リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

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証明。

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(さて、マオの耳と目を塞いだが・・・この先どうしようか。)


この国の第一継承者である私は、この扉の向こうがどうなってるのか想像がついていた。

マオが驚かないようにと思って耳と目を塞いだが・・・この先のことを悩んでる。


(カーマインがいるみたいだからどうにかなるか。)


そう思って肘で扉を開け、マオの体を少し押すようにして中に入った。

すると部屋の中は想像してたよりずっと酷い光景が広がっていたのだ。


(---っ!マオの目と耳を塞いでおいて正解だったな。)


部屋の中ではビリジアンの取り巻きたちが一人の女をベッドで悦ばせていた。

むせかえるような匂いが部屋に充満していて、思わず顔を背けてしまいそうになる。


「!!・・・ライラック様!?どうしてここに・・・!」


その声が聞こえて視線を向けると、部屋の隅に棒立ちするようにしてカーマイン、トープ、セラドンがいたのだ。


「・・・状況を説明しろ。」


そう言うとトープが端的に説明し始めた。


「ご覧の通りでございます。我々もキララさまのお相手をするよう言われたのですが、お断りしたところここで見てるように言われたのです。」

「相手・・・」


高い声で啼きながら腰を振る召喚されずべきもの。

この状況をどうにかするためにビリジアンを呼ぼうとした時、マオの手が耳ではなくて口にいってるのが見えた。

目は塞いであるから見えてはいないだろうけど、音だけで・・・『何が』起こってるのか理解してそうだ。


「え・・・この匂い・・・この声・・・」


マオはカタカタと震え始めた。

真っ青な顔をし、血の気が引いていくのが見て取れる。

そして次の瞬間、かくんっと力が抜けていったのだ。

床に倒れ込んでしまわないように腹を抱え、カーマインに引き渡す。


「さて。」


マオをカーマインに預けたことで両手が空いた私はビリジアンのもとに向かった。

ギシギシと音を立ててるベッドに片手をつき、全裸のビリジアンに声をかける。


「一体何をしてるんだ!!ビリジアン!!」

「!?・・・は!?ライラック!?」


私の声に驚いたビリジアンは近くにあったシーツを引き寄せて自分の体にかぶせていた。


「私が声をかけるまで気づかないとはな。お前、召喚の儀をしておきながら今まで何をしていたんだ?さっきまで国民が押しかけてきていたぞ?」

「えっ・・?えっ・・!?いや・・!キララがちゃんと・・・・」

「ちゃんと?その『召喚されずべき者』がか?」

「は!?キララが召喚されずべき者!?」

「・・・とりあえずこのままじゃ話にもならないだろう。この場は解散。そしてお前はキララの身なりを整えて王のところに来い。いいな。」


そう言って振り返ると、マオを抱きかかえたカーマイン、トープ、セラドンがピシッと立っていた。


「さて、二人のうちどっちが本物なのか証明しに行こうか。」

「はい!」

「はい!」

「はい!」



ーーーーー



ーーーーー



「マオ・・?マオ・・・?」


深い眠りについていた私は声が聞こえて目を開けた。


「ぁ・・・?」

「立てるか?」


カーマインさんの腕の中にいたらしい私は、自分の今の状況がわからずに辺りを見回した。

だだっ広い部屋にいるようで、高い天井、遠い壁が目に入る。


「あれ・・・わたし・・・?」

「どこまで覚えてる?」

「え・・と、部屋に入って・・それで・・・・」


私はライラックさんと一緒に入った部屋で、鼻に強烈な匂いを感じて思わず口を塞いだことを思い出した。

その時に耳に入って来た人の声は『最中』の声で、一体どうしてそんな声が聞こえてくるのかと考えたら呼吸がおかしくなってきて気を失ってしまったようだ。


「・・気を失ってたんですね、すみません・・。」

「いや、状況が状況だったからな。立てそうか?」

「はい・・・。」


カーマインさんの手を借りてゆっくり立たせてもらうと、私の視界の先にとんでもない光景が広がっていたのだ。

玉座と呼べる場所に一人の男の人、その人の眼下にライラックさんと一番最初に見た王子さま、あと今川先生がいたのだ。


「!?」

「簡単に説明するからよく聞いてくれ。」


カーマインさんは小声でこの状況を説明してくれた。

私が目隠し状態で入ったあの部屋にいたのは今川先生と一番最初に見た王子さま、それにその取り巻きの人たちとカーマインさんたちだ。

私が一番最初に見た王子さまと今川先生、それに取り巻きの人たちはベッド上でいろいろ致していたようで、それをとめ、この場に連れてきたのだとか。

そして今から私と今川先生のどちらが本物の『召喚されるべき者』なのかを調べるということらしい。


「どうやって・・・・」

「それはすぐわかる。」

「?」


カーマインさんの言葉のすぐあとに、王さまが口を開いた。


「キララが聖女なのだろう?そこの巻き込まれ召喚者は一体なぜここに?というかライラック、お前・・病気だったんじゃ・・・」


いろいろ不思議がる王さまに、ライラックさんが手を挙げた。


「私はマオの助言で回復することができたのです。そして私の読んでる本によれば、召喚されるべき者はマオなのです。キララはマオの側にいたことからその力の一部を身に纏っていただけなのです。」


その言葉を聞いた今川先生ともう一人の王子さまは反論するようにお互いに声を荒げた。


「キララこそが本物です!!前に砂漠化したところに緑を生やしましたし!!」

「そうよ!!私のほうがかわいいんだから私が本物よ!!羽柴せんせになんか務まらないんだからぁ!!」


抗議するように二人は必死になって王さまに話していた。

その様子を引き気味に見てる私とカーマインさんたち、それにライラックさんがいるというなんともいえない状況に私は何も言えないでいた。


「どっちが本物かはワシに区別はできん。ライラックはこの状況を打破する案はあるのか?」


王さまの問いにライラックさんはニヤッと笑った。


「もちろん。今から行きましょう、荒れてる土地に。」









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