだ。
心に決めた人がいたかもしれない。
いづれ、俺の力を理解してくれて怖がらず、隣でずっと笑顔をこぼしてくれてるような人が現れたらと思っていたけど・・・
「ははっ・・・。そうか、それはマオなのか。」
俺は自分の腕にある二つの腕輪を手で触りながらそう思った。
最初に俺の力のことを話したときに『へぇー』くらいの感じで聞いていたマオに驚いたけど、マオの世界じゃ普通なのかとも思った。
性格は優しく、他人の為に行動ができて人を思いやれるマオは俺の目から見てもすごくいい子で・・・俺はその心根に惹かれたようだ。
「・・・よし。」
俺は水がたっぷり入った桶を手に持ち、マオの家の中に入った。
水を置いておく場所に持って行こうと足を進めると、マオが椅子に座って目を閉じていた。
今日はいろいろあって疲れたのだろう。
「・・・zzz。」
「熱出して寝込んでる以外の寝顔・・初めて見た。」
水の入った桶を置きに行き、俺はマオをじっと見つめた。
白い肌に小さい顔。
華奢な体つきに細い腕と指。
前の世界でこんなに小さい体でたくさんの仕事をしていたことが信じられないくらいだ。
「アザレアと一緒に見た夢の中では忙しそうだったよな。あんなに忙しかったら倒れちまうぞ?」
そう言いながらマオの髪の毛を手ですくい、耳にひっかけた。
「ん・・・レン・・ヤ・・・」
マオの顔に触れてしまったからか、マオは身を捩りながら寝言を漏らしたのだ。
ただそれは男の名前のようで・・・
「・・・『レンヤ』?レンヤって・・・誰だ?」
ケルセンの町には『レンヤ』って名前のやつはいない。
城の中にも騎士団の中にもいないし、名前から考えたら恐らく『男』。
そんな男、俺の記憶の中にはいなかったのだ。
「前の世界の男・・・か。」
そうとしか考えられず、俺はそっとマオの頭を撫でた。
「俺じゃだめか?俺じゃそのレンヤの代わりにならないか・・?」
マオに焦がれてると自覚した瞬間から想いは加速しかしてない。
無防備にも俺の前で寝てるマオを俺自身の手で守りたいし、側にずっといて欲しいと思うのだ。
「・・・戻ってきたらあの木のところで伝えるから。」
俺は寝てるマオを抱きかかえ、ベッドに寝かせに行った。
そしてそのままマオの家を出て、町ですぐに乗れる馬を借りて城に向かって走り出したのだった。
この前食べた『さんどいっち』を作ってるようだ。
(勉強も教えれて料理もできて・・・すごいな。)
マオが料理をしてるのを向かいに立って見てると、手際よく作られていっていた。
フライパンの中で美味そうに焼けていく卵や、食欲をそそるような匂いのする焼き鳥。
それらを野菜と一緒にパンに乗せていき、持ちやすい大きさにマオが切っていく。
「やば・・うまそ・・・」
「ふふ。男の人はがっつり系が好きですよね?多分卵と野菜だけじゃ足りないと思って照り焼きも作ったんですけど・・。」
「好きな匂いだから大丈夫。」
そう答えるとマオはクスクスと笑いながら皿に乗せていった。
「はい、どうぞ?」
渡された皿に乗ってるサンドイッチは、卵が挟まれてるものと鶏肉が挟まれてるものがある。
卵のはこの前食べたけど、この鶏肉のは初めてだ。
「このままかぶりついていい?」
そう聞くとマオは一瞬驚いた顔をしたけど、口に手をあてて笑いを堪え始めた。
「ふふっ・・・!いいですよ?豪快にがぶっ・・!と、食べてください。」
「!!・・・いただきます!」
片手で皿を持ち、もう片方の手でパンを掴む。
そして言われた通り大きく口を開けてばくっ・・!とかぶりついた。
「!!・・・美味い!!」
柔らかい肉が口の中いっぱいにある。
鶏肉に付けられた味がなんとも言えないくらい美味くて、不思議と野菜やパンとも合っていた。
「男の人は好きな味で有名なんですよ?女の人も好きな人多いですしー。」
「へぇー・・・。」
マオの言った『男の人は好きな味』という言葉に引っかかりながらも、俺はマオが作ってくれたサンドイッチを全て平らげていった。
普段はどこかの店で食べたり、騎士団の宿舎で食べれるものを口にすることが多く、こうやって誰かの手作りなんて・・・久しぶりのものだった。
「上手かった。マオは料理が上手いな。」
そう言って皿をマオに返した。
「あー・・前の世界で料理・・というか家のこと全般?を教えれる資格持ってまして・・・料理はできるんですよ。」
「そういうのもあるのか。」
「ちょっと調味料を探すのに苦労しましたけど・・・前の世界のと同じのがあったのでよかったですー。」
笑顔を漏らしながら皿を洗い始めるマオ。
俺は空になってる水桶を手に取った。
「裏で汲んできてるだろ?汲んでくるよ。」
「あ・・ありがとうございますー。」
ご飯を作ってくれたお礼には程遠いかもしれないけど、できることをしたくて外に出た。
水を汲めるように造られた井戸で水をたっぷり桶に入れていく。
「男が好きな味・・・か。」
マオの言葉に俺は胸がぎゅっと締め付けられていた。
マオが前の世界で・・・こんな風に男に食事を作っていたことを知り、胸が痛んでいたのだ。
「そりゃあ・・いるよな。マオもいい大人だし・・・。」
マオが前の世界でどんな生活を送っていたかはわからないけど、大人なことは確かだ。
心に決めた人がいたかもしれない。
いづれ、俺の力を理解してくれて怖がらず、隣でずっと笑顔をこぼしてくれてるような人が現れたらと思っていたけど・・・
「ははっ・・・。そうか、それはマオなのか。」
俺は自分の腕にある二つの腕輪を手で触りながらそう思った。
最初に俺の力のことを話したときに『へぇー』くらいの感じで聞いていたマオに驚いたけど、マオの世界じゃ普通なのかとも思った。
性格は優しく、他人の為に行動ができて人を思いやれるマオは俺の目から見てもすごくいい子で・・・俺はその心根に惹かれたようだ。
「・・・よし。」
俺は水がたっぷり入った桶を手に持ち、マオの家の中に入った。
水を置いておく場所に持って行こうと足を進めると、マオが椅子に座って目を閉じていた。
今日はいろいろあって疲れたのだろう。
「・・・zzz。」
「熱出して寝込んでる以外の寝顔・・初めて見た。」
水の入った桶を置きに行き、俺はマオをじっと見つめた。
白い肌に小さい顔。
華奢な体つきに細い腕と指。
前の世界でこんなに小さい体でたくさんの仕事をしていたことが信じられないくらいだ。
「アザレアと一緒に見た夢の中では忙しそうだったよな。あんなに忙しかったら倒れちまうぞ?」
そう言いながらマオの髪の毛を手ですくい、耳にひっかけた。
「ん・・・レン・・ヤ・・・」
マオの顔に触れてしまったからか、マオは身を捩りながら寝言を漏らしたのだ。
ただそれは男の名前のようで・・・
「・・・『レンヤ』?レンヤって・・・誰だ?」
ケルセンの町には『レンヤ』って名前のやつはいない。
城の中にも騎士団の中にもいないし、名前から考えたら恐らく『男』。
そんな男、俺の記憶の中にはいなかったのだ。
「前の世界の男・・・か。」
そうとしか考えられず、俺はそっとマオの頭を撫でた。
「俺じゃだめか?俺じゃそのレンヤの代わりにならないか・・?」
マオに焦がれてると自覚した瞬間から想いは加速しかしてない。
無防備にも俺の前で寝てるマオを俺自身の手で守りたいし、側にずっといて欲しいと思うのだ。
「・・・戻ってきたらあの木のところで伝えるから。」
俺は寝てるマオを抱きかかえ、ベッドに寝かせに行った。
そしてそのままマオの家を出て、町ですぐに乗れる馬を借りて城に向かって走り出したのだった。
24
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
地味でブスな私が異世界で聖女になった件
腹ペコ
恋愛
どこからどう見ても、地味女子高校生の東雲悠理は、正真正銘の栗ぼっちである。
突然、三年六組の生徒全員でクラス召喚された挙句、職業がまさかの聖女。
地味でブスな自分が聖女とか……何かの間違いだと思います。
嫌なので、空気になろうと思っている矢先、キラキラ王子様に何故か目をつけられました……
※なろうでも重複掲載します。一応なろうで書いていた連載小説をモチーフとしておりますが、かなり設定が変更されています。ただキャラクターの名前はそのままです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛を知らない「頭巾被り」の令嬢は最強の騎士、「氷の辺境伯」に溺愛される
守次 奏
恋愛
「わたしは、このお方に出会えて、初めてこの世に産まれることができた」
貴族の間では忌み子の象徴である赤銅色の髪を持って生まれてきた少女、リリアーヌは常に家族から、妹であるマリアンヌからすらも蔑まれ、その髪を隠すように頭巾を被って生きてきた。
そんなリリアーヌは十五歳を迎えた折に、辺境領を収める「氷の辺境伯」「血まみれ辺境伯」の二つ名で呼ばれる、スターク・フォン・ピースレイヤーの元に嫁がされてしまう。
厄介払いのような結婚だったが、それは幸せという言葉を知らない、「頭巾被り」のリリアーヌの運命を変える、そして世界の運命をも揺るがしていく出会いの始まりに過ぎなかった。
これは、一人の少女が生まれた意味を探すために駆け抜けた日々の記録であり、とある幸せな夫婦の物語である。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」様にも短編という形で掲載しています。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる