リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

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一目瞭然。

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ライラックさんの案で、お城の近くにあった荒れた土地にやってきた私たちは、彼の指示で順番にこの土地で何かをすることになった。

最初は今川先生で、その次が私だ。


「えっと・・・何をしたらいいんですか?」


よくわからずに聞くと、ライラックさんはにこっと笑いながら言った。


「マオは何もしなくていいよ。その辺りを歩くだけでもいいし。」

「はあ・・・。」


よくわからないまま今川先生を見ると、彼女はその荒れてる土地の上で膝をつき、両手を土地の上に下ろしていた。

荒れてる地面は視界に広く広がっていて、乾いた土に枯れた草や岩が所々見えるくらいだ。

みずみずしく見える植物なんて一つもない中で、彼女はそんな地面をじっと見つめてる。


(何をしてるんだろう・・・。)


一体何をしてるのかと思いながら、私は彼女をじっと見ていた。

一緒に来た王さまや、ライラックさん、もう一人の王子さまとカーマインさんたちもじっと見てる。


「キ・・キララ・・?すぐできるよな・・?」


もう一人の王子さまが心配そうに今川先生を覗き込みにいった。

でも・・・


「邪魔しないで!!私の生活がかかってるんだから!!」


そう言う彼女はなりふり構ってられないようで、すごい剣幕でもう一人の王子さまを睨みつけたのだ。


(そんなに怒らなくても・・・)


今川先生の剣幕に驚いたもう一人の王子さまは覗き込みに行った体をひゅっと戻し、私たちのところに戻って来た。

横一列に並ぶようにして彼女のすることをじっと見てる時間が流れていく。


(いつまで見とくのかな・・・)


そんなことを思いながら見てると、しばらくしてからライラックさんが口を開いた。


「・・・もういいかな?なんの改善も見られないからマオと交代しよう。」


その言葉を聞いた今川先生が視線を上げた。

そして振り返り、私を睨みつけるような視線を送って来た。


「もうちょっと待ってよぉ!!もうちょっとでできるからぁ!!羽柴せんせになんか絶対できないんだからぁ!!」


必死になって言えば言うほど自分の首を絞めてるようにしか見えない。

もしかして・・今川先生はこの世界での仕事ができないんじゃないかと思ってしまう。


「マオにできないかどうかはその目で見ればいいんじゃないか?・・・ほら、マオ。」

「---っ。」


ライラックさんに呼ばれ、私は一歩前に出た。

そしてゆっくりと今川先生のところに行き、同じように身を屈めてみる。


(一体何をしたらいいんだろう。)


そう思いながら両手を地面につけた瞬間、両手の間からぴょこっと芽がでてきたのだ。


「え?」


驚きながらその芽を見てると、私の体に近い地面から次々と芽が出てくるのが見える。

ぴょこぴょこと出てくる芽はあっという間に私の周りの地面を覆いつくしていった。

さっきまで何もなかった地面が、見渡す限り草原と化していく。


「うそ・・・」


思ってもみない展開に口をぽかんと開けて見てると、ライラックさんが私の肩をぽんぽんっと叩いた。


「お疲れさま。もういいよ。」


そう言われ、私は草の生えた地面に座り込んで自分の両手を眺めた。

自分にこんな力があると思えず、じっと見つめていたのだ。


(どうしてこんなことが起こるんだろう・・・?)


仕組みがわからずに手を見つめてる時、大声で怒鳴るような声が聞こえてきた。


「どういうことだ!!ビリジアン!!キララが聖女じゃなかったのか!?」


顔を真っ赤にしながら怒鳴ってるのは王さまだ。

今にも殴り掛かりそうな勢いでもう一人の王子さまに詰め寄っていってる。


「いや・・・っキララが聖女だって名乗り出たから・・・!それにちゃんと務めもできてたし・・・!」


もう一人の王子さまの言う通り、今川先生はちゃんと仕事をしていたことが気になっていた。

ケルセンの町でカーマインさんたちに聞いた内容では、確かに今川先生は仕事をしていたのだから。


「それに関しては私が説明します。」


ライラックさんが手を挙げ、顔を赤らめながら怒っていた王さまは視線をカーマインさんに移した。

周りにいる人たちも『なぜ』なのかが気になるようで、視線を向けてる。


「キララが最初に務めを果たしたときはマオの力の一部を身に纏っていたからだと思われます。マオたちはこの世界に来る前、一緒にいたってことで間違いないな?」


そう言われ、私は首を縦に振った。


「マオとキララが一緒にいたことでマオの力の一部を身に纏っていたキララは、最初の務めができた。だがその力は身に纏ってるだけのもので、すぐに効果は切れたのです。」


効果が切れた今川先生は仕事をすることはできない。

だから荒れた土地の町に滞在しても効果がでなかったのだとライラックさんは説明したのだ。


「でっ・・でもそのあとちゃんと砂漠化したところに緑を生やした!!それはキララの力だ!!」

「そっ・・そうよ!!」


もう一人の王子さまと今川先生が反論したとき、ライラックさんは手を出して二人の言葉を遮った。


「それはマローのせいだ。」

「マ・・ロー・・・?」


(マローって・・カーマインさんを毛嫌いしていた人・・・)


「そのとき、マローが合流したそうだが合ってるか?」


ライラックさんの問いに、もう一人の王子さまはゆっくり首を縦に振った。


「そのマローが原因なんだ。」

「どういうこと・・だ?」

「マローはケルセンの町でマオに革袋を直してもらってる。その革袋にマオの力の一部が移って発動しただけだ。こんな風に一面緑にはならなかっただろう?」

「---っ!!」


もう一人の王子さまは思い当たるところがあったのか、その場で俯いてしまった。

今川先生はこの状況が良くないことだとわかってるようで、この場にいる全員の顔をチラチラと見てる。

そしておもむろに走り出したかと思えば、カーマインさんの体に抱きついたのだ。


「は・・・?」

「騎士さまぁ・・!キララ、勘違いしてただけなんですぅ!キララのこと、守ってくれませんかぁ?」


ぎゅっと体を密着させ、上目遣いでカーマインさんを見つめる今川先生。

あまりの行動の早さに驚いてると、カーマインさんのすぐ隣にいたトープさんが口を開いた。


「カーマインは言霊の力が使える。キミの体に触れて命令したら・・・従うことしかできないけどいいのかい?」


その言葉を聞いた今川先生はカーマインさんからパッと体を離した。


「うわ・・何それ、気持ち悪い!」

「!!」


彼女はカーマインさんに触れられないようにさっと後ろに下がっていった。

そんな彼女の行動がどうしても許せなかった私は、彼女の手をぎゅっと掴んだ。


「カーマインさんに謝りなさい。」

「はぁ!?なんで私が謝らないといけないのよ!!」

「そんな言葉を言われて傷つかない人がいると思ってるの!?教育者ならわかるでしょ!?」


傷つけられて喜ぶ人はいない。

ましてや生まれ持った能力はどうしようもないもので、それを言われると黙り込むしかできないのだ。


「私は先生じゃない!!婚活してただけ!!」

「---っ!!いい加減にしなさい!!一人の人としての常識じゃないの!?考えてごらんなさい!!」


その時、ライラックさんが私と今川先生の間に入って来た。


「そこまで。・・・父上、ご覧の通り、マオが召喚されるべき者です。今後のこと、城に戻って話し合いましょう。」


そう言うと私の体を少し押すようにしてカーマインさんたちの側に追いやった。

今川先生はもう一人の王子さまの取り巻きの人たちのところに預けられてるのが見える。


「カーマインさん、すみません・・・。」


カーマインさんに向き直り、私は頭を下げた。

彼女が謝らなかった代わりに頭を下げたのだ。


「マオが謝ることじゃないだろ?それにいつものことだから気にしてない。」

「でも・・・」

「気にするなって。大丈夫だから。」


『いつものこと』と割り切るカーマインさんだけど、こんなことが積み重なると負担になっていくことは目に見えていた。

でも彼はこれを上手く受け流して生きてきたのだろう。


「じゃ・・じゃあ今度!またサンドイッチ作るんで・・・また一緒に食べましょ?」


この前のサンドイッチを美味しそうに食べていたことが印象的だった。

少しでも気分が晴れたらと思ったのだ。

でもカーマインさんがどう捉えるかがわからず、表情を探ってると・・・彼は嬉しそうに笑ったのだ。


「あぁ、楽しみにしてる。」

「----っ!」


あまりにも無邪気な表情を目の当たりにし、私の胸がきゅっと締め付けられた。

どきどきと鳴る胸を押さえつけながら、カーマインさんから視線を外す。


「マオ?城に戻るよー?」


トープさんの声が聞こえ、私はまわりを見た。

するともうみんなが歩き始めていたのだ。


「え・・あ・・・わっ・・私・・っあとで行きますっ・・・!」

「?・・・そう?わかったよ。」


ぞろぞろと歩いて行くみんなを見つめ、その姿が見えなくなった瞬間、私はその場に座り込んだ。


(いや待って・・・何今の・・・・)


鳴る胸が収まると同時に顔が熱くなっていく。


(うそうそうそ・・・待って待って・・・・!)


火照る顔を冷やすように手で押さえながらも、私はこの状態がどういうことなのか薄々気づいていた。

でも気づかないふりをするために頭を左右に何度も振る。


「絶対違うっ・・・!!」


思わずそう叫んだとき、ガサっ・・!と、音が聞こえてきた。

音のほうを見ると、ロングヘアーのかわいい女の子が立っていたのだ。


(?・・・あれ?騎士団の制服・・・?)


カーマインさんたちと同じ服を身に纏っていた彼女。

なかなかお城に戻らない私を誰かが迎えに来たのかと思っていた時、その女の子が口を開いた。


「あれ?マオ?こんなとこで何してるの?」




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